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ビジネス知識源プレミアム(660円/月:税込)Vol.1385
<Vol.1385号:土曜増刊:日本政府の2つの大きなウソ>
2023年11月22日:政府の財源問題の追及ホームページ https://www.cool-knowledge.com
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著者へのメール yoshida@cool-knowledge.com
著者:Systems Research Ltd. Consultant吉田繁治
予算委員会が開かれています。議会は、国家の政策の議論の場です。ところが、国家ビジョンを戦わせる議論は皆無です。スキャンダル暴露の、「文春砲」の矮小版でしかない。
議員の資質と、知識の問題に帰することができるでしょう。議会中継は、金魚鉢を見ているように感じます。女性議員も増えていますが、質問も政府答弁も、水準は高くない。
このレベルの議員に国政を委ねていいかと、いつも感じます。官僚の作文を読むだけの首相と大臣、水準の低い質問の野党。議員1人の政党助成金をいれた報酬は、1億円+政治献金です。議員になることと、職を続けることが目的の集まりです。
議会で追求すべき大きなことは、本稿で書く、2つです。
いずれも、国家の危機に関係していますが。議員の質疑はかすってももいない。広く知らせるため、本稿で書きます。
■1.国防費倍増(5年で43兆円)の原因となったことのウソ
岸田政権は5.5兆円の国防費を倍増しました。5年で43兆円(年間平均8.6兆円)です。「防衛費は(国民の財産と生命を守るものだから、警備保障のセコムのように)国民負担が筋(財務省)」として、2年先の増税を、示唆しています。消費税では、13%から15%くらいが想定できます。
LGBTQより、防衛費と子育て支援金の増額のための、増税の予想が、岸田政権への支持率が低くなってきた原因です。ネットでは、「増税メガネ」という。たっている蔑称が使われています。
財務省が「ご進講」で洗脳した犬になっているのです。
安倍元首相は、予算案では、財務省に抵抗していましたが、岸田首相は、完全従属です。
【組織としては、ワルの財務省;個人は別ですが・・・】
財務省は、江戸の仇を長崎でとるように、政治家を税務調査や政治資金調査を差し向ける裏権力で政治家をコントロールしています。
国税と財務省の分離が必要です。しかし分離を唱える政治家には強力に抵抗し黙るまで税務調査を差し向けます。これが彼らの組織の方法です(悪代官風です)。
今回の、派閥の政治資金の記載漏れの問題も、財務省のリークと見ています。政治資金の出入りのデータは、財務省しかもたないからです。国民からの支持率が低い岸田首相への減税をさせないための脅しでしょう。
国民の支持が20%台に下がった岸田首相は、もっとも早ければ、13兆円の補正予算成立のあとの12月に、遅ければ。24年の3月に辞任の可能性が高いと見ています。
今回の政治資金(派閥の裏金問題)も、財務官僚の岸田政権への「見せしめ」でしょう。「もっとヒドいことも、ばらまく」ということです。
質問する野党も財務省の情報権力に乗せられています。情報権力とは、数値データをもつことから来る誘導の力です。財務省は、国家の金融、予算、政務の全部のデータをもっています。
政治家と政党の、お金の問題では、データの出処は国税庁をもつ財務省以外ではない。森友学園への国有地の、格安での払い下げの問題と公文書書き換えの暴露も、反財務省の気味があった安倍首相への牽制のための、同じ筋のものでした。
組織の末端(近畿財務局)を自爆させる本省の高官が考える手練手管です。(注)生真面目だったという赤木財務官の自死(2018年3月7日)。
20年前の財務省スキャンダルの結果の、金融庁の切り離しから、就職人気が下がり、倫理がなく小粒なまま裏権力をもったキャリアになる財務省は、「小ずるいさが強くなった組織」です。
個人としてではなく、組織として裏権力を使う。事実を言えば、財務省の内部での「あいつはワルだ」はその人物の策略を高く評価する言葉です。
