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<Vol.1503:新年増刊:米国のバブル経済が決算期を迎える2025年>
2025年1月18日:有料版・無料版共通
2025年1月18日(土):日本の1990年に似ている米国の資産バブル
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著者:Systems Research Ltd. Consultant吉田繁治
米国の資産バブルが、とんでもないところまで来ています。世界でも資産最上位1%の世帯は株の資産の40%もち、下位50%の世帯は2%しかもたない(トマ・ピケティ:2021年)。
世帯当たりの株資産の格差は、800:1です。こうした経済は、長期にはサステナブルではない。マイクロソフト1社で電力多消費のAIを動かすためスリーマイルの原発を買うくらいです。その気があれば、LAの大火災の物的損害(1万棟の住宅:推計28兆円)の復興マネーはイーロン・マスク1人で出すことができます。実行すれば「国父」と崇められるでしょう。テスラのバブル株価の利用です。
バブルとは、「未来への過剰な期待の心理が生む株価と不動産価格」です。
負債を引いた純資産が40億円以上(1枚が1グラムの1万円札で400kg)は超富裕層に分類されますが、この階級に属する世界の40万人(世界人口の0.005%:20万人に1人)の合計純資産は、45兆ドル(7000兆円)、1人あたりで175億円です。
1位のテスラ株をもつイーロン・マスクは純資産が突出して大きく4440億ドル(69兆円)、2位はアマゾンのジェフ・ベゾス1140億ドル(18兆円)、マイクロソフトのビル・ゲーツが1040億ドル(14兆円)です。
ビル・ゲーツの14兆円の純資産と言っても、普通はイメージができません(自分でも分からないでしょう)。具体化すれば金では1000トンに相当します(4トントラック250台分)。1枚が1グラムの重さの1万円札では3000メートルも連なった4トントラック300台分の資産・・・途方もない。
個人が国家並みの資産をもつようになった「世界史上最大の資産バブル」が現在の経済です。経済的には、円やドルの通貨は、高騰した資産価格にたいして激しく価値を減らしました。現在、資産のハイパーインフレが生んだ「超バブル」以外ではないのですが、投資家のおよそ90%は2025年、26年もこの「バブル価格の継続」を、株価は上がるとして言っています。
ビリオネアー(10億単位)の、1000倍のトリオネアー(兆単位)です。
球根が住宅1軒分に上がった17世紀のオランダのチューリップバブル超えています。いまは球根ではなく、中心は、AI・半導体株と仮想通貨です。
(NYダウ:1980-2024で:44年間で44倍の価格:年率+9%)
https://ecodb.net/stock/dow.html
(日経平均:1980-202年:44年間で5.8倍:年率+4%)
https://ecodb.net/stock/nikkei.html
ビットコインの陰に隠れていますが、認証の時間が数秒と短いXRP(リップル)は、仮想通貨を肯定する24年11月のトランプ当選以降、1単位78円から503円へと6.5倍に上がって、時価総額は29兆円に達しています。金換算では総時価が2200トン相当ですから巨大です。2024年11月以降のバブル価格の頂点にあるものです。(注)アップル株の時価総額は中国がiPhoneを禁止したため28兆円、リップルと振り替わるように下がっています。面白い相互関係です。
バブル株のリスクが、一部に広がって株を売って、ドルとおなじ国際通貨になる可能性もあるXRPが買われたのかもしれません。短期売買の対象なので今後も上がるかどうかの判定はできませんが、ファンドでもポートフォリオの3%から5%に、暗号通貨を選ぶところが出ています。
(XRPについての解説)
https://diamond.jp/crypto/market/xrp/
