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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

山田順の「週刊:未来地図」No.820:愚かすぎる政府、踊るメディア、信じる国民 。南鳥島の国産レアアースは“幻想”!


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山田順の「週刊:未来地図」                 

No.820 2026/02/23

愚かすぎる政府、踊るメディア、信じる国民

南鳥島の国産レアアースは“幻想”!

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 中国から輸出制限にあって、注目を集めている「レアアース」。なんと、南鳥島のEEZ内の深海底から採掘できるとあって、政府は入れ込み、メディアは盛り上がっている。

 しかし、専門家から識者まで、国産レアアースは「無理筋」も「無理筋」で、できるわけもないし、できたとしてもコストがかかり過ぎると指摘している。

 そこで、今回は、レアアースについて、しっかりと考察してみたい。

[目次]  ──────────────

■世界で初めて深海底からレアアース泥を引き上げ

■すでに2013年に「無理」と結論されている

■技術的にもコスト的にもまったく見合わない

■オーストラリア以外は経済合理性がない

■日本から2000km以上も離れた絶海域にある

■レアアース泥の採掘は海の環境を破壊する

■防衛、気候を考慮するとリスクが高すぎる

■精製過程の化学処理で猛毒廃棄物が発生する

■「インパール作戦」と同じ無自覚無謀な“幻想

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■世界で初めて深海底からレアアース泥を引き上げ

 

 高市早苗首相は、成長のスイッチを「押して、押して、押しまくっていく」という所信表明演説でもレアアースに触れ、南鳥島沖で国産のレアアースを採掘・生産することに高い意欲を示した。

 中国からのレアアースの輸出規制を受け、「経済安全保障」の面から、なんとしてもレアアースを国産化したいというのだ。

 

 この首相の意欲を受けて、1月12日、探査船「ちきゅう」は、レアアースが水深約6000メートルの海底に眠るという南鳥島に向けて出航、現地で採掘作業を行なってきた。そして、2月2日、世界で初めて深海底(5569m)からレアアースを含む泥を船上に引き上げることに成功したと、内閣府と海洋研究開発機構(JAMSTEC)が発表した。

 そのため、日本のどのメディアも、このことを「歴史的快挙」として報道した。

 この報道の影響は大きかった。いずれは国産レアアースができる。中国の制裁を無意味にできるという雰囲気が、一気に盛り上がったからだ。

 

 しかし、本当にそうだろうか?

 レアアースに関しては、そんな簡単な話ではないのだ。

 

■すでに2013年に「無理」と結論されている

 

 私はかねてから、南豊島のレアアースに関して完全に懐疑的であった。今回の探査船の採掘も、なんでいまさらと思っていた。それは、2013年、すでに「無理筋」と結論が出されたはずだからだ。

 

 当時もまた、中国によるレアアースの輸出規制を受け、日本は国家プロジェクトとしてレアアースの調査を開始した。そうして、南鳥島のEEZ海域の深海底にあることが発見されたのである。もちろん、直ちに採掘試験が行われた。

 

 では、結果はどうだったか?

 あっさりと、採掘・生産は無理という結論が出されたのである。

 

■技術的にもコスト的にもまったく見合わない

 

 なんといっても、深海底からレアアース泥を引き上げ、精製するのは、大変な作業である。

 まず技術的に、現状では無理とされた。また、引き上げることができたとしても、それを精製するのは困難とされた。

 

 さらに懸念されたのが、環境汚染。中国がレアアースの精製を独占できているのは、環境汚染を無視できる広大な土地と批判を抑えられる政治的な強権があるからである。日本にはそれがない。

 問題はまだあった。それは輸送。南鳥島から本土に輸送するには、それなりの輸送船舶を用意し、輸送路を確保する必要があり、それは難しいとされたのだ。

 

 というわけで、以上の点をすべて考慮するまでもなく、技術的にもコスト的にもまったく見合わないとされたのである。

 

 つまり、今回の件は、高市「存立事態」発言により、中国の日本制裁が始まったので、焼き直されただけである。高市政権のプロパガンダであり、じつはなんの進展もないと言えるのだ。とうの昔に結論が出ているのに、予算を与えられたので、再度同じことをして、「世界初」と発表しただけだ。

 それをそのまま垂れ流すマスメディアは、本当にどうかしている。

 

■オーストラリア以外は経済合理性がない

 

 私は編集者時代、元・蝶理で世界中の鉱物資源を探査した経験を持つ中村繁夫氏の知遇を得て、『レアメタル・パニック』という本を出したことがある。

 中村氏の知見は素晴らしく、レアアースに関してもトップレベルの知見を持っていた。

 

 その中村氏が2013年3月、「東洋経済」に『南鳥島レアアース開発は30年かけても難しい 「夢の海底資源」報道に覚える違和感』という論考を寄稿している。

 以下、そこから、引用する。

 

《中国のレアアース資源の供給不安と環境問題の危険性を先取りする形で、オーストラリア、カナダ、東南アジア、ロシアから中央アジア、南アメリカ、北アメリカ、カナダとすべての資源の可能性をチェックして回った。調査の結果、われわれの結論として、最も可能性のあると目される鉱山はオーストラリアのマウントウェルド鉱山であった。

 それ以外のレアアース資源は、開発コストが過大であり、経済合理性がないとの結論を出した。》

 

 もう書くまでもないが、この中村氏の論考に尽きる。ただ、それでもなお「可能性は高い」「日本ならできる」という声がある。さらに、政府がアメリカ企業と共同開発するという提言をしているので、期待を寄せる声がメディアを支配している。

 本当に、日本人は現実思考ができなくなっているとしか思えない。

 

… … …(記事全文6,045文字)
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