… … …(記事全文8,263文字)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
山田順の「週刊:未来地図」
No.745 2024/10/15
各党すべて「バラマキ・ポピュリズム」
衆議院選挙に絶望するしかないこれだけの理由
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
10月27日の衆議院選挙は、今後の日本経済、私たち日本人の暮らしに決定的な影響を与えるはずだが、出揃った各党の公約と、今日までの経過を見ると、絶望というほかない。
石破新総理・自民はブレにブレたうえ、新しい経済政策を打ち出せていない。野田・立民は相変わらず「政権交代」を叫ぶだけで、こちらも政策は具体性に欠く。結局、与野党とも大衆受けのポピュリズムに走り、国民救済のためにバラマキをすると言っているだけだ。
(写真:自民党HPより、記者会見でフリップを掲げる石破総理)
[目次] ─────────────────────
■「政治とカネ」が選挙の争点でいいのか?
■誰もが驚いた総理になってからの「変節」
■得意とする「安全保障」政策でも迷走を!
■「ルールを守る」「暮らしを守る」が公約か?
■女性が2人のみ、平均年齢63.6歳の老害内閣
■立憲民主も自民と変わらない7本の柱
■最低賃金の引き上げで高齢者は路頭に迷う
■日本維新の会の財源なきバラマキ政策
■もし高市早苗が総理になっていたら経済破綻
■国民民主が打ち出した「尊厳死の法制化」
■死にたくても死ねない「寝たきり老人」地獄
■自公の与党が過半数233を割り込むかどうか?
─────────────────────────
■「政治とカネ」が選挙の争点でいいのか?
今回の選挙のテーマ、争点は、「政治とカネ」ということで、与野党もメディアも激しく論戦している。しかし、裏金をなくし、統一教会の影響力を削いでも、日本と日本経済がよくなるかというと、そうとは言えない。
もちろん、政治をクリーンにすれば、日本の縁故資本主義が改革されるので、経済はある程度は活性化される。しかし、どのような政策を行うかのほうが、はるかに、経済、ひいては国民生活に与える影響は大きい。
円安、物価高、賃金安とスタグフレーションに陥っている日本経済をどうやって立て直していくのか? つまり、窮地に陥っている国民生活をどう安定させていくのか? そうして、少子高齢化で人口減が進むこの国の将来をどうしていくのか?
さらに、外部環境が変化するなかで、安全保障をどうするのか? 急増する温暖化による自然災害に対してどう対処していくのか?
これらに対する政策が、争点になるべきである。
しかし、各党とも、もっともアピールしているのは、「政治とカネ」の問題だ。自民党は存続を決めていた政策活動費の廃止の可能性を言い出し、野党側は、政治資金規正法の再改正や、政策活動費の廃止、政治家本人の罰則強化などを訴えている。
■誰もが驚いた総理になってからの「変節」
それにしても、総裁選と総理になってからの主張で、これだけ言うことが変わる政治家は見たことがない。これでは、有権者は信用しない。
結局、自民党は看板を国民受けがいい石破茂に付け替えただけで、実際はなにもしない。政策は、安倍政権以来の政策を引き継ぐだけだと思うしかない。
石破総理による「変節」の第一弾は、衆議院解散の即時実行だった。さらに、「選択的夫婦別姓制度」の導入を、「さらなる検討をする必要がある」として封じ込めてしまった。
そして、経済・金融政策に関しては、就任直後に日銀の植田総裁と会談後、「個人的には現在、追加利上げするような環境にあるとは考えていない」と発言し、株価が大幅下落する「石破ショック」を招いた。かねてから石破はアベノミクスに否定的だったのに、見事な「変節」だった。
アベノミクスは実体経済をよくはしなかった。量的緩和により、見せかけの経済数値(株価など)をよくしただけだ。しかも副作用として、巨額の政府債務と止めどのない円安を招いた。したがって、これをなんとかソフトランディングさせないと、日本経済はさらに落ち込む。
ところが、石破は10月8日の参院代表質問で、経済運営は「岸田内閣の取り組みを着実に引き継ぎ、発展、加速させていく」と述べたのだ。
■得意とする「安全保障」政策でも迷走を!
石破総理の得意分野は「安全保障」である。そうご本人も自負し、これまでさまざまな提言をしてきた。その集大成と言えるのが、「アジア版NATO」構想であり、それに伴う日米地位協定の改定だろう。
しかし、これについては、総理就任以来、一切言及しなくなった。
すでに報道されているように、石破は総理就任以前にアメリカの有力シンクタンクのハドソン研究所に『日本の外交政策の将来』(Shigeru Ishiba on Japan’s New Security Era: The Future of Japan’s Foreign Policy)という論文を寄稿している。この論文は、総理就任直後にウェブで公開されたが、大きな問題をはらんでいる。
石破はこの論文で、中国や北朝鮮などの脅威に対抗するため「アジア版NATO」を創設したうえで、この枠内でアメリカの核兵器を共同運用する「核共有」や「核の持ち込みも具体的に検討しなければならない」と主張しているのだ。さらに、石破は「米英同盟並みに日米同盟を引き上げることが私の使命だ」とも主張している。
こうした主張は、日本はアメリカ一国に安全保障を丸投げできない。つまり、アメリカは信用できないと言っているのと同じだから、1人の政治家としてなら許されるとしても、総理になった以上、あり得ない。外交センスがなさすぎる。論文公開を止めるべきだったのではないか。
石破はおそらく自分が総理になるとは思っていなかった。そうとしか思えない。だから、なって変節するほかなかったのだ。