<Vol.1503:新年増刊:米国のバブル経済が決算期を迎える2025年>
2025年1月18日:有料版・無料版共通
【目次】
■1.資産バブル発生の心理的な理論
■2.80年代後期の、日本の資産バブルの発生と崩壊のプロセス
■3.日本の資産バブル崩壊のプロセス
■4.米国の株価と不動産バブル
■5.円キャリー・トレードの残高が200兆円(IMF:24年7月時点)
■6.トランプ初年度の2025年
■6.2025年の、米連邦政府の資金繰り難
■7.後記:『失われた1100兆円を奪還せよ!』の関連部分から
■1.資産バブル発生の「心理の理論」
日経平均が史上最大に上がったのは、1980年から1989年の10年間でした。7100円の日経平均が、89年12月には3万8900円へと5.5倍に上がったのです。年率平均で21%の上昇。45年も前でした。これが戦後の世界で最初の、大きな資産バブルでした。1989年12月の日経平均のPER(株価÷次期期待純益)は60倍という4倍の過剰評価でした。
・株価のPER(株価時価総額÷次期予想純益)での合理的価格は15倍、
・住宅では、平均年収の6倍あたりです(日本では4200万円、米国では48万ドル(7400万円)くらい)。
バブルとは、経済合理的には成立しない株と不動産の価格です。
〔原理〕資産バブルは、例外なく、発生した「イージー・マネー(Easy Money)」が大挙して株の買いと、不動産の買いに向かうことから起こります。
イージー・マネーとは低金利で無限に思えるくらい過剰に供給されるマネーのことです。イージー・マネーが、利上げまたは市場の金利の上昇と、金融規制で減るとバブルは崩壊します。とくに2020年3月以降、コロナ対策として、世界中のマネーが極端なイージー・マネーになっています。(注)2008年のリーマン危機のあとの米ドル、2012年の異次元緩和の円もイージー・マネーでした。
【バブル崩壊の過程】
1990年の年初から、まず1万8000円に下がり(1993年:年率-24%)、つぎは8500円の底値でした(2002年:ピークの22%:年率-8%)。
2002年から11年後の2013年からは、i)異次元緩和、ii)ゼロ金利、iii)円安の3要素が重なって、11年間で4万円まで上がっています(年率+15%)。
【投資家の、社会的な集合知が行きすぎる時期がある】
株価は、投資家の集合的な気分(集合知)の変動を反映して、マネー・サプライの増加を主因にして動いています。株価が時折「生き物」だと言われる理由は、生き物である投資家の集合的な気分での判断と予想は、蛇行する龍のように上下に動くからです。(日経平均の44年:1980-2024)
https://ecodb.net/stock/nikkei.html
【投資家の気分】
1980年代の後期には、日本的経営(終身雇用)は世界1だという幻想の気分がありました。
エコノミスト誌のビル・エモット編集長は、日本のPERが60倍の株価と年収の10倍以上に上がった不動産バブルにたいして、『日はまた沈む』を1990年に書いています。しかしその前は、日本人の投資家の多くが(たぶん95%)が「日本経済世界1」の共同幻想を抱いていました。
イージー・マネーを貸していた銀行には「土地を買わない経営者はバカだ」という気分があったのです。土地を買わなかった知人の経営者が「あなたはバカだ」と銀行員に面と向かって言われたことを知っています。馬鹿馬鹿しいことも普通に「社会の気分」はこうしたものです。現在のNISAを煽る政府と主要な新聞記事の論の方向も、当時に似ています。
【日本のイージー・マネーの増加】
1980年代の資産バブルには、日本の銀行の金融システムが関係していました。預金が多い日本の都銀の、世界の銀行にたいする資産額は1位から5位を独占していました。日本では世界1、円マネーが豊富だったのです。
世界1の大きさだった銀行マネーのなかで、日銀はプラザ合意後の円高による輸出不況にたいして、米国のレーガン大統領に言われた「内需の拡大」をするためとして、金利を下げて金融を緩和し、銀行の貸し出しを奨励したのです(1985年~)。米国が、日本は輸出過剰で内需が少ないと非難していたからです。(注)トランプは、1981年から89年の大統領を務めたレーガンに似ている面があります。
