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ビジネス知識源プレミアム(660円/月):Vol.1509号
<Vol.1509:増刊:食糧とエネルギーの安全保障がなかった日本>
2025年2月8日:日本の政治の無作為の一例ホームページ https://www.cool-knowledge.com
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著者へのメール yoshida@cool-knowledge.com
著者:Systems Research Ltd. Consultant吉田繁治
トランプになって、日本の政治と官庁の無為無策が目立ちます。当方が前から感じていたことは、日本の食糧とエネルギーの安全保障のなさでした。この無策は、政治と官僚の合作です。農業の従事する人口は、長期に減っているのはご存知でしょうが、最近10年(2013-2023)でも193万人から137万人へと29%減っています。
10年で約3割減は、今後の高齢化では加速します。楽観的に見ても2043年には67万人壊滅的になっていくでしょう。0歳の赤ん坊が20歳になるころです。農業の生産性をAIの利用で高くして設備農業にし、農家の所得を2000万円にすれば、農業人口は増えるでしょう。日本では畑の細切れの狭さが問題です。
<Vol.1509:増刊:食糧とエネルギーの安全保障がなかった日本>
2025年2月8日:有料版・無料版共通号
【目次】
■1.スイス:食品価格の高さを許容する国民
■2.エネルギーと食糧の安全保障は、普通の国では政府の義務
■3.2020年からの44%円安
■4.2011年から日本の貿易黒字はなくなった:今後も黒字にはならない
■5.日本人の名目世帯所得は、米国の1/3に下がった
■6.対外純負債23兆ドルの米国:対外純資産471兆円(3兆ドル)の日本
■7.日米は、アリとキリギリスの関係
■8.銀行預金の多さと消費の貧困の日本人:逆が米国人
■9.高い金利と通貨の信用は、逆比例する(これが通貨価値の本質)
■10.消費税撤廃が生む、実質消費増加からの乗数効果
■11.円安・円高と輸入のコスト
【後記:目のこと】
■1.スイス:食品価格の高さを許容する国民
世界1食糧の価格が高い国はスイスです。スイスの商品流通はCOOPのような共同組合です。最大手がミグロ。組合員は200万人(スイスの総人口は900万人:九州・沖縄の1414万人の64%)。
グループには食品や日用品を製造する企業も多く、ミグロの商品に占める国産プライベートブランド(PB)の比率は90%という。世界の流通業でもっと早くからPB展開に成功したとして知られています。ミグロの本部を訪問したのです。物流倉庫に引き込んだ鉄道があったのを鮮明に覚えています。
加盟店のスーパーで食品を買うと1回が1万円くらいと高い。日本のスーパーでの、1回の買い物額の平均は、3000円くらいですから約3倍です。
当方は質問しました。「牛乳の値札を見ると日本のスーパーの3倍か4倍くらい高い。スイス国民はこれに満足しているのか?」 思いもよらない答えがかえってきました。
「スイスの国民(人種は独・伊・仏の混合)には牛乳、チーズ、肉を買うとき、高くてもスイス産を買う価値観があります。スイスの畜産業を振興することに国民が合意しています。」
なるほど原因は、国内の農業・畜産業を保護する政治ではなく、国民が食品は国産であるべきだと考えていたのです。これが軍事的にも「永世中立国」であることの食への展開、「消費=国産」です。戦争のときはエネルギー・食糧が国内で調達できないと、戦争もできません。
食は命にかかわるので輸入ができなくなったときの備えを、「高い国産を買う運動」として行ってきたのが、直接民主制のスイスを愛する国民です。
なおスイスの備蓄ができる穀物等が多い食糧輸入は44%、食糧全般を輸入する日本は62%です。英国の輸入は28%、ドイツ8%です。輸出の超過国はカナダの国内消費の158%、豪州105%、フランス129%、米国127%です。