ワルとは、財務省が決めた目的の達成のために、策略を作ることができるという意味のものです。民間のトップや役員が何かを頼むため財務省に行くと、課長は脚を机にのせて、話を聞きます。
尊大ぶって、自分はエライと見せる。動物が自分より弱い者を威嚇する態度に似ています。彼らには、幼少のころから教師や親から「頭がいい」と讃えられた経験しかない。
独身で財務省に入ると、「資産家からのお見合い」が山のように来ます。産家家の子女を財務官僚につけるのは、つまらないマネーに転ばないためです。一般会計だけでも110兆円の予算査定が生む権力は、ものすごい。特別会計を含むと、250兆円です。
組織は、増税を言わないと出世ができず、一言でも減税を言えば左遷されます。増税の手先である自民党の税務調査会(宮沢会長:宏池会:岸田氏のいとこ)に現れています。
「(大蔵省時代の1998年の)ノーバンしゃぶしゃぶ」に類する事件を暴き、国税庁と財務省を分離すれば、裏権力を使う財務省も終わるでしょう。
それまでは、国税庁の調査権を武器にする裏権力での、政治家・新聞社、金融支配が今後も続きます。裏権力には、不正がつきものです。
会社の全部の帳簿を、根掘り葉掘り調査として調べる税務調査に長時間(1か月など)付き合わされれば、たまったものではない。
金融庁による銀行、証券の締め上げも同根です。江戸時代の悪代官の手法です。
当方の超零細企業にも、税務調査がありましたが、その間はの約3日は業務がストップしました。結局、印紙税の貼り忘れの、確か5万円くらいを払いました。そんな細かいところまで見ます。
【中国の台湾侵のウソ】
ここまでは、財務省の内部の、画策の前段です。以降は、米国から要請されていた国防費の倍増(5年で43兆円)で、ウソの原因となったことです。
米国は、世界の危機意識を高めたウクライナ戦争を機会に、武器を売るため、ドイツと日本の国防費を倍増させました。
防衛費の倍増は、ウクライナ戦争での、メディアのドサクサのなかで決まりました。直接の原因は、狭い台湾海峡での軍事的緊張の高まりでした(下院議長のペロシ(民主党の強硬派のヘッド)は訪台で演技しました)。
「台湾有事は日本の有事」とされていています。日本の有事とは、人民解放軍が日本の軍事基地を攻撃することです。
図式は、「台湾有事の可能性が高まってきた→日本はミサイルで迎撃するために、国防費を倍増する」ということでした。日本武器生産ではなく、米国からの兵器の拡大輸入予算です。国会での審議も少なくあっさりと決まったのです。財源は、国民負担とされました(消費税の増税)。2年後の増税だけは、ウソではない。
◎しかし台湾有事、つまり中国の台湾への軍事侵攻は、ウソです。
日本の保守層では、「台湾併合の期限と、公式にCCP(中国共産党)がしている2027年までには、台湾に軍事侵攻し、日本も巻き込み、日本へも中国が攻撃する可能性もある」とされています。
台湾への軍事侵攻に備えるとして、岸田政権が決めたものが防衛費の倍増(5年で43兆円)です。政治と軍事で米国の支配下にあるドイツも、国防費の倍増をしています。
【当方の見方】
「(1)中国の台湾への軍事侵攻はない。(2)ただし、台湾の総統選挙(現在は蔡英文:2024年1月)で、親中派の候補、新北市長の侯友誼(こうゆうぎ)などを当選させる目的の世論工作は行う」と見ています。現在は不利な侯友誼が当選できるかどうかは不明です。たぶんムリです。
◎中国が台湾への軍事侵攻ができない理由は、中国の共産党幹部の多くが、米銀とスイスに不正蓄財のマネーを預けているからです。
タックスヘイブンのスイスには、以前から、中華マネーは200兆円から400兆円があると言われてきました。CIAは、米銀とタックスヘイブンにある、世界の預金の名簿と、預金の金額を把握しています。(事例:ジュリアン・アサンジのWiki-leaksのハッキング:2006年)。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B9
アサンジにハッキングされたのは、タックスヘイブンのへの預金の名簿、預金額、外交機密文書、軍事機密文書など100万ページでした。その情報は、CIAと米政府が蓄積しているものです。(注)米国では、日本のような行政文書破棄の習慣はない。