日本の銀行融資の担保は土地と不動産でした。銀行は、担保のない事業計画では貸さなかった(大手上場企業以外では浮き貸しとして禁じていました)。当時は、1年齢の人口が200万人台ともっとも多く、戦後ベビーブームの時期に生まれた「団塊の世代」が30歳代であり、住宅取得ブームの時代であって、200万戸の住宅が建設されていました(持ち家+貸家)。
2021年は持ち家の建設は50万戸、貸家が35万戸、合計で85万戸の新築しかなく、住宅ブームの1980年代の40%です。世界共通に新築の需要は30歳代の人口に比例します。中国で1億戸(日本の空き家の11倍=日中の人口比1:11に比例)の売れ残り在庫になったのは、2015年からの生産年齢人口の減少を無視して住宅建設が行われたからです。米国で空き家が少ないのは、移民の累計3000万人(不法移民が1000万人)が押し寄せたからです。
現在、住宅需要が減って空き家が900万戸(全戸数の15%)に増えたなかで住宅の価格が上がっているのは、i)円安による輸入資材の高騰と、ii)作業員不足の現場人件費の上昇という建設の2つにコストプッシュ要因からであって、住宅の需要は1980年代の半分以下に減っています。原因は、最初に住宅を買う30歳代人口の減少です。
(持ち家の住宅着工推移グラフ)
https://www.murc.jp/library/economyresearch/periodicals/graph_month/watch_2403/
一方で、コストは2020年の1.15倍です(東京・大阪では1.4倍)。
日本の住宅価格が15%上がっても円安ですから、海外からは1/2の価格に見えます。
カナダの流通資本から買収を受けているセブンイレブンの株(7兆円)も、円安のため、海外からは1/2になっています。米国株が過剰評価のなかで、米国ファンドは、ドル建てで見れば1/2に安い日本企業のM&Aを、利益源として狙っています。日本の円安から、日本の企業も米国に5割引でのバーゲンセールになっています。ドル建ての日経平均を見ると、日本企業のバーゲンセールが分かります。
【日米の会社の企業価値】
2020年3月の日経平均は2万円でしたが、1ドルは102円でしたからドルでは196ドルでした。現在の日経平均3万8450円は、1ドルが155円ですから248ドルです。約4年で26%しか上がっていません。米国株のS&P500はおなじ時期に2300ドルから5937ドルまで2.6倍に株価が上がっています。
株価の時価総額は、会社価値とされます。日本の上場企業の3000社の平均の会社価値は、株式交換でM&Aすれば、2020年から2024年には、米国企業にたいして「1.26÷2.6=48%」、つまり半分の価格に下がっています。
PERが示す日米の会社価値のバリュエーションが合理的か非合理かは、別の次元の問題です。株価も、経済合理的なものではないからです。
■2.80年代後期の、日本の資産バブルの発生と崩壊のプロセス
30歳代が、最初の住宅を買う時期です。1980年代後期のローン金利は、6%くらいと、いまよりは5倍は高かった。しかし賃金の上昇期待は約7%(10年で2倍になるという期待)であり、年収(400万円)の10倍の4000万円の住宅を買っても5年後からはローンは十分に払えるという算段があったのです。いまは、将来はローン負担が軽くなるという期待はありません。
銀行は収入にかかわらず、ほぼ無審査で住宅を担保にしたローンを出していました(イージー・マネー:金利が低く借り入れがだれでも容易な通貨)。
企業が借り入れを申し込んでも、土地担保があれば評価額の100%以上の融資がおりていました(普通は80%以下の担保評価)。担保価値の1.5倍の貸付金がおりることもあったのです。
◎政府と銀行と国民は3者とも「日本の地価は永遠に上がる」という土地神話を信じていました。神話とは、事実ではなく繰り返し語られる伝統的物語です。