■2.エネルギーと食糧の安全保障は、普通の国では政府の義務
日本を除く世界の政治は、国民に対する役割として輸入食料と輸入のエネルギーに可能な限り依存しない国を作ることを行っています。食糧とエネルギーと電力の存在は、命の安全保障だからです。日本はどうか。
日本人のカロリーの国産自給率は38%、輸入が62%です。1965年(昭和40年:この年に生まれた人は現在60歳)には自給率は73%でした。2019年までの54年間で毎年0.44ポイント(%)減ってきました。
国産の食糧で生命の維持ができる人口は1億2300万人×38%=4670万人でしょう。三菱総研は以下のように書いています。
<穀物系について輸入先をみると、小麦は米国・カナダ・豪州の3カ国でほぼ100%、大豆は米国とカナダで85%以上(残りのうち10%以上がブラジル)、トウモロコシは全体の3分の2が米国、残り3分の1がほぼブラジルからの輸入である。
大豆を含む日本の穀物の輸入先は、米国・カナダ・豪州・ブラジルの友好国4カ国からの輸入でほぼ100%である。
肉類については、牛肉は米国と豪州でほぼ全て、豚肉は、米国とカナダで50%を超える。鶏肉については、ブラジルとタイが大半を占めている。
食料全般でみると、金額的には中国からの輸入は米国に次ぐ2位になるが、冷凍野菜の50万トン弱、加工鶏肉の20万トン弱が農産物のトップ2であり、比較的海外依存度が低い品目である。(引用終わり)>
日本国民は、i)世界は平和である、ii)食糧とエネルギーはいつでも、いくらでも輸入できるという前提で成り立っている輸入依存が世界1の国家です。食糧とエネルギーは兵器と同じ戦略物資です。
■3.2020年からの44%円安
パンデミックとの戦争だったコロナとロシア・ウクラナ戦争からの44%円安(2020年1ドル105円→2025年2月7日151円)から、輸入物価が44%も上がり、日本の物価上昇になっています。
政府は円安がインフレの原因とは言わない。日銀がすこしだけ言っています(植田日銀の『異次元緩和の検証』24年12月)。
海外工場をもつ大企業が多い経団連はいつも「円高阻止、円安歓迎」です。国内のGDP(国内総生産)には入らない海外生産が、業界団体も構造的に官僚の天下り先である大手製造業の50%になっているからです。メディア、放送局、IT産業、学校、製薬、銀行、保険、流通、建設・土木、つまり全部産業の大手はキャリアとノンキャリアの天下り先です。これが日本の上部構造です。課長以上の高級官僚では1年に1400人、10年で1万4000人。虎ノ門は、独立行政法人、財団法人の巣窟です。
https://www.koeki-info.go.jp/content/2008_1_02.PDF
【輸入による国民の所得の海外流出】
日本の輸入は、2023年で110兆円です。輸入はドル建ての価格です。輸入数量を同じとして、2019年の輸入額78兆円に対して、「110兆円÷78兆円=1.41倍」に上がっています。2020年からの円安だった44%に見合うものです。日本人は2020年からの44%の円安によって、輸入の相手国(米国、オーストラリア、カナダ、ブラジル)に対して32兆円/年も多く払っています。
輸入物価は国内の店舗の販売価格に転嫁されます。円安で輸入物価が上がると、その分、店頭価格は上がります。一時的には企業負担もありますが、物価が上がっても、日本のように物価上昇分の所得が伸びず手取りの実質賃金(商品購買力)がマイナスになると売上が減るので、いつまでも負担はできない。(日本人の実質賃金:1990-2023:3ページ:連合)
https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/roudou/shuntou/2024/wage_report/wage_report_summary.pdf?40
