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やっぱり地理が好き ~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

宮路秀作(地理講師&コラムニスト)

宮路秀作

やっぱり地理が好き #101:新たなる外交の戦場となったアフリカ大陸とレアメタル
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ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00223/20230305213000106346 //////////////////////////////////////////////////////////////// やっぱり地理が好き ~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~ https://foomii.com/00223 //////////////////////////////////////////////////////////////// 第101号(2023年3月5日発行)、今回のラインアップです。 ①世界各国の地理情報  ~新たなる外交の戦場となったアフリカ大陸とレアメタル~ //////////////////////////////////////////////////////////////// こんにちは。 地理講師&コラムニストの宮路秀作です。 日頃、周りの人たちからは「みやじまん」と呼ばれています。 今回で101回目のメルマガ配信となります。 3月となりました。 本メルマガのご購読を継続していただいたみなさま、大変感謝いたします。 ありがとうございます。 私は映像の世界は門外漢ですが、映像には「引き」と「寄り」が存在することくらいは分かります。どちらが大事なのかではなく、演出に従って適宜使い分けているわけです。 地理学は空間を認識する学問です。その空間を構成する様々な要素を理解した上で、全体像、つまり景観が見えてきます。その空間にも「引き(巨視的)」と「寄り(微視的)」があって、どちらが重要とかそういったことではなく、それぞれに観えるものが異なるという当たり前のことを認識していきます。 前回のメルマガ(第100号)は、創刊からこれまでを振り返りました。振り返ってみると、発行当初は取り上げる空間が国家単位に「寄り」過ぎていた感がありましたが、ロシアによるウクライナ侵略が起きてからというもの、徐々にそれを「引く」ことで地域を取り上げるようになりました。何か出来事が発生したさい、「たった一つの要因」に落とし込んで論じることができるわけがないため、一つ一つ事実を積み重ねていくことで「景観」を作り出し、そして全体像を観察する必要があるからだと思っています。 ある場所を考察するとしても、「別な場所で起きている事象との関連性はないのか?」を探ることは大変重要です。何か一つの出来事に依拠して論ずることは、真実を見誤ることになりますから。 それでは、今週も知識をアップデートして参りましょう。 よろしくお願いします! //////////////////////////////////////////////////////////////// ①世界各国の地理情報  ~新たなる外交の戦場となったアフリカ大陸とレアメタル~ 先月23日、国連総会の場で緊急特別会合が開催され、「ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議案」の採択に関し、以下のような結果が出ました。 ・賛成→141か国 ・反対→7か国 (ロシア、ベラルーシ、シリア、エリトリア、マリ、ニカラグア、北朝鮮) ・棄権→32か国(中国、インド、イラン、南アフリカ共和国など) ロシアは、昨年の2月21日の時点でウクライナ東部に位置するドネツク州とルハンスク州を独立国家として承認していました。ウクライナ侵略が始まる3日前のことです。6月29日にはシリアが両地域を国家承認し、7月13日には北朝鮮が続きました。これによって、ウクライナと北朝鮮は国交断絶となりました。

▲ウクライナとその周辺諸国 北朝鮮は2014年にロシアがクリミア半島を併合したさいにも、この行動を支持していて、「西側諸国が覇権主義的な態度を取ったからこそ、ロシアが当たり前の行動を取ったに過ぎない!」と嘯いていました。結論ありきとはこのことです。 そして「ロシアがウクライナ領ドネツク州とルハンスク州を国家承認した」ことを支持しているのがニカラグアです。ニカラグアは「経験の交換と訓練」のためと称して、国内にロシア軍部隊の駐留を許可したほどです。ニカラグアはカリブ海(ひいては大西洋)と太平洋に面する地の利を持つ国です。

