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吉富有治の魔境探訪 - 政治という摩訶不思議を大阪から眺める

吉富有治(ジャーナリスト)

吉富有治

メルマガ臨時号「さらば大阪市議団 我こそ"ザ・自民党" ~ 維新に忖度など絶対にありえない」
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 なぜ自民党大阪市議団から離れる必要があったのか、新会派と維新との接近はあるのか、そしてどのような政治を目指すのかなどを太田幹事長に聞いてみた。「Q」は私の質問で、それ以下は太田幹事長の回答である。  Q 自民党大阪市議団を抜けて新会派を立ち上げた経緯について教えてほしい。  その前に背景から話したい。前回2019年4月の統一地方選では維新が大躍進し、逆に自民党は大敗した。府議団でも市議団でも自民党は幹事長を落選させることになった。その一方で、無所属の武直樹市議(生野区)は当選を重ね、松崎孔(とおる、住之江区)市議は返り咲いた。この2人は知らないが、統一地方選後に自民党大阪市議団の会派に入ってもらおうという内部での議論があった。 自民党大阪市議団はもともと「自由民主党・大阪市民クラブ」といって、議員の党籍を問わないルールがあった。現在19人いる議員のうち、1、2人は自民党以外の人。そのような柔軟性のある会派だった。そのルールがあるので、武、松崎の両市議も当然、会派に入れると思っていた。ところが落選した自民党議員に近い人からの拒否が強く、2人の会派入りは認められなかった。  話は変わるが、昨年9月の臨時本会議は、大阪市廃止・特別区設置の是非を問う住民投票に関する重要な議題に特化したものだった。ところが共産党市議団と武、松崎の両市議らは少数会派なので本会議では松井市長に質問はできない。4人以下の会派は「非交渉会派」と呼ばれ、本会議での質問権はないからだ。5人以上の市議がいる会派は「交渉会派」といい、本会議での代表質問権がある。しかも非交渉会派は委員会には入れるが特別委員会などには入れない。残念なことに、今の大阪市会では少数の民意は排除される仕組みになっている。  大切な臨時本会議なのだから、このとき少数会派でも質問できるようにと自民党大阪市議団として議会に申し入れた。だが、維新と公明党からルールを盾に拒否された。そこで武市議らは一計を案じ、一時的に共産党と組んで即席の5人以上の会派を結成し臨時本会議で市長に質問することになった(筆者注・その後、この会派は解散した)。  自民党大阪市議団でも武、松崎の両市議の会派入りが2年前に拒否された。そして臨時本会議でも質問が出来ない。私自身、少数の無所属会派の考え方も大切だと思っていたので、今こそ彼らの声を議会に届けるべきだと考え、新たな政策集団のグループを立ち上げたわけだ。 Q 今の自民党大阪市議団に対して感情的な不満があったのか?  感情的なしこりがないわけではない。ただ、様々な個人的な思いはあっても、それを政治家が口に出すべきではないと思っている。ただし政策に関しては大いに不満がある。市会議員になってこの10年、自民党大阪市議団に対してはずっとその不満がくすぶっていた。 Q 新会派立ち上げの記者会見では維新と協調するような発言もあった。  維新と協調できる点は、ほぼない。ただし、彼ら維新の改革マインドはわりと共感している。中学給食の無償化、塾代助成事業、子育て支援、私立高校の授業料無償化といったものは共感できる。 Q 都構想、総合区に関してはどうか。松井一郎市長が先日、新会派が総合区に賛成してもらえるなら秋に条例を出すという話も出ていたが。  都構想はまったく共感できないが、総合区については議論することまで否定はしない。ただし、公明党が作った8区案は最初から話にならない。特に24区を機械的に8区にまとめるという議論など論外。「区割りありき」の議論は許せないが、総合区でも区長準公選制や区の権限といった本質的な議論なら歓迎する。  大阪市の区に関することを言えば、10万人以下の区を検討する審議会を立ち上げるべきだと主張したい。此花区や大正区のように人口6万人台の区はこれからも増えてくる。北区や中央区のような繁華街や企業が集中する区に人が集まり、周辺区の人口は減ってくる。大阪市の未来を考えるのなら、これから先、人口が減っていくような小さな区がどうあるべきかを真剣に考えないといけない。  区割りに関しても一言。