国民所得の名目額は400兆円です。世帯所得の32兆円(8%)は輸入物価の上昇として、日本人の所得が海外に流出しています。これが、国内に住む1億2300万人の国民にとっての円安です。2019年に対して、あなたの所得8%が輸入物価の上昇分として減ったことと同じでしょう。(GDP、国民所得、雇用者報酬:1955-2023)
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je23/h11_data01.html
■4.2011年から日本の貿易黒字はなくなった:今後も黒字にはならない
サプライチェーンの分断があった東日本大震災(原発事故をともなった)の2011年3月から貿易の黒字がなくなって、構造的貿易赤字になった日本(2024年は5.3兆円の赤字)は「円安で衰退する国」になっています。
貿易赤字は、ウクライナ戦争後の円安の2022年が20兆円、2023年が10兆円、2024年が5兆円でした。
(日経新聞オンライン:貿易収支)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA22ASE0S5A120C2000000/
日本経済では、2011年から、円安で輸入物価が上がりますが、輸出は輸入物価ほど増えず(海外生産の円換算所得は増える)、円安が国民の実質所得の減少、言い換えれば価格が上がる商品の購買力が低下する経済になっています。
逆に、110円台の円高になると貿易は均衡して、日本の所得が海外流出する貿易赤字はなくなります。「1990年代までの経済常識の転換」が必要ですが、「未だに円安がいい」という政治・日銀・官僚・経済学者・メディアに「30年も前の過去頭」に依存するひとたちが多い。
日本の輸入品目、はエネルギー、鉱物資源、食糧、機械類、コンピュータアプリの使用料です。円安で輸入価格30%や40%上がっても輸入数量が減らないものが多い。
このため1990年まではあった「円安で貿易が均衡するか黒字になること」は、なくなったのです。金融ビッグバン(外貨購入の自由化)の1995年から通貨の変動を嫌った大手製造業が海外に工場を増やして約50%の売上にまで増えたためでもあります。日本企業の海外の生産は、日本の国内総生産と国内所得(GDP)には入りません。
物価が上がり賃金が増えていない国民(約80%)にとっては、生活のためには、
・外貨準備のドル国債(1.3兆ドル:200兆円)を売って、
・円高に誘う国策が必要ですが、財務省にはその考えが皆無に見えます。
財務省、石破自民党、野田立憲民主党は、「財政均衡論であって、減税には財源論で反対」しています。
政党と政府は、共稼ぎが70%でも世帯年収が900万円以下である84%(4450万世帯:人口では1億200万人)と、年収の低い40歳代以下の世帯の生活を苦しくすることしかしていません。
ttps://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa23/dl/03.pdf
■5.日本人の名目世帯所得は、米国の1/3に下がった
5300万の世帯年収の中央値は、共稼ぎ70%で405万円、平均値は524万円、900万円未満が84%です。日本では高所得ですが、米国では低所得の900万円以上が16%です。
米国世帯の平均年収の中央値は、8万ドル(1240万円)です。日本の約3倍です。3倍の円高(1ドル52円)で均衡します。
実質的な商品数量の生産性では日米に3倍の差はない。せいぜい1.5倍です。1.5倍なら、1ドル100円で日米の賃金が均衡します。
日米の商品価格が均衡する消費者物価の購買力平価では、ドル円は109円(2024年)です。
https://www.iima.or.jp/docs/ppp/doll_yen.pdf
【外為市場では、米ドルは42%過剰評価、円は42%過小評価されいる】
長期国債の売買価格で決まる長期金利が4.5%のドルは、海外からのドル買いが大きく、外為市場では42%も過剰に高く評価されています(円は42%過小評価)。
1200兆円の国債があって、国債金利と銀行の預金金利を上げることのできない円の長期金利は1.28%(24年2月)です。