▲ニカラグアの地理的位置 「敵の敵は味方」なのか、先月3日にアメリカ合衆国下院議会において、「社会主義恐怖糾弾決議案」が可決されました(賛成328人、反対86人)。「社会主義恐怖糾弾決議案」を提出したのは、キューバ亡命者であるマリア・エルビラ・サラサール下院議員。過去に社会主義国家で起きた虐殺や飢餓などを例に挙げ、社会主義体制を糾弾する内容です。同決議案では「社会主義こそ史上最大の犯罪!」と定めていて、歴代の社会主義の指導者として、現ニカラグア大統領ダニエル・オルテガが名を連ねていました。 ▼「スターリン、毛沢東、金正恩は犯罪者」……米下院「社会主義糾弾決議」採択 https://s.japanese.joins.com/JArticle/300589?sectcode=500&servcode=500 以前、メルマガ第70号にて北朝鮮とニカラグアの「立ち位置」について解説したことがありました。 ▼#070:北朝鮮が国家承認した2つの「共和国」とニカラグア政府の立ち位置 https://foomii.com/00223/2022073121000097604 どちらも「大国に寄り添う独裁国家」という印象が強い国です。 ■過去3回の国連決議における、アフリカ各国の動向 非難決議案が出されたのは今回に限ったことではなく、2022年3月と10月を加え、過去3回採択されています。今回のメルマガでは、非難決議案の推移を見ることでアフリカにおけるロシアの影響力がどこに及んでいるのかをうかがい知ることができるのではないかと思い、特にマリ共和国に注目してみました。 まずは過去3回の非難決議案の投票結果をアフリカの54か国に限定して見てみます。 <2022年3月の決議案> ・賛成→28か国 ・反対→エリトリア ・棄権→16か国 (南アフリカ共和国、中央アフリカ、スーダン、モザンビークなど) ・不参加→9か国 <2022年10月の決議案> ・賛成→30か国 ・反対→なし ・棄権→19か国 (南アフリカ共和国、エリトリア、マリ、中央アフリカ、スーダン、モザンビークなど) ・不参加→5か国 <2023年2月の決議案> ・賛成→30か国 ・反対→エリトリア、マリ ・棄権→15か国(南アフリカ共和国、中央アフリカ、スーダン、モザンビークなど) ・不参加→7か国 2022年10月から投票行動が変わった国は、以下の通りです。 ・ジブチ(不参加→賛成) ・レソト(棄権→賛成) ・サントメプリンシペ(不参加→賛成) ・南スーダン(棄権→賛成) ・アンゴラ(賛成→棄権) ・ガボン(賛成→棄権) ・エスワティニ(棄権→不参加) ・セネガル(賛成→不参加) ・タンザニア(棄権→不参加) ・マリ(棄権→反対) ・エリトリア(棄権→反対) 棄権や不参加から一転して賛成に回った国があるかと思いきや、賛成から棄権に回った国もあり、はたまた前回は棄権したけど今回は参加すらしなかった国もあります。また一貫して、棄権によって中立の立場を採り続ける南アフリカ共和国の存在もあります。 そんな中、前回は「棄権」でしたが、今回に反対に回った国が二か国あります。 マリとエリトリアです。

▲アフリカ各国の決議案に対する立場 ■アフリカ各国を訪問する大国の高官たち 今年に入ってから、何かと各国の高官がアフリカを訪問しています。 ①中国外交部長=秦剛 1月11~16日の日程で、エチオピア、ガボン、アンゴラ、ベナン、エジプトを訪問 ※中国の「外交部」とは、日本の外務省に相当 中でも最後に訪問したエジプトでは、シシ大統領との共同会見にて「中国が掲げる『一帯一路』の建設がエジプトで多くの成果をもたらすことを期待している!」と述べ、スエズ運河経済圏や新首都建設への投資を続けるとしました。 「スエズ運河経済圏」や「新首都建設」については、2019年度一橋大学前期試験地理にて取り上げられています。問題文中にある「下線部(3)に示したような場所」とは、本文中に「現首都カイロの東側に広がる新郊外地区「ニュー・カイロ・シティ」を超えて、さらに東へ行き、スエズ運河に至る途上にある」とあります。