どの区にも古い歴史があり、例えば私の選挙区である福島区の中でも様々な歴史的変遷や村と村との合流、そして異なった住民文化がこれまで存在し、現在に至っている。そのような歴史や文化を考えるのなら、区割りにしてもA区とB区は隣り合わせだから1つにするといった足し算のような議論などできるわけがない。それぞれの区が持つ歴史の変遷や住民感情といったものを反映させるものでなければならない。私が総合区の議論を是とするのは、住民の感情や歴史を基礎にした上の総合区でなければならないという意味である。  だいたい政治家が、どの区とどの区をくっつけるといった議論などすべきではない。本来、そこで生活をする住民が考える話だろう。足し算・引き算的な区割り議論をする議員に限って、古くから大阪市に住んでいる人ではないことが多い。維新も自民党も、また公明党の議員もそうだ。彼らは区がたどってきた歴史に無知だ。 Q 記者会見で「維新と協調」といった話が出たものだから、マスコミやネット上では太田市議は維新にすり寄っていくのではないかという憶測まで飛び交った。  私は自民党も嫌いだが、維新はもっと嫌いだ。ただ、住民のことを第一に考えるなら政策によっては維新と協調できる場面はあるかもしれない。私が会見で「協調」と言ったのはその意味であり、維新とくっつくとか維新の補完勢力になるとか忖度するといったものでは全然ない。何から何まで維新の政策を丸呑みするものではない。 Q 自民党を離党するつもりは?  まったくない。今の独裁的な自民党は嫌いだが、それは安倍政権と菅政権のことだ。彼らの考え方は、「民主主義は多数決で決める」として少数派の意見をまったく聞かないものだ。維新もそうだが、今の自民党大阪市議団も国政の自民党と同じことをしている。たった19人の小さな会派で、中央とまったく同じことをやってきた。市民の声を聞いているフリをしながら、実は自分たちの考えをゴリ押ししている。自浄作用が働く自民党は好きだが、働かない自民党は大嫌いだ。 Q 自民党大阪市議団が出してきた案には賛成する?  それも中身による。小さな声を取り入れているような政策なのかどうかによる。 Q 太田市議は自民党の政治家らしくないと思う。  私自身は誰よりも自民党らしい政治家だと思っている。私こそ「ザ・自民党」だ。  もともと自民党は柔軟な政党なのだ。何らかの政策や方針を決める場合、2つに1つの選択をする場合がある。だが、多くは3つ以上の意見や選択肢がある場合も多く、そのときは互いに話し合ってベストな結論へと導くものだと思うし、それが民主主義だろう。従来の自民党はその考えだった。ところが維新もだが、今の自民党にそんな考えはない。グーとパーだけでジャンケンしているようなもので、少数派がグーなら、ずっと多数派のパーに負け続けてきた。そこにチョキが入り込む余地がない。 Q 今の自民党大阪市議団の悪いところとは何か。  国政の自民党と同じで多数派工作をする人ばかりの集団になってしまったことだ。少数派の意見はまったく聞き入れない。  だいたい党活動をやっていない市議があまりにも多すぎる。党員集めをしないとか、住民投票のときの都構想反対のポスターを選挙区内で貼らないとか、党のパーティー券を売らないとか、党勢拡大のための地道な活動をやらない人が多い。自慢じゃないが、私は党員集めも人一倍頑張って目標値を超えている。パーティー券も毎回、自民党の中で誰よりも売っている。  この原因の1つは大阪市の選挙制度にある。大阪市は中選挙区制だから、自民党の市議たちは基礎票さえあれば勝てるし、事実、勝ってきた。だが、どれもトップ当選ではなく、辛うじて勝ってきた感じだ。選挙区内で自民党候補同士の競争原理が働かないから、自分1人が当選さえすればいいという甘えた考えに支配される。こんな調子だから維新に負けるのだ。 Q 次の統一地方選で新会派は新人候補を擁立する?  自民党大阪府連の場合、どの選挙区でも候補者を擁立する権限を持つのはその地区の支部長だ。例えば私なら、福島区支部では公認の決定権は支部長である私にある。本来、自民党大阪市議団の各市議は自分の選挙区では支部長なのだから複数の自民党候補者を立てる権限がある。だが、立てない。それは自分が落選することを恐れるからだ。だから党勢が拡大しないし維新に負け続ける。そんな"負け癖"のついた自民党の目を覚まさせる意味でも、次の統一地方選で私たちの会派は現在の5人以外に複数の候補者を出したいと思っている。 Q  新しい会派はどのような政治を目指す?  