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藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)

藤井聡

「政治記者」の記事を読み解く ~「岸田首相がなお執念を燃やす会期末解散」という一言が暗示する岸田文雄の恐るべき精神構造~

大阪の朝日放送の「正義のミカタ」は、今年の4月で10周年となりましたが、この番組に出させて頂いていると、毎週テーマにあわせていろんな「専門家」の先生方が出演されており、この番組を通して実にたくさんの方々にお目にかかることができました。

 

番組は9時半~11時の生放送なのですが、番組前の楽屋では皆さん一緒で、あれこれお話ししていると大変勉強になります。

 

ロシア専門家の中村逸郎さんや、経済学の高橋洋一さん、経済がご専門で韓国についていつもお話しされる朴一さん、中国がご専門の石平さん、政治解説の青山和弘さん、社会学の西田亮介さん、海洋研究者の山田吉彦さん等、この番組を通して初めてお目にかかった方、この番組を通して深くお付き合いさせて頂くようになった方等、実にたくさんの大変有り難いご縁を頂いています。

 

例えば最近では、次号の表現者クライテリオンの「自民党」についての特集号では、西田亮介さんに初めて原稿をご依頼させて頂きました。

 

そんなご縁を頂いたいろんな先生方のお一人が、「永田町の化石」と呼ばれる政治記者、泉宏さんです。

 

泉さんは、田中角栄の番記者をやっておられたころから長く政治記者をやってられて、歴代総理皆さんを取材されたご経験をお持ちの方で、政界の実情を日本で最もよく知る人物のお一人です。例えば現在の総理の岸田文雄さんとは岸田さんがお若い頃から、ご両親も交えた家族ぐるみのお付き合いをされているとのことで、普段我々がメディアでは絶対に触れることのできない大量の情報を持たれています。

 

もちろんいくら記者だからといって、知っている情報を全て記事に書いたりテレビで言ったりなどすることはできません。そんな事をしてしまえば、その日以降、誰も情報を提供しなくなってしまうからです。

 

政治記者において何よりも大切なのは、政治家や関係者との間の「信頼」であって、この信頼があるからこそ、誰も知り得ない大量の情報を有能な記者の皆さんは集められるわけです。そして、その信頼の源は、言うべき事は言う一方で、言ってはならないこと言わないという振る舞いにあるわけです。

 

…ですが、政治家が記者に書かせたいことだけを書いているようでは、政治家の信頼は得られても、今度は国民からの信頼を失う事になります。というより、記者としての意味がありません。記者、というかマスメディアの使命は腐敗の抑止にあるわけで、政治家に対する監視と批判はメディアの責務です。

 

このあたりのバランスが政治記者において最も重要なポイントになっているわけです。

 

ちなみにこの「バランス」の話しは、表現者クライテリオンの最新号『不信の構造、腐敗の正体』の松林薫さんの記事『過剰な「透明性」がメディアを解体する―権力との「癒着」は腐敗なのか』にて詳しく解説されていますので、是非、ご一読になってみてください。

https://the-criterion.jp/backnumber/114/

 

さて、そんな「バランス」をとるにあたって何よりも大切なのは、「批判の仕方」です。罵詈雑言をあびせかけるような批判はそれは誹謗であり中傷となりますので、どれだけ政治家が酷い事をしていても、記者の方は慎まねばなりません(このあたりが、言論人と記者の最大の違い、ですねw)。

 

しかし、そういう誹謗中傷を避けながらでも、あくまでも事実を積み重ねながら、当該の政策が如何に酷い物なのか、当該の政治家が如何に信頼できぬ人物なのかを「浮かび上がらせる」ことが必要なのです。

 

いわば、馬鹿な政治家ならば、一見批判されているように見せかけないようにしながら、読む人が読めば、馬鹿な政治家が如何に馬鹿なのかがくっきりと分かるようにしていくことが必要なわけです。

 

 

というような事が、泉さんと楽屋であれこれお話しさせて頂いていることをとおして、手触り感のある形で実感的に深く理解することができたりしたわけです。

 

ですから当方は泉さんが「執筆」されている記事を読むのを当方は「ルーチン」にしていますw

 

というのも、以上のような背景を踏まえながら泉さんの記事を読むと、泉さんの記事には、我々の知り得ない大量の暗黙の情報が存在することの暗示がたくさん埋め込まれていることが見えてくるからです。

 

…ということで、例えば、泉さんの最新の記事はコチラ。

『裏金事件再発防止の法改正で「与党内対立」の混乱:自民独自案にも批判噴出、会期内成立に暗雲』

https://toyokeizai.net/articles/-/755649

(ちなみに泉さんは東洋経済で連載をお持ちで、上記記事は書き連載の最新号です:

https://toyokeizai.net/list/author/%E6%B3%89+%E5%AE%8F

 

この記事を読むと、例えば、こんな表現がでてきます。

「岸田首相がなお執念を燃やす会期末解散」

 

これは…

… … …(記事全文3,327文字)
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