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号外 遺族年金がもらえなくなる。年金改革問題と共に民主党(連合)
昨年の参議院選挙で、国民民主党は年収103万円の壁(非課税基準)を178万円まで引き上げると提案した。年収の壁には以下の2種類がある
- 所得税の壁(103万円)
- 社会保障(扶養家族)の壁(106万円・130万円)
これらは異なる制度だが、実際には密接に関連している。少数与党に転落した石破政権は、野党の圧力に押され、103万円の壁を160万円まで引き上げ、維新案の高校無償化を受け入れて一般会計予算を成立させた。しかし、野党側は、壁の引き上げがなければ審議には応じないとし、財源が不明確なまま国会を通過した。
また、社会保障(扶養家族)の壁(106万円・130万円)も問題視された。税の基礎控除を引き上げるだけでは低所得者の収入増加にはほとんど寄与せず、働きやすい環境を整えるためには扶養の壁も引き上げる必要があった。来年度から適用するためには今通常国会で成立させる必要があり、石破総理が外遊に出る6月中旬までに参議院を通過させなければならない。そのため、異例のスピード審議が行われることとなった。
年金改革と3号被保険者問題
国民民主党や立憲民主党の年金改革の背景には、連合(労働組合団体)が求め続けてきた「第3号被保険者の廃止」がある。
現在、社会保険と年金は以下のような区分がある:
- 1号(国民年金:個人事業主など)
- 2号(厚生年金:サラリーマン)
- 3号(扶養家族:サラリーマンの妻など)
連合は、社会保障を「個人単位」にするべきだと主張しており、その思想には社会主義的な源流(家制度の否定・個人の尊重)がある。夫婦別姓やLGBT対応などの政策も、この考え方に基づいている。
もし第3号被保険者制度が廃止されれば、扶養家族という概念はなくなり、保険や年金も個人単位で運用されることになる。また、将来的には、1号(国民年金・基礎年金)と2号(厚生年金+企業年金)という区分も撤廃する必要があるとされている。
年金改革法案の問題点
年金の基礎部分を引き上げるためには財源が必要だが、自民党・公明党の案では党内の反対を受け、第3号被保険者制度(専業主婦など)を維持し、遺族年金も「亡くなるまで受給可能」とする仕組みを維持した。
しかし、第3号被保険者の廃止を求める連合の意向を受けた立憲民主党は、制度廃止を強く要求し、「廃止しなければ国会の審議に応じない」とした。今国会で成立させなければ、来年度の実施に間に合わないため、石破政権と自公はこの要求を受け入れた。
結果として、1号国民年金の不足額を2号厚生年金で補う形となり、遺族年金の支給期間も一部「死亡後5年間のみ」※1と変更された。これは、貯蓄の少ない専業主婦にとって「5年の猶予付き死刑宣告」に近いものとも言える。
現在、衆議院は通過したものの、参議院での審議は不透明な状況だ。国会の審議日程は、与党第一党と野党第一党が決定するため、立憲民主党参議院の斎藤嘉隆氏(@saito_yoshitaka)が審議を止めれば、法案は廃案となる可能性がある。
※1子供のいない60歳未満死別世帯
憲法判断と今後の展望
この法律は憲法上の問題を含む可能性がある。年金は保険的な側面を持つため、一定の財産権が認められている。
予定されていた年金額を大幅に削減することは、財産権の問題だけでなく、生存権にも関わるため、憲法違反と判断される可能性がある。もし違憲立法審査が実施されれば、最高裁が法案を無効化する可能性がある。
この問題の発端は財源を確保しないまま103万円の壁を引き上げたことにある。本当に改革を行うのであれば、国民民主党が連立与党に入り、制度設計の段階から真剣な議論をするべきだった。しかし、制度設計を行わず、額と時期の調整だけの交渉を続けた結果、このような問題が生じている。あまりに拙速すぎたのだ。
また、官邸の機能不全と少数与党への転落により野党の意見を受け入れなければ何も決定できなくなった自民党の現状が、この問題をさらに複雑化させている。今後の展開については、引き続き注視する必要がある。
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著者:渡邉哲也(作家・経済評論家)
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