◎金利が世界1低い円は売られ、G5では金利が高いドルが買われています。これが、2020年からの円安・ドル高42%の原因です。
↓
円預金の銀行金利がほぼ0%では、物価が3%上がる経済では、毎年3%損をしますから、4.5%の金利がつくドルを買う。これが当然です。
1日に160兆円のドル・円の通貨ペアの売買がある外為市場で、円売り/ドル買いの増加のため、2020年には1ドル105円だったドル円のレートは150円台に下がったのです。為替での円安は、円売り/ドル買いの結果です。
https://www.77bank.co.jp/kawase/usd_chart.html
■6.対外純負債23兆ドルの米国:対外純資産471兆円(3兆ドル)の日本
ドル円の13年の推移(2011年78円→2024年160円:2倍の円安/ドル高)は、ゼロ金利の異次元緩和(円の増刷500兆円)が始まった2013年から、円売り/ドル買いが大きく超過してきたことを示します。
「円売りとドル買いの純額=約470兆円(=対外純資産=米国への超過貸し付け)」です。
◎日本は、貿易赤字(=海外への所得流出)と円売り(国内の円所得の海外流出がドル債券買いです)により、物価が上がるかなかで国内経済を低下させました。(注)普通は、需要が増えて物価が上がる経済は米国のように好調です(通貨はドル高)。日本は、円安が主因の、エネルギー・資源・IT・食糧の輸入物価の上昇なので経済は好調にならない。
一方で、GDPの70%が世帯の消費経済であって、海外(日本・中国・ドイツがドル買いの3大巨頭)からの借金で成り立っている対外貿易赤字の米国経済を好況にしてきたのです(米国の対外純負債は23兆ドル:3665兆円)。
■7.日米は、アリとキリギリスの関係
米国への貸付金を増やしたため、国内のお金がなくなって国民はカユを啜った。海外からの借入金(=純借入金23兆ドル:3665兆円=現金の流入)で、隣の家では2倍は大きな家とプールもある庭で、連日、バーベキュー・パーティという例えが日米の経済です。働くアリと、キリギリスの童話です。
<アリとキリギリスでは、夏の間アリが穀物を集めるのを見てキリギリスが驚くが、冬になって食物に困ったキリギリスは、アリの許を訪れた。それに対してアリは、夏のうちに苦労して貯めておけば困らなかっただろうという>
・・・アリの食糧に目をつけた米国(キリギリス)はアリ(日本人)が貯めたマネーを借りてきた。ドル買いをして、米国に貸した日本人の金庫には、貸付金の証書(ドル国債、ドル債券、ドル株)があるが、円として国内で使えるマネーは減った。(日本の対外純資産471兆円)
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/iip/data/2023_g.htm
【預金が少なく、借入金が多い米国人】
所得では、日本人の3倍の、1.5億世帯の米国の世帯の銀行預金は、実は、平均で2万540ドル(318万円)しかない。一方で世帯の債務は、1世帯あたり1800万円、日本の世帯の3倍です。
クレジットカードでも所得が低い階級は、限度額一杯使います。住宅ローンが大きく、車、家具もローンで買う。大学生の1人平均で3万5000ドル(540万)学資ローンも借りる。株買いとバーベキューのパーティは、資金の元をたどると、日本からの純借金(470兆円)で行っているのです。
【米国とは逆に、預金が多く借入金が少ない日本人】
一方で、ローンの負債とクレジットカードの使用が少ない日本の世帯(平均負債は米国の1/3の600万円)の、平均預金額は2000万円です。
日本人の世帯預金2000万円(世帯が使っていない銀行預金は1100兆円)が「日本人の生活の豊かさ」になっていないという、「マネー循環(通貨の流れ)=ドル買いの470兆円の純超過=1世帯換算で880万円のドル債」が問題です。
アリ役である日本国民の技術と産業が米国(キリギリス)に対して劣っているのではない。日本人が貯めたマネー(アマゾンのサイト) https://x.gd/WFXQAを、国内では投資と消費に使わず、ドル買いの超過として米国に貸し付けてきた(その金額が、471兆円の対外純資産=80%は米国への純貸し付け=ドル債券の買い)。