上がった不動産を担保に借り入れして、別の不動産買うことを繰り返すことが、地価が5年で3倍に上がる不動産バブルを生んだのです(年間25%上昇で5年)。不動産担保金融の日本のマネー量は、年25%の不動産価格価格の上昇によって負債マネーに指数曲線の加速度がついて増えていたのです。
借入金利は6%あたりでしたから、不動産を買うと5年間は「住宅の期待値上がり25%─支払い金利6%=19%/年」の期待利益が生まれていました。4000万円の住宅を買えば、所得の400万円より大きな年19%(760万円)の資産ができるという期待があったのです(1985年から1989年の5年間)。社会の観念では過去の傾向を将来に延長しますが、実際は、その将来には過去に価格を上げていた要素が変化します。
日本の1980年代後期の資産バブルは不動産から起こって、不動産担保で増えたマネーが株に向かい株価も上げました。プラザ合意があった1985年には1万円付近だった日経平均は、1989年には3万8900円と約4倍に上がり、年率の上昇は40%だったのです。(注)年間10%以上の株価上昇は、バブルです。
地価は25%/年で上がり株価は40%/年で上がっていたのです。不動産業はバブル紳士と言われ、銀座や北新地で100万円以上の札束を入れて散財していました。急にお金ができた人間が行うことは、高級なことではない。悶々として抑圧されていた欲望の発露にお金を使うからです。株価の総時価もピークで600兆円になり、米国の株価時価総額を超えていました。
不動産では皇居の土地で、日本の面積に匹敵し、いまLAが燃えているカリフォルニア州の全土も買えると言われた資産バブルでした。三菱地所も6000億円でロックフェラー・センターを買いましたが、バブル崩壊のあと3000億円で手放しています。
〔現在の株価〕現在の株価時価総額では、日本が1000兆円、米国は日本の9倍の9000兆円です。米国は2020年以降の5年で、とんでもない株リッチの国になっています。S&P500の株価は、2017年が2100ドル、現在は5800ドルです(2020年と22年の2回の調整を経て7年で2.7倍:年率上昇は15%)。
高い株価が、2025年も維持可能だと見ている投資家が80%はいるでしょう。GDPの世界シェアでは米国は25%ですが、株の時価のシェアは54%に膨らんでいます。AIと半導体をもつ米国株のバリュエーション(評価)が、他国よりは2倍高い水準であることを示しています。
(S&P500:2017-2025.1:Yahoo finance)
https://x.gd/nGNTH
■3.日本の資産バブル崩壊のプロセス
株価の下落からでした。1980年代にデリバティブを作った米国の大手銀行は、日本の株価の企業純益にたいする評価(バリュエーション)はPER60倍(期待利回りは1.6%)と極端に高いと分析していました。
1990年の新年からは、米国金融は、株価が下がると利益が出る「先物売り」と、「売りオプション」を仕掛けたのです。のちに、米国債の不正取引から潰されたソロモン・ブラザーズや、現在も活躍している政商銀行のゴールドマン・サックスが二大巨頭でした。政商銀行とは、いわば江戸時代の「越後屋」です。米国政府の国際戦略に乗って動きます。レバレッジがかかる空売りと先物売りもして株価を半分に下げて買う手段もとります。
1989年の12月までは、年率で25%から40%上がってきた日本株が、なぜ1990年の年初から暴落したのか、国内では、エコノミストたちと日銀と大蔵省すら原因を理解していませんでした。
先物とオプションはいずれも、ブラックショールズ方程式に基づいて未来の標準偏差でリスク計算をした「デリバティブ」です。30年も大蔵省・日銀による「護送船団方式の経営」に甘んじていた日本の銀行と証券会社は、1973年に開発されていた「株価のリスクを確率で計算して3か月先の合理的価格を出すブラックショールズ方程式」への理解はなかったからです。