中国共産幹部の、タックスヘイブンへの預金は、米国政府は100%把握しています。
▼米国は、中国の台湾侵攻があれば、CCP幹部の蓄財預金を凍結し、名簿を公開すると言っています。
◎人民解放軍が台湾に侵攻すれば、米政府はスイスと米銀への預金を凍結します(100%確実です)。海外預金をもつ共産党幹部の氏名と預金額を公表するという法も、州議会の段階で審議、立法されています。
現代の戦争はCIAも言うように情報戦、認知戦、ハッキングです。これをやられると、中国の国民の反発からCCPの中国支配は終わるでしょう。戦争どころではない。人民解放軍も、CCPから離反します。
貿易禁止品目という柔らかい方法でなく、米政府は裏預金の情報という武器をもっています。中国CCPは米国を相手に戦争はできないのです。
◎中国の海外預金の公表は、核兵器のような戦争抑止力をもっています。
【ウクライナ戦争のとき】
ウクラナ戦争のとき、米国は、ロシアの米銀と欧州への預金(政府の外貨準備)を3000億ドル(45兆円)凍結しました。外貨準備は、ロシア政府のマネーなので、プーチン個人には及ばない。
このためプーチンは平気であり、却って中国と連携して、ドルに代わる「金ペッグのBRICSデジタル通貨(貿易通貨)」を立ち上げました。
ところが、中国共産党(党員8000万人:14億人の支配階級)の幹部の外貨預金(当方の推計300兆円)は、多くが、個人の不正蓄財です。公表と凍結されたら、多くのCCPの幹部は失脚します。
(注)中国の、公式発表の対外資産は9.4兆ドル(1410兆円)、対外負債6.6兆ドル(990兆円)、対外純資産は2.8兆ドル(420兆円)とされています(23年6月)。国家外貨管理局の人民日報での発表です。実際の対外資産は、よく分からない。
対外資産のうち、貿易の支払い用の外貨準備は3.2兆ドル(480兆円)、日本の1.3兆ドルの2.3倍とされています。
http://j.people.com.cn/n3/2023/1002/c94476-20079151.html#:~:text=%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E5%A4%96%E8%B2%A8%E7%AE%A1%E7%90%86%E5%B1%80%E3%81%8C,7758%E5%84%84%E3%83%89%E3%83%AB%E3%81%A0%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82
◎CCPの幹部は、民主革命が起こったときの海外逃亡のために、政府マネーを外銀に個人預金として蓄財してきたのでしょう。外銀への個人蓄財は、政府の外貨準備とはされていないものです。
CCPはフランス革命の研究をしていました。結論は「国民の貧困が革命を引き起こす」ということだったのです。
このため1994年の開放経済から、国家資本主義によるGDPの成長に邁進した。トウ小平の「先富の思想「南巡講話:1992年」がこれです。「資本主義で先に富め、富んだら人民を引き上げよ」という国家資本主義の宣言です。
以来30年。先富の字義通りに、資産格差は極限まで拡大しました。バベルの塔の、頂点の資産富裕層は、0.3%(420万人)、共産党幹部と企業経営者です。貧困層が66%(9.2億人)
習近平主席の公式の報酬は、社会主義を引いていて月収1万元(20万円)です。非正規雇用並みのままで上がっていない。CCPに、公的マネーからの不正蓄財がはびこる原因がこれです。
公的報酬で生活していたという前首相の李克強の家族は、貯蓄がなく貧困だったという。英語教授である夫人の言葉です。「どうやってこれから生活するか」と言っていました。
〔結論〕
人民解放軍が、演技的な緊張を高めるデモンストレーションはしても、台湾に軍事侵攻することはない。中国CCPの台湾への軍事戦略は、国民向けに、「やっているふり」です。
外敵を作ることは、古来か国民支配の方法です。韓国と北朝鮮も、実行しています。外交部の報道官の、記者会見が手段です。皆、「言わされています」。前首相の李克強のように反抗すれば排除されるからです。李克強は、声望では習近平の上位でした。
