… … …(記事全文3,027文字)6月14日、米国とイランは戦争終結に向けた覚書に合意した。トランプは正式署名予定の6月19日にホルムズ海峡封鎖が全面解除される見通しを示したが、世界や日本のエネルギー不足が即座に解消されるわけではない。
●「原油100%確保」の内実
6月11日、高市首相は「代替ルートや米国からの調達も含め、年を越えて100%の原油供給を確保できるめどが立った」と表明し、政府の外交・民間努力の成果をアピールした。
<2026年6月11日 日本テレビ>
https://news.yahoo.co.jp/articles/3fed4e73fb9eb1e598ac35fc06d2dd3c8c9497f7
だが、高市首相のアピールとは裏腹に消えない懸念が2つある。
ひとつは、日量需要に対する政府と現場の「認識のギャップ」だ。
政府・経産省は、備蓄日数や供給見通しの計算において、「原油」の日量需要を220〜236万バレル前後としている。
<2026年6月11日 経済産業省>
一方、国際エネルギー機関(IEA)のデータや日本の資源エネルギー庁の統計によると、日本の「石油」の需要(原油+石油関連製品)は日量約300万〜330万バレル規模とされる。
<worldometer>
<外務省 「1日当たりの石油の消費量の多い国」>
政府の「原油日量220万バレル」とIEAの「石油日量300~330万バレル」の約100万バレルの差の正体は、ナフサを中心とする石油関連製品だ。これらに政府は関与せず、民間企業(商社・化学メーカー)が自力で海外の市場から直接買い付けているものだ。
<100万バレルのギャップ内訳>
高市首相が強調する「原油日量220万バレル確保」も、実際にはENEOS、出光興産、コスモエネルギーなどの民間企業が主力となって買い付け・輸入を行っている。日本政府の主な役割は、石油備蓄法に基づいて民間企業に消費量の70日分の備蓄を義務付け(現在一部緩和中)、外交ルートで代替調達を後押しすることだ。
実は、国が直接保有する国家備蓄(原油換算で約90〜146日分程度)もあるが、IEAの協調放出ルールや長期的な備蓄維持の観点から、安易に全量を市場に放出できるものではない。国家備蓄は「最後の砦」だ。日々の経済を回している主役は、民間企業が自らの責任で調達した原油と石油製品だ。
最大の問題は、政府基準の原油220万バレルに含まれない、約100万バレルの石油製品(特にナフサ中心)だ。これらは民間企業(商社・石油化学メーカーなど)が直接輸入しているが、イラン情勢(ホルムズ海峡事実上封鎖)以降、価格高騰と供給不安定化で民間調達が極めて難しくなっている。
政府はナフサ不足を「流通の目詰まり」と説明するが、一部の過剰発注や在庫偏在を強調し過ぎている。現実には、海外での民間調達の困難化や、価格高騰による生産抑制(価格高騰を販売価格に転嫁できない)といった、物理的・経済的な絶対量不足が大きく影響している。
政府が直接コントロールできない民間製品輸入ルートの逼迫こそが本質的な問題だ。
<2026年6月10日 福島中央テレビ>
もう一つの深刻な問題は、代替原油の油種ミスマッチによるナフサ収率の低下や品質適合性の悪化である。
日本の製油所が中東産中質・重質原油に最適化されているのに対し、主力となった米国産などの軽質原油はナフサの得率が低く、組成も異なるため、化学原料としての適合性が悪化している。
原油の「量」そのものは足りていても「質」が違うため、そこから作られるナフサの絶対量は減少し、加えて日本の製油インフラがそれに対応できていないというミスマッチが起きているのだ。