◎債券(国債、社債、不動産証券、株式、通貨、デリバティブ)を買うことは、その債券の発行元への貸付金です。通貨も債券です。預金も、実は、その額面を現金でいつでも引き出しできることを、銀行が顧客に約束した債券(Bond、または金庫が語源のSecurity)です。
証券の原義:
<「security」はラテン語由来で接頭語の「se(セ):~離れて」と「cura(クーラ):心配」を合わせたもので「心配から離れた」が語源です。接頭語「se(セ)」を語源にもつ英単語は他にも「分離する(セパレート):separate」、「選択する(セレクト):select」、「秘書(セクレタリー):secretary」などがあります。心配を意味する「cura」は、後に「治療する、癒す」を意味する「cure(キュア)」に変化していきました。「cure(キュア)」を語源にもつ単語は、他にも「マニキュア:manicure(手のお手入れが語源)」があります>
■8.銀行預金の多さと消費の貧困の日本人:逆が米国人
強盗も盗むことが難しい金庫のある銀行に預けていれば、マネーや貴金属の安全が担保されるという意味から「信用のある銀行」が生まれました(13世紀)。三菱UFJの貸金庫からの、女子担当による窃盗は銀行の信用にとって本質的なものです。
手取り所得800万円から預金を300万円すれば、500万円(家族で1か月42万円:1日1万4000円:14時間起きているとして3人で1時間1000円)の消費生活しかできません。
豊かさは、1時間あたりの消費額でしょう。将来の豊かさは預金の増加ですが、それは現在の豊かさではない。日本人は、米国人の3倍の預金(世帯で2000万円平均)をもっていますが、その分、生活を節約してきたのです。
ある銀行マンを知っています。「今日1万円使ったから明日は2万円預金すること」がそのひとのルールでした。2万円の預金はできないから、5000円しか使わない。およそこれが、昭和の日本人だったのです。
銀行は、預かった現金を、預金より高い金利の貸付金、証券の買い、ドル債券として運用しています。運用で自己資本以上の損したことが広く知られると不安になった預金の引き出しが殺到し、一夜で破産します。
心理的なものでしかなく、とても脆(もろ)いものが「信用」です。優れた演技や歌の芸能人でも、芸能とは無関係な麻薬から信用を失墜します。「信用」は物的資産によるものではなく心理的なものですから、内部では日常だったフジテレビのような事件が発覚しても、なくなります。不動産で財を成した人は言っていました。「銀行預金は増えない。不動産は働かなくても上がる」。ある経営者は「振り返ると事業の利益より不動産の利益が何倍も大きかった」。1995年までのことでした。
日本人で責められるべきは、日銀がゼロ金利にし、円をGDP(500兆円)に対して100%と世界1増発したため、円より米国のGDPに対する通貨の増発率が少なく、金利は円より高いドルの価値を信用したことです。
経常収支が黒字の円であっても、GDPに対する供給が増えて金利が下がれば売りが増えて、円で金利の高いドル(赤字国の通貨)を買う為替市場での相対価値(円のレート)は下がります。
ドルは、世界中での国際取引にもっとも多く単独で60%使われている基軸通貨として特殊で排他的な価値があるからです。ユーロは国際通貨として20%ですが、流通範囲はユーロ加盟国間が主です。
◎ドルの価値を支えているのはFRBではなく、日英の中央銀行と民間の国際銀行です。通貨の移動は、最終的には、A国とB国の、中央銀行間での差額のドルの受け渡しとして、決済されています(国際的な資金決済システムという)。
なお暗号通貨(日本では仮想通貨という)の海外送金では、中央銀行間の資金決済システム(BISがもつSWIFT手順)は通らず、インターネット上のTCP/IP手順で「Pier(個)to Pier(個)」で決済されます。ここが暗号通貨のイノベーションのひとつです。