米・中はともに、主流メディアも使って台湾海峡で武力を使うフリの「認知戦、情報戦」実行しています。
(注)新著『金利と通貨の大転換』の冒頭部に、米国と中国の、海外、国内への認知戦について詳述しています。
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人民解放軍の内部にも、「米国が参戦することになる可能性がある台湾侵攻は、今の武力ではムリだ」という反対論があります。
習近平は、軍の内情と兵器の真の性能を知って、台湾侵攻に反対を唱える国防相や外務大臣は、理由を言わず罷免してきました。
◎人民解放軍は一枚岩ではない。地方での反乱もあります。選挙制のないCCPが恐れるのは、「天安門事件の再来と民主化雲運動」です。
日本政府には、「中国の台湾侵攻はない」という根拠をもった見方は皆無なのか? この見方がないとすれば日本政府・自衛隊の「情報分析力はない」と言えます。当方が、1人でもできるくらいの基本的なことですが・・・。
中国が台湾と日本に攻めることはない。安心していていい。
北に目を転じると、日本に米軍の基地があるかぎり、北方領土は戻って来ない。プーチンは、27回も会談した安倍元首相に、「千島列島を返したとき、米軍は、ロシアを狙う戦略ミサイルの基地をそこに作る。これがないと、保証できるか?」と迫った。安倍元首相は、答えることができなかった。機密ではない情報です。
◎米軍の基地は、日本を守るためのものではない。東アジアでの米国覇権(日本への支配権)を、中国とロシアから防衛するためのものです。政府は、米軍の目的偽装の、お手伝いをしています。
組織に帰属しない当方は、抑止力を使う自衛の核武装論です(伊藤貫氏と同じ意見です)。
以前、「会社は・・・」という人に対し、議論したことがあります。会社は偽装的な組織です。あなたの意見や戦略は何か?
日本は・・・という議論も同じです。日本に属する個人の見解が、大切です。個別の脳をたどれば主観である個人は、社会という幻想の共同体とは異なる「異見」をもっているはずでしょう。
「個人の関係である社会」ってどこにあるものですか? 言葉が示す、イメージの上のものでしょう。同様に、「これが窓という窓」もない。あるのは窓という言葉による共通の観念と、無数の、個別・具体的な「窓」でしょう。
政治家の討論も、ここまでさかのぼらねばならない。
上場会社のCEOも、法人という、人工の組織の所有者である株主から1)定款に決めた事業で利益を上げること、2)株価を上げる手段(戦略の策定と実行)としての、組織運営を委任された役割(=立場)のものです。
国家の所有者は、選挙制度のある国では、国民です。1人1票の1株株主なので、国家は国民のものということがはっきりしとしないところが、政治家と国家官僚のつけ込むところです。
社会は、共通の言葉と文化で、社会の関係を作っている集団です。国民国家は、近世の王制・貴族制が崩壊したあと、単一民族または多民族として形成されたものです。
日本には天皇制があるので立憲民主国です。米国は、州に独立性のある、EUと同じ連邦国家です。1989年に崩壊したソ連も連邦国家でした。
政治家は、選挙で国民益を高める委任を受けた役員です。官僚は役員で構成される議会が決めた法で、決めた行政を執行する事務官です。国家では、代表(国民の代わりを果たす代議)が首相や大統領であり、市が市長のものではないように、所有者ではない。
国王の時代は、日本と世界で、国家、国土、人民は国王のものでした。現代中国は、中国共産党(CCP)による王制です。経済も国家のものなので、人民の活動であるGDPの数字は支配に都合がいいように偽装しがちになる。
前首相の李克強は、「この国の経済データで信用ができるのは、電力使用量と鉄道貨物だけだ」と言って、国王の習近平主席から疎(うと)まれていました。
中国の経済・金融データは、ほとんどが信頼できない。あちこちに公金の私有が混じっているからです。李克強、習近平の命令に反してコロナのマスクもしなかったのです。
中国の支配とは、人民解放軍の掌握のことです。前々主席の江沢民と争い、2020年ころに、習近平が勝った。これが米中首脳会談のあと、バイデンに民主党が「独裁」と言わせたことの含意です。「共産党が公式に言う集団指導体制ではなくなった」という意味です。