▲エジプトの新首都建設予定地

▲2019年度一橋大学前期試験地理第1問問3より 一橋大学は模範解答を公表していませんが、解答のポイント以下の通りです。 1.スエズ運河の通行料を主要資金源とする 2.中国などからの投資を拡大させる  →エジプトとサウジアラビアとの関係悪化から、OAPEC加盟国からの投資は難しい? 3.首都が現在よりもスエズ運河に近づくのは投資へのメリットが大きい 4.オールドカイロへの人口集中が著しく、都市機能が停滞 5.スエズ運河を利用した物流業だけでなく、金融の拠点としても発展を目指し、観光業への過度な依存度を下げたい あらためて、一橋大学の地理の問題は「宇宙で一番難しい!」なと思います。他の惑星の大学入試に地理が課せられるか知りませんが、とにかく一橋大学の地理の問題は骨太です。 ②アメリカ合衆国財務長官=ジャネット・イエレン 1月17~28日の日程で、セネガル、ザンビア、南アフリカ共和国を訪問 イエレン財務長官のアフリカ訪問は、昨年12月の米国・アフリカ首脳会議のフォローアップの意味合いを持ったものとされています。この会議では、アメリカ合衆国が今後3年間でアフリカへ550億ドルを投資する計画が決定し、バイデン大統領自ら2023年中のアフリカ訪問が予定されました。 イエレン財務長官はアフリカ訪問中の1月20日に、「ロシアによるウクライナ侵略でアフリカ経済が打撃を受けている、また国際社会がアフリカに対して中国への債務から救済する措置を執る必要がある」と述べました。さらに26日には訪問先の南アフリカ共和国にて、「ロシアによるウクライナ侵略で、エネルギー価格が高騰し、食糧難が深刻化している」と続けました。その3日前にロシアのラブロフ外務大臣が同国を訪れたばかりであり、いわば当てつけのような発言でした。 ③ロシア外務大臣=セルゲイ・ラブロフ 1月23日から南アフリカ共和国、エスワティニ、アンゴラ、エリトリア、2月7日からマリ、モーリタニア、スーダンを訪問 そのラブロフ外務大臣ですが、1月23日に南アフリカ共和国を訪問、2022年にロシアと南アフリカ共和国が1992年に国交を樹立してから30周年を迎えたことを祝いつつ、今後も協力関係を続けることを確認しました。 過去を振り返ってみると、アパルトヘイトが存在していた時代の南アフリカ共和国は白人政権でしたので、黒人を中心に組織されたアフリカ民族会議(ANC)は反政府組織として闘争していました。このANCを支援していたのが旧ソビエトだったこともあり、現在の南ア政府与党となったANCとロシアは関係性が非常に強いものとなっています。また現在ではBRICSがフォーラムとして機能していることもあって、3回の決議案に対して南アフリカ共和国はいずれも「棄権」の立場を採って中立を維持しているわけです。 ちなみにアパルトヘイト廃止後、人種間対立の是正に尽力したのが1991年からANCを率いたネルソン・マンデラでした。彼がいかに偉大な政治家であったかがうかがい知れます。 そして2月7日、ラブロフ外務大臣はマリ共和国を訪問し、武器供与や要員派遣などの軍事的支援の継続を約束します。大義名分は「サヘル地域やギニア湾岸諸国が直面するテロとの戦いに勝利するための支援」であり、マリの軍事政権とロシアの関係が緊密になりつつあることを示す象徴といえます。 マリは2012年にクーデターが発生して以来、政情が不安定となっていて、治安維持を担っていたのがマリの旧宗主国であるフランスでした。しかし、フランス軍はすでに撤退し、それと前後してロシアが影響力を拡大してきました。 以前私は、2020年に起きたクーデターについてYahoo!ニュースに寄稿したことがあります。 ▼マリ共和国でクーデター発生! トゥアレグ民族とイスラーム過激派の存在、そして政府軍内部の不満とは? https://news.yahoo.co.jp/byline/miyajisyusaku/20200820-00194232 以下に内容を簡単にまとめます。 サハラ砂漠のあたりには、トゥアレグ族という遊牧民が生活をしていました。信仰する宗教はイスラームです。元々、砂漠には国境という概念がありませんので、広い範囲で交易を行っていた民族です。