… … …(記事全文6,187文字)前回お伝えした通り、「偽装原爆説」の検証内容を掲載する。
●検証
<パルマー教授・林氏「偽装原爆説」>
検証①「1945年8月には原爆は完成していなかった」
林氏は1945年5月ごろの会議記録を根拠に、「プルトニウム原爆の完成は1949年以降」との趣旨を主張の根幹に置く。つまり1945年8月には実戦使用できる原爆はそもそも完成していなかった、と主張している。
しかしこの主張は、公開されているマンハッタン計画の公式史料と真正面から衝突する。
1945年7月16日、ニューメキシコ州アラモゴード砂漠において、爆縮レンズを用いたプルトニウム型核装置「ガジェット」による人類初の核実験「トリニティ」が実施され、約25キロトン相当の爆発に成功している。長崎に投下された「ファットマン」はこのガジェットと同型構造であり、両者は並行して製造されていた。
<トリニティ実験>
「偽装原爆説」の決定的な弱点は、広島に投下された「リトルボーイ」はそもそもプルトニウム型ではなくウラン型だったという事実だ。全長3.05メートル、総質量4,400キロ、ウラン235を約60キロ搭載したガンバレル型(砲身方式)である。
<リトルボーイはプルトニウム型ではなくウラン型>
ウラン型爆弾はプルトニウム型と異なり事前の爆発実験を経ずに実戦投入されており、これも当時の技術資料に明記されている。仮に「プルトニウム型は1949年」という一次資料が実在するとしても、そこから「ウラン型の広島原爆も存在しなかった」という結論は導けない。
少し話がそれるが、「原爆は体積・質量とも大き過ぎて、B-29に積むことはできなかった」という都市伝説がある。
<SNSで拡散した「大き過ぎる原爆」>
だが、この巨大な物体は、トリニティ実験の原爆を格納する容器、通称「ジャンボ」だ。投下された原爆そのものではない。原爆は全長4メートル以内、重さ5トン以内で、この「ジャンボ」の中に格納されていた。
一方、B-29の最大搭載量は9トン前後で、原爆は原爆投下専用に改造された「エノラ・ゲイ」「ボックスカー」に積み込まれた。下の写真はリトルボーイがエノラ・ゲイに積み込まれるところを撮影したものだ。従って「大き過ぎてB-29に積めなかった」説は誤りである。
<「原爆は体積・質量とも大き過ぎてB-29に積むことはできなかった」説は誤り>
話を元に戻す。
下の文書は、物理学者レオ・シラードらが提示した「日本への原爆投下中止を求める請願書」である。
シラードは初期の原爆開発をリードしていたが、ナチス・ドイツの降伏によってその名分が失われると、トルーマン大統領へ直訴すべく投下反対の請願運動を展開した。シカゴ大学で70名、オークリッジでも88名の科学者がこれに署名している。
だがこの請願はロスアラモスのJ・ロバート・オッペンハイマー博士らによって却下され、トルーマンに届くことはなかった。
この請願書で注目すべきは「atomic bombs(原子爆弾)」という記述だ。もし原爆が完成していなかったのなら、開発の最前線にいた科学者たちがこのような請願書を作る理由はない。
<1945年7月17日付「日本原爆投下反対嘆願書」>
<日本語訳>
合衆国大統領への請願書(1945年7月17日)
合衆国大統領閣下
下記に署名した者たちは、原子力の分野における研究・開発に従事する者である。
本日までに、この分野における発見は、原子爆弾を製造する手段を合衆国にもたらした。原子爆弾は、世界を脅かす未知の破壊力を秘めた兵器であり、我々署名者は、自らが開発の一端を担ったこの兵器が、現在の戦争において合衆国によって使用されるかもしれないという見通しに対し、深き懸念を抱いている。
ナチス・ドイツがこの兵器を手に入れ、それによって世界を支配するかもしれないという脅威が極めて現実的であった段階においては、合衆国によるこの分野での開発促進は正当化された。当時にあっては、合衆国がこの兵器を自ら開発することこそが、ナチス・ドイツによる攻撃を阻止するための唯一の効果的な防衛策であったからである。
しかしながら本日、ドイツは敗北した。これにより、合衆国がこの兵器を直ちに使用することを正当化し得る防衛上の理由は失われた。
原子力という新たな破壊の力を解き放つことは、人類の将来に計り知れない影響を与える。無制限の爆撃によって日本の都市を破壊することは、今や世界の良識によって当然のこととして受け入れられているかもしれないが、原子爆弾の使用は全く異なる次元の破壊をもたらす。この爆弾は単に破壊力が絶大であるだけでなく、都市の絶滅という目的を過酷かつ容赦なく達成する手段であり、その使用は人類に対する未曽有の無差別な破壊をもたらすものである。
もし合衆国が、他のいかなる国よりも先にこの恐ろしい兵器を戦争に使用するならば、我が国は世界に向かって、他国の都市を焼き尽くすための破壊的な先例を示すことになる。その結果として生じる道義的責任は、将来にわたり我が国の歴史に重くのしかかるであろう。
さらに、核兵器が実戦で使用された場合、世界各国による無制限の核軍縮・管理交渉は極めて困難となり、各国が生き残りをかけて競って核兵器を保有しようとする「破滅的な核軍拡競走」を引き起こすことは避けられない。
以上の理由から、我々署名者は、大統領閣下に対し、以下のことを謹んで請願する。
第一に、 合衆国は、日本に対して提示する降伏条件の全貌を詳細に公表し、日本がそれを受諾するか否かを決定するための十分な機会を与えない限り、本戦争において原子爆弾を使用しないこと。
第二に、 仮にそのような提示を行った後においても、日本が拒否し、合衆国が軍事的な判断から爆弾の使用を余儀なくされると判断した場合であっても、大統領閣下におかれては、自らの良心と、本問題が伴う深刻な道義的責任に照らし、慎重な検討を重ねられた上で、最終的な決断を下されること。
1945年7月17日
(シカゴ大学冶金研究所等の科学者70名の署名)
当時、原爆が存在したことを示す公式史料や一次資料は数限りなく公開されている。パルマー教授や林氏が「原爆は完成していなかった」と主張するのであれば、それら膨大な公文書のすべてが「捏造」であり「偽物」であることを、ひとつ残らず証明しなければならない。