国土の100%を各省の政府が所有し、90年の賃借権(=地代)を国民に売っている王制の中国では、公的マネーと共産党官僚の私有との区別がアイマイになるでしょう。
土地の接収も、所有者である州政府が任意にできます。所得税は共産党配下の税務署で斟酌し、裁量されています。企業の利益計算は、含み益、含み損を隠す偽装になりやすい。
何らかの面で、反政府に思える言動がある民間企業に対しては、アリババのCEOジャック・マー(馬雲)のように罰金3000億円で資産を没収されます(2021年)。講演会のスピーチで中国のクローニー(仲間内)金融の批判ととれる発言があったからです。支配権力の近い方は、国税庁を使う日本の財務省に似ています。
【結論】
中国の、台湾への武力侵攻はない。しかし日本政府は、台湾有事は日本の有事として、国防費を倍増し(5年で43兆円)、その財源として消費税を13%、15%に上げようとしている。ウソの上に組み上げられたムダな増税です。国民のために暴かなければならない。新聞が行うべきことですが、自滅して無力になっています。当方は微力ですが、このために書いたのです。
防衛力の強化と戦争抑止のためなら、最大5兆円くらいしかからない、4隻の原子力戦潜水艦と核ミサイルを作るべきです。いずれも、日本国内で、最長でも約2年で作る技術はあって、死蔵されている濃縮ウランもあります。
トランプは、安倍元首相に「米軍はグアムに引くから、日本は株武装すればいい」と述べていましたこれをこそ、国会で討議すべきでしょう。米国の主流メディアでも、バイデンの人気になさからトランプ再選の見込みが出るように、2023年夏から変化しました。ウクライナ戦争での、米国が支援しマネーと武器を与えたウクライナ軍が負ける状況が反映しています。
■2.債務省が言う「財源はない」というウソ
財務省は、いつも、財源がないという。そのための、増税が必要とする。財務省の内部でも、「減税」は御法度とされ、減税を言えば左遷されます。財務省の2番目の、国民に対するウソとしてこの問題をとりあげます。
◎日本には、対外純資産(=資金余剰)が418兆円あります。
・対外資産1338兆円から、
・対外負債919兆円を引いたものです・
主に米国に対する純貸し付けです。
(対外資産、対外負債:2023年5月:財務省)
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/iip/data/2022_g.htm
対外資産(1338兆円)は、日本の政府、銀行、企業、そしてごく少額は個人が、ドル買いの超過によって増やしてきたものです。経常収支の黒字が平均で30兆円あったとすれば、1388兆円÷30兆円=44年分に相当します。1388兆円が、日本からの「ドル買い/円売り」の累積額です。
日本が、1990年の資産バブル崩壊以降の33年、ゼロから低成長になった資金的な理由は、円が、金利の高いドル買いになって、国内投資は減ったからです。
◎日本は、約40年続くドル買いの超過(=円売りの超過≒米国へのマネー提供の超過)により、米国経済を成長させ、日本経済を低成長にしてきたのです。
〔例えれば・・・〕一家の利益(=経常収支の黒字)を全部、隣の家の貸すことを40年続け、対外資産は増えても、貧困な生活をしている一家と同じです。財務省(家計を預かる主婦)は、「うちには財源がない」といって、生活はきり詰め、自分もおしゃれな衣料を買わず、物価が上がるなかで、夫や子供の小遣いは減額し続け、働けぇ、働けぇ、リスキリングで、プログラミングとAIを勉強しろぅという。これが、日本の姿です。
日本が、米国のように30兆ドルの対外純負債国がなら、財務省、政府、新聞が言う「財源がない」ということも分かります。しかし日本には、対外純資産の超過が、418兆円あります(資金余剰とも言います)。
◎資金余剰の日本で、財源がないというのは、どんなことか。
「ドル債は売るな」ということでしょう。
1990年には、日本とほぼ同額だった米国の賃金は、現在は日本の2.4倍です(2023年の中央値の年収は7万ドル:1050万円:日本は443万円)。こんな国に、誰がした?