購買力平価の1/2への円安を招いた責任は、
1)日本人を豊かにさせない失政を重ねてきた財務省(消費税を導入して五公五民の日本経済を作った財務省)と、
2)ゼロ金利の円を信用という無から作った日銀にあります。
(注1)1/2の円安になると、世界市民という仮想的立場からは「ドルという国際基準通貨」での、2000万円の預金の価値は1000万円に下がります。日本人の1000万円の所得も国際基準のドルでは500万円です。通貨の価値を守ることが日銀の国民に対する使命だと日銀は、ホームページに書いています。ところが異次元緩和をした日銀は、円の価値をドルに対して1/2に下げたのです。黒田総裁の責任です。
(注2)五公五民:官僚の経済が50%:民間経済が50%。
所得800万円で、税と社会保険料を引いた手取りは約60%の480万円。その480万円を消費に使うと、消費税48万円が課税分。実質の商品購買力は458万円(1か月38万円)になる。
日本人は金利がゼロの円預金で、金利が4%のドル債を買った。その筆頭が日銀・財務省・政府、2番目が企業、3番目が所得階級の高い14%の国民です。
大企業は、円を売りドルを買って、海外に工場を作った(投資額307兆円=円売り307兆円=ドル買い307兆円)。このため、2011年に対しては1/2の円安になり、輸入物価は2倍に上がったのです。
(直接投資残高307兆円。外貨準備148兆円=現在は円安で200兆円)
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/iip/data/2023_g.htm
■9.高い金利と通貨の信用は、逆比例する(これが通貨価値の本質)
マネー(信用通貨)の本質論では、
・金利の高い通貨は、その国の期待物価上昇率が高く、
・金利が低く物価上昇が低い通貨より信用は劣ります。
信用の低い企業への貸付金の金利が高いことと同じです。
米国の国債の金利が4.5%付近と高いのは、対外純債務が23兆ドル(3565兆円:2024年)もある上に、
・貿易(赤字1兆ドル)と財政(赤字2兆ドル)がともに赤字であり、
・海外が毎年ドル債の増加買いをしてくれないと、対外純負債21兆ドルの米国の経済が回らないからです。
【その証拠】
仮に、ドルの長期金利が日本と同じ1.2%なら、世界のだれもドル国債は買いません。ドルの金利が1.2%に下がれば(下がりませんが)、ドル円は80円くらいに戻ります。
ただし円で買ったドル債は日本の金庫にあるもので、日本が所有権をもつ対米貸付金ですから、ドル国債や債券を売れば、奪還ができます。
日本のマネーが、ドルになって消えたわけではない。貸付証書である債券・証券は、もっているだけでは使えません。売って現金にしたあとに使える。
本人が知る暗号でしか開かない金庫に、証券(返済期限つきの借用証)を入れたまま、何らかの事故か急病で所有者が死んでしまったら、元も子もない。
日本の財務省と日銀は、これをやるつもりかとも思えるのです。
日本の財務省がもつドル国債と、日銀がもつ金(800トン)は、米国のFRBにカストデイ(保護預かり勘定)として預託されています。
財務省と日銀には売る権利はあります。しかし米国債と金の現物はない。FRBのB/S(バランスシート)の1A.メモランダムに書かれています。なぜか金の項目はない。
軍事と通貨覇権をもつ米国は変な国です。FRBはドルを下げない目的で、海外がもつドル国債を保護預かりにしています。日本は預金通帳を銀行(FRB)に預けたままにしていることと同じです。
(9の連銀の連結B/S)
https://www.federalreserve.gov/releases/h41/20250206/
(注)新著『失われた1100兆円を奪還でせよ!』では、
1)1995年に外貨の購入が自由化された金融ビッグバンのあとはブタ積みの外貨預金になっている財務省管理の外貨準備(1.3兆ドル:200兆円)を5年間売って、毎年の23兆円の財源にする。
2)10%の消費税(年23兆円)を恒久的にゼロにすれば、1988年からの消費税で死んでいた消費の増加から、乗数効果が生まれる。
