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やっぱり地理が好き ~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

宮路秀作(地理講師&コラムニスト)

宮路秀作

やっぱり地理が好き #160:ニューカレドニアの「知られざる物語」とアイデンティティ

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やっぱり地理が好き 

~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

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第160号(2024年5月31日発行)、今回のラインアップです。

①世界各国の地理情報

~ニューカレドニアの「知られざる物語」とアイデンティティ~

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こんにちは。

地理講師&コラムニストの宮路秀作です。

日頃、周りの人たちからは「みやじまん」と呼ばれています。

今回で160回目のメルマガ配信となります。


アイデンティティ(帰属意識)とは、私たちが何者であり、どこから来たのかを示すものであり、自分自身を定義する重要な要素です。この概念は、個人の自己認識を超えて、集団としての自己定義、さらには民族としての誇りにまで深く結びついています。特に、歴史的に抑圧されてきた民族や文化にとって、アイデンティティはその存在意義を証明するための不可欠な柱です。


アイデンティティが形作られるプロセスは、さまざまな要素が絡み合っています。歴史、文化、言語、宗教、そして日々の生活習慣。これらすべてが融合し、私たちの存在を支えています。これこそが民族なのです。


例えば、アイルランドの人々にとって、ゲール語やケルト文化は単なる言葉や伝統以上の意味を持ちます。それは彼らのアイデンティティそのものであり、イギリスの支配からの解放を求める闘いの中で培われた誇りの象徴といえます。


アイデンティティを守るための闘いは、常に外部からの圧力に対する抵抗の歴史でもあります。民族の誇りをかけて戦うのですから。アイルランドだけでなく、世界中の多くの民族が、自らの文化や言語を守るために戦ってきました。たとえば、ネイティブ・アメリカンの部族は、アメリカ合衆国の拡張政策によって土地を奪われ、文化や生活様式が危機に晒されました。それでも彼らは、自らのアイデンティティを守り抜くために教育や芸術を通じて伝統を継承し続けています。


今日のグローバル化の進展に伴い、多くの文化が交流し、融合しています。これは一方で新たな可能性をもたらす一方で、伝統的なアイデンティティが希薄化するリスクも伴います。多くの日本人がこれに気づいていません。アイデンティティの維持は、単なる懐古主義ではなく、未来を見据えた持続可能な社会を築くための重要な要素です。日本という国は、我々現代人だけのものではなく、先人たちのものでもあり、そして未来の日本人のためのものでもあります。民族の誇りとは、単に過去を称えることではなく、その歴史と文化を現在に活かし、未来に伝えていくことです。


それでは、今週も知識をアップデートして参りましょう。

よろしくお願いします!


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①世界各国の地理情報

~ニューカレドニアの「知られざる物語」とアイデンティティ~


メルマガ第158号「ソロモン諸島にて政変が起こる!②」にて、「気が気ではないニュージーランド」という話を解説しました。

2022年3月にソロモン諸島と中国間で安全保障協定が締結されると判明したさい、ニュージーランドがフランスに対して「遺憾砲を飛ばせ!」と働きかけていたという話でした。


▼#158:ソロモン諸島にて政変が起こる!②

https://foomii.com/00223/20240515060000124108


これは何故かといえば、ソロモン諸島の南の海上に浮かぶニューカレドニア島がフランスの海外領土だからです。そのため、ソロモン諸島が中国の影響力が大きくなれば「他人事ではなくなるよ? だから今のうちに遺憾砲を飛ばしておいた方が良いんじゃないの?」という、ニュージーランドが半ギレ状態となっているわけです。


 

▲メラネシアを構成する国と地域


しかしメルマガ第158号にて、フランスは遺憾砲を飛ばす余裕がなかったということをお話しました。背景として、ニューカレドニア、そして仏領ポリネシアでにわかに高まりつつある独立運動の兆し、そしてこれを中国が利用して「債務の罠」を仕掛けてくるのではないかという懸念がフランスにあるわけです。そんなニューカレドニアで5月15日、非常事態宣言が出されました。宣言自体は27日に終了しましたが、およそ2週間、ニューカレドニアは混沌とした日々を送ることとなりました。


高等学校で地理を学んだ方ならば「ニッケル」、旅行大好きな方なら「物価は高いけどとにかく綺麗な海と青い空」、映画が好きな方なら「天国に一番近い島」、ニューカレドニアを称する言葉はいくらでもありますが、実はニューカレドニアの地勢だったり、社会だったり、そして歴史だったりをしっかりと学ぶ機会はあまりなかったのではないでしょうか。


今回と次回に渡って、その背景について解説していきます。


■ニューカレドニアにて暴動が発生

5月15日、フランス議会において、ニューカレドニア地方選挙に関する改革法案が可決しました。ニュージーランドの住民にしてみると、とてもじゃないが承服しかねる内容であり、それは、

… … …(記事全文5,792文字)
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