◎米国債、米国債券とドル買いを促し、民間にも対外純資産を増やし続けさせた首謀は、日本にとっては「円安」がいいとして約30年も低金利を続けた、財務省・日銀でしょう。与党、野党、新聞、経団連、エコにミストは、財務省に「乗せられています」。
【更にドル買いを促す、国民資産倍増】
米国追従の岸田首相は「国民の資産倍増」と言って、米国最大のファンド、ブラックロック(総運用資金9.1兆ドル=1365兆円)と組んで、国内の銀行・証券会社が「ドル債券、ドル買い、ドル預金」を促しています。
岸田首相は、日本の預金マネーを狙っているブラックロックの社長の、ロバート・S・カビートを元首の接待場である迎賓館でもてなしています。迎賓館は、昭和の鹿鳴館です。岸田首相は、馬鹿なことしかしません。
2023年の新聞にも、何があったのか急に「金利の高いドル運用」を誘う記事が増えています。これが、政府が資産倍増と称する、米国への、国民の預金マネーの提供でしょう
◎国内には、世帯預金が1117兆円、企業預金が344兆円、合計で1461兆円の、ゼロ金利のマネーがあります。
資金循環表で見ると、日本からは、海外(80%は米国)に1479兆円のマネーが流出し、流入は1009兆円です。
◎470兆円が、日本からのキャッシュフロー(現金)の出超です。これが、日銀が作っている、日本全体のマネーの資金循環表です。誰もこの表を利用しませんが、当方は、いつも使っています。
(日銀資金循環表:23年9月分)
https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf
対外資産(1388兆円)の逆の、対外負債(919兆円)は、米銀やファンドによる、日本の国債、債券、株式の買いです。
実はここには、以下の、「日米の資金循環」があります。
【日米の資金循環での、日本の超過が418兆円ということ】
日本の対外資産の増加分(=ドル買いの超過)が、米銀とファンドの運用マネーになって、そのマネーで、米銀とファンドが日本の国債、債券、株を919兆円分買っているのです。
〔マネーの流れ〕日本が米国に預けた(=貸し付けた)1388兆円のマネー資産のうち、日本の対外純資産の418兆円相当が米国に残り、919兆円が日本へのマネー投資として還流したというものです。ブラックロックは日本の預金のとりこみを、ドル債への投資を誘って、狙っています。
米国のFRBが、利上げとQT(量的緩和)を行って、米国のマネーサプライ(M2:マネー量)を減らしているからです。ファンドへの流入資金は減少しているのです。
(FRED 2020年から急増した米国のM2の、利上げ開始の22年2月からの減少):
https://fred.stlouisfed.org/series/WM2NS
マネー量の減少は、金融の収縮を意味します(=投資信託のファンドの収縮)。総額では3000兆円の、米国ファンドマネーの解約が2022年3月以来、進んでいます。これが1位のブラックロック(総資金量1200兆円)が岸田首相に面談した目的です。
◎要は「円の預金マネーをブラックロック預けくれ」という営業です。その営業マンを、国賓として迎賓館でもてなして、おべっかを使う岸田首相の「アタマ」はどこにあるのか? バカとしか思えません。野党は、質問しないのでしょうか?