3)1年に0.7%(80万人)も人口が減る高齢化ではあっても、日本経済は実質3%成長(国民の名目所得は4%成長)に戻ることを、数値の論理で示しました。(短文へのまとめ)。
■10.消費税撤廃が生む、実質消費増加からの乗数効果
乗数効果は、「消費税撤廃→物価の10%低下→実質賃金の10%増加→(1)期待企業売上の増加(23兆円)→(2)人的生産性の上昇(5%)→(3)賃金の上昇(4%)→(4)消費税のかかっている経費の10%減少からの企業純益増加(10%)→(5)設備投資の増加(10%)→(6)実質GDPの3%増加(18兆円)→(7)税収の所得弾性値1.1から2.0からの増加(10兆円付近)→(8)政府税収の増加(10兆円)→(3)への循環」になっていくことです。
消費の増加=企業売上の増加=利益の増加+賃金の上昇・・・になるので、3、4年目くらいから、所得税収の増加(最大で20兆円程度)になって、外貨準備の売りは、4年目くらいからは要らなくなります。
消費税10%(23兆円)は、4年目からは外貨準備を売らなくても恒久的にゼロにできるのです。消費税を撤廃すれば、GDPが増えて金利も上がって円高になりますから、エネルギーと食糧の輸入で海外に出ている円マネーも行き、原材料の多くが輸入である製造業のコストは下がります。(注)長期金利は、名目GDPの期待成長率で均衡します。
電気代、ガソリン代、金にすらも、10%の消費税がかかっています。製造業では大量の動力電気を使っています。製造業、物流業、交通費のエネルギーコストも10%下がる。とくに、これからの産業であるAIは、大量の電力を使います。
日本の電力費は、米国の約2倍です。電力費2倍のままでは、電力を大量に消費する生成型AI、半導体の製造でも米国、中国、台湾に負けます。
財務省・石破自民党・野田立憲民主党の増税路線のままなら、日本は、今後も永久に貿易赤字で、所得の増加がない物価高の国になって没落します。
増税路線の石破自公政権と、野田立憲民主党を潰す国民の意思が投票になれば、財務省が裏で抵抗しても、国民は失われた1100兆円を奪還できるのです。
(書籍はアマゾンのサイト) https://x.gd/WFXQA
財務省がもっとも嫌うのは、歳出庁(財務省)と歳入庁(国税庁+社会保庁)への分離です。財務省の権力の元である、議会の審議のない特別会計〔外貨準備(200兆円)、国債会計(164兆円)、社会保険会計(112兆円)など〕の意味がなくなるからです。
世界では当たり前である「財務省の歳出庁と歳入庁への分離」は、多数派をとった政党が決定できます。
トランプ政権の3年目までが、絶好のチャンスです。トランプは、アルゼンチンの新任のミレイ大統領が行った保守主義本流の、減税からの「小さな政府」は、トランプと同じ政策の主張なので受けれるからです。
日本が外貨準備としてもつ米国債の売りも、トランプは「米国の貿易赤字(1.2兆ドル:186兆円:2024年)を増やしているドル高の行き過ぎ」を言っていますから、受諾するでしょう。日本製鉄によるUSステールの買収を、出資としては受け入れると1日で決めたトランプのディーリングもこの筋です。
■11.円安・円高と輸入のコスト
円高になれば、輸入エネルギーと食糧のコスト(国内法人と世帯からの所得の流出)は減ります。輸入エルギーと食糧の価格が、同じ量を輸入しても円高分、減るからです。この金額は大きい。
日本の輸入は総額で110兆円です。30%の円高(108円)になれば、2024年に海外に払っている110円が、ドル建て金額では同じでも、円では77兆円に減って、日本の国民所得400兆円から出ている輸入代金は77兆円奪還ができるからです。
日本の国内法人と世帯は、30%の円高なら2年で金満国になります。
30%の円高と言っても、2020年の1ドル105円程度に過ぎません。
2020年のコロナパンデミック戦争の財政予算(100兆円)と、2022年の
資源・穀物の国際価格を上げたウクライナ戦争が異常な出来事だったのです。
