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蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

机上の空論 経産省「エネルギー基本計画」素案と東京電力「経営再建計画」

ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00200/2021073006000083016 //////////////////////////////////////////////////////////////// 蓮池透の正論/曲論 https://foomii.com/00200 //////////////////////////////////////////////////////////////// 〇「エネルギー基本計画」の素案は原子力維持で「46%削減目標」しばり  異常とも言える東京五輪の熱狂にかき消された感はあるが、7月21日、経済産業省は改定予定の「エネルギー基本計画」の素案を有識者会議で提示した。素案の2030年度の電源構成目標において、呆れたことに原子力の比率が現目標と変わらない20~22%とされている。一方で、再生可能エネルギーを主要電源化することとし、全電源の22~24%を36~38%と大幅に拡大する方針を示している。また、火力は56%から41%に縮小する方針を掲げた。  再生可能エネルギーの拡充は結構なことだと思う。しかし、本年4月のバイデン米大統領主催の気候変動サミットで、温室効果ガスの更なる削減目標を強要された菅義偉首相が2030年度の削減幅を従来の「13年度比26%減」から、小泉進次郎環境大臣が「おぼろげながら浮かんできた」という46%減に大幅に引き下げると表明したことがその、背景にある。  すなわち、「46%削減」ありきで電源構成が策定されている。本来であれば電源構成を決めてから温室効果ガス削減目標を決めることから、本末転倒そのものである。まず、46%削減に見合う再生可能エネルギーの比率を定め、原子力は現状維持、残りを火力として、国際的な公約に辻褄を合わせただけのことだ。実際に、元来経産省が示していた削減目標は39%であり、急いで7%分を再生可能エネルギーの積み増しで補ったという。これについて、経産省幹部が「達成は困難で努力目標」と語ったとの報道が物語る。  文字通りの机上の空論であるが、原子力20~22%に関しても、現実離れした数字であり、あくまで政府・経産省の期待値と言わざるを得ない。経産省の試算では、全国で27基の原発が再稼働すれば目標を達成できるという。もちろん、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機も含まれている。それも全ての原発の設備利用率は80%を前提としているというから、どうかしている。現実は目標を達成できる環境にないことは容易に分かることだ。どうやって27基の原発をすべて、それも非常に高い設備利用率で再稼働するというのか。もはや、原発の新・増設やリプレイスなどはできない。運転期間40年に迫っている原発も多い。なるほど、苦肉の策である運転期間80年への法改正を政府が目論む理由がよくわかる。  この期に及んで、原子力は低コストで安定供給が可能な「重要なベース・ロード電源」であり、安全性を確保した上で「必要な規模を持続的に活用する」と旧態依然であることは笑止千万である。明らかに実現不可能な温室効果ガス削減目標を掲げて、米国をはじめ国際社会のご機嫌を取るとともに国内での支持率アップを企み、目標達成のためと原子力に拘泥する菅政権の姿勢には怒りを禁じ得ない。 〇東京電力「経営再建計画」では原子力の収支影響額が減少  同じ7月21日、東京電力は新経営再建計画「第4次総合特別事業計画」を公表した。計画を改めるのは4年ぶりだが、柏崎刈羽原発について、2030年度までに3基を再稼働させると公表した。「仮置き」とはしているものの厚顔無恥にも程がある。最短で、22年10月に7号機、24年4月に6号機、28年に1~5号機のいずれか1基を再稼働させるという。10年間で4~7基を再稼働するとしていた前計画からは、やや弱気になっているものの、これほど地元の人たちの感情を逆撫でする計画はないだろう。相変わらずの傍若無人ぶりには開いた口が塞がらない。
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