理想は、声にもならない小さすぎる市民の声を確実に聞いてグループの中で共有し、未来の大阪にとってベストな選択をする政治集団にしたい。  外から見ると私には政治的ポリシーがないように見えるかもしれないが、私は、いわばバランサー(筆者注・釣り合い装置)の役割を果たす政治家だと思っている。自民党の中でも全体の行動や考えが右に傾けば左に寄り、左に傾けば右に寄って全体のバランスを取ろうとする。自民党大阪市議団を離れたのも大阪市全体のバランスを考えてのことだ。私が大切にしていることは社会や人、そして政治に対する真心だ。これからも真心のある政治を目指したい。  以上、インタビューは終わり。 【解説】  自民党という政党の本質は巨大な派閥の集合体である。個々の派閥の考え方は右から左、そして中道と様々で、考え方の異なる派閥が1つにまとまっているのが自民党である。これが、同党が長年に渡って政権を握り続けてきた強さの秘訣であり、同時に党としての本質でもある。ここが宗教やイデオロギーが求心力になっている公明党や共産党と異なる点だ。  では、考え方が極端に異なる派閥が均衡を保ってきた理由は何か。端的に言えば党内に強力な求心力が存在するからである。この求心力とは具体的には「利」だろうというのが私の考えだ。ただ「利」はカネや利権だけを指すのではない。国家権力を掌握して官僚を意のままに動かすことも「利」の一種である。同じ派閥の集合体であった旧民主党が短期政権に終わり、最後は空中分解したのは、この求心力の基盤が脆弱だったからだと思っている。  自民党的派閥の集合体の特徴として、某派閥選出の首相が極端な方向へと暴走すれば、これまでなら別の派閥がブレーキをかけて全体の均衡を保とうとする力が働いてきたことが挙げられる。これを党内の権力闘争と見るマスコミもあるが、本質的には派閥が存在することによるバランス機能の発動だろう。  自民党は従来、個々の派閥が全体のバランスを取ろうとし、実際に取ってきた。ところが近年、特に安倍晋三政権になってからというもの、自民党は細田派(安倍前首相の派閥)が強大な権力とカネを持ちすぎ他の派閥を力でねじ伏せてきた。これは旧来型の自民党と比較すれば異様な姿といえる。  なお、追記すると自民党大阪市議団のある幹部は、太田幹事長らの離団に困惑している様子はなかった。離れるべくして離れたという感想だ。自民党の本質は派閥の集合体。今回、市議団の外に新派閥ができたようなもので、太田幹事長が離党しない限り市議団と新会派を合わて1つの自民党と見たほうがいい。  また太田幹事長が新会派結成の会見で口にした「維新との協調」も言葉通りに受け取らないほうがよさそうだ。自民党大阪市議団と同様、新会派にも維新に対して強い不信感がある。「協調」はあくまでも可能性の話であり、それは他会も同じ。松井市長が提言した総合区議論に新会派が全面的に同調することは、まずないだろう。  さて、インタビューした太田幹事長も国政自民党と自民党大阪市議団はバランス感覚を失っていることを指摘した。従来の自民党ではないとまで言い切った。そして、そのバランスを取るために自分がバランサー的存在になると言う。その理想は実現できるのか、それとも少数派閥の悲哀を味わうのか。今後の動きに注目したい。 //////////////////////////////////////////////////////////////// 本ウェブマガジンに対するご意見、ご感想は、このメールアドレス宛に返信をお願いいたします。 //////////////////////////////////////////////////////////////// 配信記事は、マイページから閲覧、再送することができます。ご活用ください。 マイページ:https://foomii.com/mypage/ //////////////////////////////////////////////////////////////// ■ ウェブマガジンの購読や課金に関するお問い合わせはこちら   info@foomii.com ■ 配信停止はこちらから:https://foomii.com/mypage/ ////////////////////////////////////////////////////////////////

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