日本にとっての円高は、日本のアキレス腱であるエネルギーと食糧の安全保障ですから、政府は円高策の米国債売りを推進するべきでしょう。政府・自民党、エコノミスト達は、日本人の生命線でもあるエネルギーと食糧の安全保障を理解していません。
農業従事者の平均年齢が67.8歳になった基幹的農業の生産の増加は難しい。米作では、10年で、約5年も平均年齢が上がるからです。
所得が低く労働はきついので、新規参入はニュースになるくらいマレです。輸入に依存しても、円高により輸入価格を30%は下げることが食の安全保障になる。輸入肥料も30%下り野菜や果物が下がります。農業と漁業では、意外に多くのエネルギーを使います(漁船の年燃料の石油と国内輸送費)。これも30%は下がる。
エネルギー・鉱物資源の輸入も同じです。円高で30%輸入コストが下がると、製品価格のなかの原材料とエネルギーコストも30%下がります。日本の機械・電気製品の製造業がコスト優位を回復して復活できるのです。
東京では2005年には4000万円だった70平米程度のマンションが築浅の中古でも6000万円、7000万円に高騰している建築費でも木材、コンクリート、資材の輸入コストが30%下がれば、価格は15%から20%安になり建設業も復活します。70%~80%が躯体・内外装・設備のコストだからです。
円高になると住宅も買いやすい価格になるでしょう。原材料の輸入が多い日本の住宅価格は円安と作業人件費(工賃)の高騰から上がっているのです。需要が好調だからではない。
貿易が構造的に赤字になった日本では、1980年代までの輸出主導の経済成長はない。逆に、5年前の30%の円高による輸入原価の低下が国内経済の成長になるのです。
財務省が管理している外貨準備のドル国債(200兆円)を、毎年23兆円売って消費税をゼロにし(世帯の手取り所得が実質で10%上昇)、30%の円高(108円)にして、食糧と商品の原価を30%下げると30年間、抑圧されていた日本経済は、1980年代の成長に回帰します。
トランプは、「米国の黄金時代の幕開けが来る」と就任式でスピーチしました。日本もあやかって、黄金の時代に回帰できる力を2040年まではもっています。
◎財務省の1988年からの消費税、日銀の、1997年からの円安のゼロ金利という誤った政策と円安によって、国内経済と日本人の所得の成長が抑圧されていたのです。
消費税は、消費をすると10%がかかる財務省が作った消費懲罰税です。物価に含まれるので、懲罰税の性格は隠蔽されています。米国金利が3%から5%なのに円がゼロ%だったことからの円安(円売り/ドル買いの超過)は、政府と日銀の失政です。
消費税をゼロにして、外貨準備を23兆円分売れば財源になるので、保険料では赤字の年金・医療費を減らすことはない。逆に増やしてもいい。
消費が増えることによる法人の所得税増加分が1年後から、入ってくるからです。政府の財政予算は単年度会計という欠陥をもっています。たとえば3年や4年の移動累計の予算を、財務省の主計局が毎年作れば消費増加による所得税の増収も入ってきます(彼らには、その能力があります)。
財政の単年度主義も、議会がやめさせるべきです。単年度予算で見ていたから、消費懲罰税がマイナスの乗数効果をもたらす結果がみえなかったのです。
【後記】
有料版の読者対象の、講演レジュメのご希望には多数(300通くらいか)の応募をいただき、その都度、1通ずつ送りました。
昨日夕刻から、利き目の左目が赤くなったので、今日馴染みの眼科にいくと、「たぶん疲れ目からの自己免疫症です。細菌性ではない。目を使う仕事を休んで、薬を1日4回差してください。」 仕事は休むことができません。痛くもかゆくもない。視力は1.2でした。時々、遠くを見ることにします。その医師が、このメールマガジンは読んでいないことを願いながら。
長時間、固定焦点になるコンピュータのディスプレーは、目にいいとは言えないようです。【プレミアム読者アンケート&感想の、項目のメド】
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