しかし、ヨーロッパ列強によって国境が引かれると、それぞれの国での少数民族となっていきます。 2011年のリビアのカダフィ政権崩壊をきっかけに、リビアにいたトゥアレグ族がマリへと入り、アザワド解放民族運動(MNLA)を結成します。このMNLAはマリ北部を制圧して独立宣言を出しますが、後にイスラーム過激派組織アンサル・ディーンに乗っ取られてしまいます。ここでフランスが治安維持に乗り出し、紛争が泥沼化していきます。 しかし、マリ北部にフランス軍が駐留する理由は、マリ北部に多く埋蔵されている金やウランの開発を維持するためとされています。そして、実はフランス政府はMNLAを公然と支援してきた事実があります。これはイスラーム過激派組織を退け、北部に眠る鉱産資源の「防人」として利用しようと考えていたようです。ナイジェリアで起きたビアフラ戦争(1967~70)のさいに、フランスがイボ族の独立を支援したときと同様、結局は鉱産資源に対する既得権益を持つことが目的です。これはフランスの「新植民地主義」ともいえる、アフリカ諸国への対応です。 結局、マリにおけるフランスの治安維持は状況を改善させることはできず、反フランス感情が高まって、その後軍部によるクーデターが発生するにいたります。そして2021年12月、フランス軍がマリのトンブクトゥ市から撤退し、続いて昨年8月にはフランスはマリからの軍の撤退を決めました。 そこにやってきたのがロシアということです。フランスがイスラーム過激派組織の制圧を怠っているからこそ混乱が生じているのであって、「これを我々が制圧してみせます!」と、民間軍事会社のワグネルが反フランス感情を煽っている節があるといえます。結局昨年2月には、フランス政府とマリ政府との緊張関係、そして西アフリカ諸国のワグネルとの取引決定から、フランスはマリからの軍隊の撤退を決めます。 またスーダンでは、ロシアの鉱山会社の企業活動にとって良い環境が整っていると評価しました。この鉱山会社はワグネルとの合弁会社であり、「現地政府から要請されて活動している」という大義名分を明らかにしようと考えているのが明白です。スーダンもまた決議案に対しては「棄権」によって中立の立場を示しました。 ■レアメタルが眠るアフリカ大陸 今月2日、アメリカ合衆国司法長官メリック・ガーランドが、ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジンを「戦争犯罪人である」との見解を示しました。さらに、「ワグネルにはウクライナ東部のドンバス地方への住民への攻撃に対する責任がある。ロシアの刑務所から受刑者を戦闘員として連れてくるなど、理解しがたい行動をしている」と非難しています。 ▼ワグネル創設者は「戦争犯罪人」米司法長官 https://www.afpbb.com/articles/-/3453665 時は2021年9月のこと、フランスの軍事大臣フローレンス・パーリー(当時)が、マリ政府に対してワグネルとの取引をしないよう警告を発しています。ワグネルとの取引は、フランスが2013年より長年サヘル地域のために行ってきた治安維持と矛盾するとしています。 近年、サハラ砂漠周辺地域でのワグネルの影響力が高まっているとされていて、リビアの反政府武装組織リビア国民軍なども支援しているといいます。これは、リビアが決議案に賛成を投じていることからも、その対立の図式が理解できます。さらにスーダンやモザンビークなどにも支援しているとされていて、両国ともに決議案には棄権しました。 政情不安な国を見つけては「俺が助けてやろう!」と救いの手を差し伸べるのはロシアだったり、中国だったりが行う、よくある手法です。ロシアのシリアに対する対応が好例です。だからこそ、ワグネルの戦闘員が送り込まれているという指摘に、「実は裏でロシア政府が関与しているんじゃないの?」という疑惑がつきまとうわけです。もちろんロシア政府は否定するわけですが、現地政権を積極的に不安定化し、アフリカにおけるロシアの存在感を徐々に高めていこうとしています。そういえば、ビアフラ戦争のさいにも、旧ソビエトが出しゃばってきた歴史がありましたね。 さて、経済産業省資源エネルギー庁の資料から抜粋した図をみると、アフリカ大陸のありとあらゆるところに鉱産資源が眠っていることが分かります。