〔先物とオプションの売り〕先物売りと売りオプションを仕掛けた米国の大手金融は、「株価が下がる局面での利益」を予想していました。日本株の先物売りと売りオプションが増えれば、株価は先行して下がります。
下がれば、先物の清算の買い(反対売買)で利益が出る。1989年の日経平均3万8900円(PER60倍)をピークと判断していた米国のファンド・マネジャーは、1990年から大規模な先物売りと売りオプションをしかけて日本の株価を下げ、日本人投資家が1989年12月までもっていた含み利益を、米国にもっていったのです。
「株価の下落での日本人の損が、そっくり日本株の下落による米国金融の利益」になったのでした。
金融政策が、いつも(いまでも)手遅れになる習性をもつ日銀は、プラザ合意のあとの5年の金融緩和で引き起こした株価バブル潰しのため、1989年11月からは利上げに転換していました(政策金利5.75%)。株価が暴落していても、1990年の12月には8.25%まで利上げしたのです。(政策金利:1989-2000)。日銀の金融政策は3年遅れでした。
https://www.boj.or.jp/statistics/dl/loan/prime/primeold2.htm
緩みきっていた金融の引き締めが効いて、日経平均は1991年の1月には1年間で1万8000円へと45%に下がったのです。これが、株価バブルの崩壊でした。
日本経済を震撼とさせていた株価の暴落に慌てた日銀(三重野総裁)は遅まきながら、1991年9月からは1回が0.5%くらいの利下げをしましたが、株価バブルが崩壊する気分に転換していた投資家にとっては、ときは遅かった。株価がとめどなく下がっていくなかで、日銀は1998年まで1.5%に利下げしていますが、崩壊した株価と地価には何の効果もなかったのです。
地価にたいしては、大蔵省(現財務省)の「不動産融資の総量規制(窓口規制)」は、上がった金利よりはるかに重く作用しました。
大蔵省は、1990年3月から、「日本の不動産は高すぎる(米国の住宅は1500万円、日本の住宅は4000万円)」という世論に押され、不動産への融資規制を発動したのです。銀行は財務省には弱いので不動産融資を規制しました。
不動産も株とおなじように借り入れでの買いが増えると上がります。借り入れでの買いが減ると下がります。企業が不動産を買うときは100%銀行から借り入れをします。企業が土地を買えなくなったのですから、地価は下がるに決まっています。
i)不動産融資への総量規制と、ii)人口構成による住宅購入の減少が重なって、都市部商業地の地価は1/3に、住宅地は1/2以下に下がりました。
その後10年、日経平均が8000円(バブル価格の1/5)に下がった2001年には、地価もボトムをつけていたのです。(東京の地価:1980-2018)
https://sumu-z.jp/journal/blog/tips36/
以上が、戦後世界最初で最大ものだった、日本の資産バブルの発生と崩壊の顛末(てんまつ)です。
■4.米国の株価と不動産バブル
米国の株価・不動産の高騰は、2020年のコロナ対策から来ています。
1)FRBのマネー量の緩和(国債と住宅ローン担保証券のMBSの買い)、
2)0.1%への利下げ、
3)財政の拡大という三重奏のマネー緩和です。
巨大なイージー・マネーが、日米欧で同時に発生したのが2020年3月からでした。
2020年のコロナ・パンデミックから2022年には、FRBは戦争のとき以外はありえない5兆ドル(775兆円)のドルを増発しました。企業と世帯のマネーサプライ(M2:預金)を急激に増やしたのです。急に増えた預金は商品、株価、不動産の購入に向かいました。
(米国の預金=マネー・サプライ:2015-2024)
https://fred.stlouisfed.org/series/WM2NS
商品の物価は9%上がり(22年3月)、株価(S&P500)は2020年3月の2700ドルから22年3月の2年で4600ドルまで、世帯所得に無関係に1.7倍に上がりました(年率上昇は30%)。