*
以上が、日本の対外純資産418兆円の、意味です。
◎対外純資産は、財務省が、日本の財源にすることのできる、対米投資の余剰です。日本には、418兆円の対米貸し付け超過の財源が、ドル国債、債券、株としてあるのです。
【418兆円の対外純資産の利用】
純資産は、余剰資金の対外貸し付けの超過を示すものです。対外純資産はゼロ、つまり、対外資産と対外負債の均衡でいいのです。
400兆円は、日本の成長マネーに使うことがでます。毎年50兆円を8年間売り続けることができます。
対外資産1338兆円は以下の内訳です。
・直接投資 274兆円(海外工場等の不動産と設備)
・証券投資 902兆円(米国債、債券、株、ドル預金)
・政府外貨準備 162兆円(米国債、ドル預金)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
対外資産 1338兆円
証券投資のうち、政府か管理するGPIFのドル債が、約110兆円です。外貨準備の162兆円とあわせて、272兆円(直接投資以外の1064兆円の26%)が財務省管理下にあるマネーと見ていいでしょう。74%は民間銀行、生損保、企業のドル債です。
(GPIFの年金基金220兆円の運用:円債50%、ドル債50%)
https://www.gpif.go.jp/operation/28637954gpif/2023_1Q_0804_jp.pdf
1年に50兆円のドル債を売った場合、以下の内訳になるでしょう。
政府管理の外貨準備とGPIFのドル債 50×26%=13兆円/年
銀行と生保のドル債 50×74%=37兆円/年
財務省は以下のように非論理的な抵抗をするはずです。
1)外貨準備は、財務省が日銀に短期国債を売って、ドルを買ったものあり、財務省のマネーではない。外貨準備を売れば、その国債を日銀に返済しなければならない。
〔反論〕財務省が、日銀に国債を返済したことがあるのか。国債発行のままで、全く、構わない。外貨準備を売れば、その国債を日銀に返済しなければならないという財務省の論は、「ドル債を売りたくない」という、米国に支配された財務省の論である。
2)財務省がドル債を売れば、「為替操作国として、米国から罰罰則を受ける」。
〔反論〕米国が禁じている為替操作国は、自国の通貨を下げて、輸出を有利にしたときの為替介入である。ドル売りは、逆に、円高の介入である。為替操作国の非難には、あたらない。
3)銀行と生保がドル債を37兆円売っても、政府の収入にはならない。
〔反論〕
銀行と生保がドル債で運用しているのは、日米の運用金利差が約5%はあるためである。ドル債には、ドル安のリスクがある。このドル安をヘッジするコストは、ヘッジ料5%である。銀行と生保が機関の使命である「安全運用」のために、ヘッジをかければ、ドル債の実質的な金利は0%になる。これが安全をとったドル債の価値である。
37兆円のドル債を売る銀行と生損保に、財務省が「円国債(金利1%)」を発行すればいい。
円国債は、ドル安には無関係であり、円で1%の金利がきます。銀行と損保がドル債を売った分の、円国債の発行は財務省の収入にななる。
以上が、銀行と生損保の、使命である安全運用です。
銀行と生損保に対し強い権力をもつ財務省が、「国家のためにリスクのあるドル債を売って、金利は1%だが為替リスクのない円国債を買ってほしい」と依頼すれば、金融機関の多くが、応じるでしょう。
銀行がドル債を売って円国債を買えば、ドル債を売った分が、財務省の収入になるのです。
以上の3つの方法で、財務省は、50兆円のドル債券の売りから、50兆円の、財務省収入を得ることができます。
財源は、対外純資産に相当するドル債の、418兆円の余剰マネー(余分な貸し付け)にあります。
2024年末から2025年以降は、ドル安が想定されるので、「ドル債の売りという財源作りの政策」は早いほうがいい。
1ドル110円までは、大きな為替差損がなく、行えます。1ドルが150円の現在、ドル債売りは、政府、GPIF、銀行、生損保にとって、為替差益の確定の、大きなチャンスでしょう。この含み益は、1ドルが140円、130円、120円になると減って、最終的に110円になると消えます。
仮に1ドル110円になると、対外資産は1338兆円から、1338×(110/150)=980兆円に減ってしまいます。
◎対外負債の919兆円は、外銀とファンドがもつ円建ての国債、債券、株です。円建て債券は、ドル安になって円では減りません。1ドルが110円なると、対外資産が980兆円、対外負債が919兆円になります。日本の対外純資産の418兆円は灰燼(灰燼)に帰します。為替利益は幻の利益です。
幻の為替利益が最大と思われる2023年から、利益を確定することは、日本が、営々と貯めてきたドル債券売りのチャンスです。
財務省に、1年に50兆円の収入が8年間増えると、何を実行できるか。財源がないといって、やらなかったことの、数々の政策です.