▲アフリカの資源の賦存状況(出典:資源エネルギー庁) ▼アフリカの鉱産資源の重要性と我が国の取り組み https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/africa/pdfs/sm_kanmin_1_6.pdf ロシアは軍事支援を行う見返りとして、こうした鉱産資源の開発利権を得ていると考えるのが妥当でしょう。つまり、アフリカではロシアに治安維持を頼む見返りとして鉱産資源の開発利権を与え、ロシアは民間軍事会社を使って戦闘員を送り込むといった図式ではないかと考えられます。「政情不安によってできた『すき間』」を狙うというわけです。 しかし、その役割をこれまではフランスが担っていたという話であり、アフリカ大陸が大国に翻弄されるのは今も昔も変わりません。 ■新たな外交戦の場となったアフリカ大陸 3月1日から2日間の日程で、アフリカのガボンにて「ワン・フォレスト・サミット」が開かれました。これは昨年エジプトで開催され、全く盛り上がらなかったCOP27(国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議)中に、フランスのマクロン大統領が提唱したもので、森林保全について話し合う会議です。 ▼#085:まったく盛り上がらないCOP27 https://foomii.com/00223/20221106210000101602 「ワン・フォレスト・サミット」への出席を前にして、マクロン大統領は「フランスは今後、過去に行ってきたアフリカに対する過度な干渉はしない」と述べ、訪問先のガボンにて「『Françafrique』の時代は終わった」と続けました。 「Françafrique」とは、「France-Afrique」が語源であり、コートジボワールの初代大統領であったフェリックス・ウエフ・ボワニーが用いたとされています。つまり、アフリカにおけるフランスの勢力圏のことであり、穿った見方をすれば「裏庭」と表現されます。「植民地支配」が終わったとはいえ、軍事介入や豊富な鉱産資源の開発へのフランス系企業の進出など、かつての植民地に対して引き続き影響力を堅持するために、時の指導者を支援してきました。これが結局は特定団体の利益に繋がり、長期政権の独裁者が誕生してしまい、汚職の蔓延に繋がっていくわけす。 マクロン大統領は昨年7月、4月の大統領選での再選後、初めてアフリカを訪問しました。この時の訪問先は、カメルーン、ベナン、ギニアビサウの3か国です。特にカメルーンでは、カメルーン経済へのフランス企業の影響力が大きく低下したこともあり、その回復を意図した訪問でした。そして今回のアフリカ訪問では、ガボン、アンゴラ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国を歴訪しました。 「Françafrique」の時代が長かったこともあり、過去をほじくり返して、反フランス感情が高まってきているとの見方もあるようです。そのため、フランスはアフリカにおける旧フランス植民地とのこれまでの関係をリセットし、対等な関係を結ぶことで反フランス感情を緩和させたい意向をもっています。 ワグネルはアフリカにおける旧宗主国の退路を上手く利用して鉱産資源が豊富な地域へと入り込み、ここを拠点とする反政府組織を積極的に支援しています。特にワグネルはすでに中央アフリカ共和国での金の採掘権を得て、同国が内陸国であるがゆえにスーダンを経由してロシアへと輸出できる道筋を立てているといいます。確かに中央アフリカ共和国もスーダンも、決議案は棄権して中立の立場を採っています。 ロシアのラブロフ外務大臣は昨年の7月にアフリカを訪問しています。この時訪れたのは、エジプト、コンゴ共和国、ウガンダ、エチオピアの4か国です。ロシアにとってのエジプトといえば、小麦の最大の輸出相手先であり、また通常兵器の輸出先でもあって、いわば「お得意様」です。黒海から二つの海峡を経て地中海に出ると、そこには人口が1億人を超す国がある。この市場を取り込まない手はないわけです。 エジプトは決議案には賛成を投じていますが、コンゴ共和国、ウガンダ、エチオピアは棄権しています。 ワグネルはロシア国防省の代理勢力といえるのかもしれません。ロシアは依然としてアフリカ諸国への最大の武器輸出国であり、国別にみるとインド、中国、アルジェリア、エジプトの順に輸出が多くなっています。やはりアルジェリアは決議案に対して「棄権」しています。 旧フランス領にチャドがあります。現在のチャドの大統領は暫定大統領として、前大統領イドリス・デビの息子マハマト・デビが努めています。前大統領は2021年4月にチャド反政府勢力との戦いの最中に負傷し、2021年に死亡しました。 チャドは長年、旧宗主国であるフランスやアメリカ合衆国との関係を良好に保ち、両国に支えられてイスラーム過激派組織の台頭に対応してきました。もちろんチャドは、決議案には「賛成」の立場を示しました。前大統領の死去をきっかけに、ワグネルとチャドの反政府勢力が共謀して、チャドを不安定化させようという計画があるとアメリカ合衆国はみているようです。 アメリカ合衆国がチャドを重視する理由に、アラビアゴムの存在は大きいといえます。アラビアゴムの用途としては絵の具、インクの材料、そして忘れてはならないのがコーラの原材料。アラビアゴムが入っていないと、甘味料が沈殿し、透明な飲み物となってしますので、コーラにはなくてはならないものです。そのためか、アメリカ合衆国とチャドの関係は非常に良好なものとなっています。コーラ、恐るべし。 ロシアによるウクライナ侵略の中、気づけばアフリカ大陸が新たな外交戦の場としての様相を呈しています。それは豊富に眠る鉱産資源の奪い合いです。レアメタル、それを前にすると人は何かに取り憑かれるのかもしれません。 そしてロシアは、ワグネルによって現地で戦闘員を採用して訓練を施し、そしてウクライナに再派遣する算段があるように思います。 (終わり) //////////////////////////////////////////////////////////////// 本ウェブマガジンに対するご意見、ご感想は、このメールアドレス宛に返信をお願いいたします。 //////////////////////////////////////////////////////////////// 配信記事は、マイページから閲覧、再送することができます。ご活用ください。 マイページ:https://foomii.com/mypage/ //////////////////////////////////////////////////////////////// ■ ウェブマガジンの購読や課金に関するお問い合わせはこちら   info@foomii.com ■ 配信停止はこちらから:https://foomii.com/mypage/ ////////////////////////////////////////////////////////////////

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