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田村秀男(ジャーナリスト)

田村秀男

日銀はなぜ根拠なき利上げに夢中になるのか

6月15,16日の日銀政策決定会合に病気療養を理由に欠席し、採決に加わらなかった植田和男日銀総裁は23日に業務に復帰した。実際のところ、文面でも票を投じることは十分可能だったのに、植田氏はそうしなかったので、「利上げに迷っていた総裁は、逃げたのではないか」との憶測を呼んでいた。

24日には植田氏の代理で全国信用金庫大会に出席した氷見野良三副総裁が植田総裁のあいさつ文を代読した。内容は、「現在の金融環境は「緩和的である」、「経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げていく」、6月に利上げを判断した理由について、「基調的な物価上昇率が2%の物価安定の目標を超えて上振れしていくリスクがある」。これらは16日の利上げ発表時に日銀が出した声明そのままである。日銀は言わば、16日の利上げを植田総裁本人の意思として、文面で日銀の総意だとコンファームしたわけである。利上げ後10日間も経っており、米・イラン戦闘終結合意で原油相場も急落傾向が定着するなど金融環境急変が目立つと言うのに、16日までの情勢認識そのままの文面を植田総裁に呑ませた。

日銀の利上げ決定までのプロセスは異常としか言いようがない。日銀スタッフは前回、4月28日の政策決定会合で利上げをめざしていたが、植田和男総裁は金利据え置きにした。それでも植田氏は「インフレリスクが顕在化すれば利上げの可能性もある」と記者会見で発言した。以来、日銀幹部は「インフレリスク」の高まりを主要メディアの記者に吹き込んできた。日銀の御用新聞同然の日本経済新聞を筆頭に、主要メディアは6月10日時点までに「0.25%利上げ」を相次いで報じた。利上げが当然とばかりに決め打ちしたメディアも疑問をはさむ記事は手控える。金融市場は利上げを既定路線として受けとめ、金融取引に織り込んで行く。こうなると利上げは不動の既定路線となる。

 なぜ、日銀が短期の標準金利である政策金利の引き上げにこだわるのか。

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