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やっぱり地理が好き ~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

宮路秀作(地理講師&コラムニスト)

宮路秀作

やっぱり地理が好き #124:先行境界と分断された民族、防波堤だったニジェール③

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やっぱり地理が好き 

~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~


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第124号(2023年8月31日発行)、今回のラインアップです。


①世界各国の地理情報

 ~先行境界と分断された民族、防波堤だったニジェール③~


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こんにちは。

地理講師&コラムニストの宮路秀作です。

日頃、周りの人たちからは「みやじまん」と呼ばれています。

今回で124回目のメルマガ配信となります。


つくづく、「人の世から争いはなくならない」と思う次第です。


人間がもつ、好き嫌いという感情ほどいい加減なものはありません。自分にとって利する相手であったとしても、それが害に変わってしまえば途端に嫌いになります。実にいい加減なものです。国際社会においても同様で、「昨日の敵は今日の友」といったことはいくらでも存在します。第二次世界大戦後の日本とアメリカ合衆国がまさにそれです。


産業革命によって工場制機械工業が始まり、大量生産、大量消費、そして大量廃棄の時代へと突入すると、市場獲得の争奪戦が始まりました。帝国主義時代です。これによって、アジア、アフリカ、ラテンアメリカといった国々はヨーロッパ列強の植民地となり、「お茶作れー!」「コーヒー作れー!」「サトウキビ作れ-!」「綿花作れー!」の怒号とともに熱帯作物の供給地となりました。


第二次世界大戦後に植民地国が相次いで独立していくと、言い値で買っていた作物を適正価格で買おうという流れになりフェアトレードが当たり前になっていきました。フェアトレードは農家の収入が安定するため、持続可能な農業経営、ひいては安定した作物輸入が可能となっていき、またフェアトレード商品を購入した先進国の住民たちは「俺たちは、途上国農家のために良いことをしているんだぜ!」と意識高い系を拗らせることができるようになりました。


しかし、農作物ならまだしも、鉱産資源に関しては供給元を抑えておくことは、先進国の経済発展にとって重要課題です。


フランスが原子力発電割合を高く維持できるのも、旧植民地であるニジェール産のウランを輸入しているからこそであり、そんなニジェールとの貿易関係を壊されてしまうと、たちまちフランス経済に大打撃を与えてしまいます。昔であれば、軍事力によっていうことを聞かせることもできたでしょうが、「民主主義こそ普遍たる価値!」と叫ぶ欧米諸国にとって、それは自分で自分の首を絞めるようなものです。


そこで時の文民政権と結び、関係性を良好に保っていこうとすれば、それを良しとしない勢力もいるわけで、それはまるで「むき出しの導火線」のようなものです。


そういった「むき出しの導火線」があっちこっちに散らばっているのがアフリカといえます。


ニジェールで軍事クーデターが発生したというニュースに占拠され、「スーダンで発生した軍部による主導権争いはどうなったのか?」などと気にかける人はほとんどいなくなりました。


世界情勢は上書きの連続ではありません。複数の出来事が、同時進行するのです。


それでは、今週も知識をアップデートして参りましょう。

よろしくお願いします!


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①世界各国の地理情報


 ~先行境界と分断された民族、防波堤だったニジェール③~


今回は、メルマガ第122号、第121号からの続きです。


▼#121:先行境界と分断された民族、防波堤だったニジェール①

https://foomii.com/00223/20230806210000112382

▼#122:先行境界と分断された民族、防波堤だったニジェール②

https://foomii.com/00223/20230813210000112685


アフリカのニジェールにおいて2023年7月26日、「現政権は対テロ対策の努力が足りない!」との大義名分から、軍部によるクーデターが発生し、大統領が拘束され、そして罷免される事件が起きました。


アフリカ大陸サヘル地域(サハラ砂漠の南縁)は「イスラーム過激派の台頭」の場であり、かつて彼の地の治安維持を担っていたのが、かつての宗主国であるフランスでした。フランスは原子力発電割合が高い国であり、ニジェールはその燃料となるウラン鉱の重要な輸入先でもあります。

… … …(記事全文7,055文字)
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