減税に回すなら、以下の財源になります。
1)消費税10%(23兆円)の撤廃。
2)所得税(21兆円)の10ポイント減税。
3)法人税(14兆円)の10ポイント減税。
減税は、2022年からの、物価上昇上昇からの実質所得の下落で減っている需要(個人消費+生産性を上げる設備投資)を増やします。
世帯と法人に使える所得が増えると、日本経済は、成長します。GDPの成長とは世帯と企業の所得が増えることです。現在の、将来悲観の空気が、楽観に変わるでしょう。
岸田首相が在任中にこれをやれば(間に合わないか)、政権の人気は支持率60%以上に沸騰します。首相は、この実行の権限をもっています。
1)消費税の撤廃は、物価を10%下げ所得が10%増えたことと同じ効果です。600万円の年収の世帯が実質では660万円に増えることと同じです。そして経済の成長効果は、次年度からの税収を増やします(ラッファー曲線効果)。
2)加えて、所得税の減税10ポイントは、世帯所得を約30万円は増やすでしょう。実質660万円+30万円=690万円です。実質所得は15%も増えた経済効果になります。
3)法人税の10ポイント減税は、企業の留保利益を5兆円は増やして、設備投資の増加要因になります。
日本経済の、最大の障害は、税と社会保険の国民負担率が46.8%(潜在負担が53.9%)に増えて、使える所得(可処分所得)が、収入の53.2%にしかならないことです。
手取りの収入が減って、世帯が店舗でよく買う商品の物価は8%も上がっています。ぜひ給与明細を、眺めてください。会社が給料から控除して支払う社会保険料が、驚くくらい、増えています。
経済成長がないなかで医療費・年金・介護・子育ての負担が増えたため、江戸時代の五公五民に回帰してしまった。(注)経済が成長していた1980年には、国民負担は30.5%であり、約20ポイントも低かったのです。
https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/futanritsu/sy202302a.pdf
実質所得が減っている日本経済は、国民負担率50%では、成長しません。
本稿で証明したように、日本には、対外純資産418兆円があります。円安のうちに利用して、日本経済を所得成長経済に変えることです。開始のチャンスは、2023年、24年、25年です。
ここまで言っても、「財源がないという増税の財務省」はどう反論するでしょう? 当方には思いつかない。「日本がドル債を売ることを米国が許さない」という根拠しかない。
米国が許さないとしても、「はい、はい」と言って売ればいい。買った債券の処分の権利は所有者にあります。日本のドル債券売りを米国が止めることはできません。ドルの暴落を避けるため、ドル債の売り腰は1年に50兆円をメドとします。対外資産と対外負債は均衡していればいい。
日本が418兆円もの対外純資産もちつづける必要はない。
外貨準備の162兆円は余分です。輸入の6か月分の、80兆円で十分です。60兆円でも、経常主収支が黒字(=ドルの流入超過)の日本は困らない。ゼロ付近でもいいのです。
米国の経常収支は、構造的な赤字です。毎月、日本の所有になるドルがはいってきます。そのドルで日本はドル国債とドル証券を買ってきました。外貨準備は経常収支の赤字国が輸入代金のドル決済のため必要なものです。日本には必要性が薄い。つきあいで持つくらいでもいい。
【後記】
詳細に書いたため多少長くなりました。日本が一刻も早く、2つの大きなウソから、離脱することを願っています。このために、数値をいれて、根拠から書きました。
官僚、政治家、新聞記者には届くでしょうか。以前、経産省の委員会に行っていたとき、拙著『国家破産』を渡しました。課長補佐と課長です。相手は、「目をパチクリ」・・・今は局長、審議官クラスか、あるいは天下りか。【プレミアム読者アンケート&感想の、項目のメド】
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