1991年を100とする全米の住宅価格指数も、2020年の280から2022年は398まで1.4倍に上がったのです(年率19%)。(米国の住宅価格指数:1990-2024.12)
https://jp.investing.com/economic-calendar/monthly-home-price-index-1287
「物価の上昇(年率9%)+株価上昇(30%)、不動産価格上昇(19%)」の3要素は、明らかに経済合理性のないコロナ後の米国バブルです。政府とFRBが、バブル作りの先頭に立ってきたからです。
政府、FRB、民間金融機関は、いまもバブルを認めていません。
1980年代後期の日本の政府・日銀とおなじです。政府機関と金融機関は、自らの失政を認めることはない。
ところが・・・バブルの発生と崩壊は、イージー・マネーを作ってその後に引き締める中央銀行が引き起こすのです。
【2022年3月の、金利の分岐点】
22年3の米国物価上昇9%にたいして、ゼロ金利とマネー業の資産バブルを生んだ主犯のFRBは、マイナスになった国民の90%の実質賃金(名目賃金上昇5%-物価上昇9%=マナス4%)にたいして、急激な利上げ(1回0.75%)に転換して、緩みきっていたマネーを引き締めました。
株式購入のマネー(M2)が減ったS&Pは2022年1月の4780ドルから、22年10月の9か月間は3600ドルへと25%下がりました。このときのFRBの政策金利は、22年3月の0.5%から23年10月は3.25%(6.5倍)に上がっていたからです。
22年10月からの、9か月間で25%の米国株価の下落は、9%上昇の物価を下げる目的のFRBの利上げによる副次効果でした。
年率19%で上がっていた住宅価格も、急な利上げで、わずかに下げました。FRBは2023年7月の5.5%まで7回連続で上げましたが、利上げはそこで停止し、物価上昇が落ち着いたとして1年2か月後の2024年9月からは0.5%利下げ、11月の0.25%利下げに向かいました。(米国の政策金利)
https://www.gaitame.com/markets/seisakukinri/newyork.html
【22年10月からは株価は、もう一段高いバブルに上がった】
FRBの政策金利が5.5%台のときも、22年10月からのS&P500は下がらず、5.5%という金利の高さと逆に、3800ドルから5950ドル(24年12月)へとバブルが昂進(こうしん)して、1.6倍に上げたのです(年率25%)。
〔重要な点〕FRBの利上げによる5.5%金利のなかで、株価と住宅価格が上がった原因は何でしょうか。ここを解かないと、日本の1980年代の資産バブルとは違う米国バブルの解読と2025年、26年のトランプ2年の予想はできません。
■5.円キャリー・トレードの残高が200兆円(IMF:24年7月時点)
円とドルの間には約4%の金利差があります。ほぼゼロ金利の現金を1000億円金融機関がもっていたときの運用の行動は、どうなるでしょう。4%という日米の金利差(イールド)が、200兆円という巨大キャリー・トレードが生じた原因です。
キャリー・トレードは、米銀とファンドが比較低金利の円を借りて、利回りが高いドル債や日米の株に投資するものです。
・ドルのレバレッジ(信用借り)では、年率5%付近の金利がかかって、金利が5%の米国債を買っても利益はない。
・しかし、金利がゼロ付近の円を借りてドル債を買えば、5%の利益が見込めます。
円を借りるリスクは為替の「円高/ドル安」ですが、日銀の急な円の利上げよる円高は見込みにくい。1200兆円の既発国債がある日本の金利には2%が上限という壁があって、米銀はこれを知っています。このため、米銀とファンドが、日本の銀行との間で行う「円キャリー・トレード」の残高は200兆円という大きさになっていたのです。
〔重要な点〕FRBが金利を上げてドルを絞っても、円キャリー・トレード200兆円は、ドル金融が200兆円増えたことおなじドル金融の緩和効果をもたらします。米国系ファンドは円を借りてドル国債、ドル株、米国不動産を買ったのです。
ドル金利が5.5%に上がっても24年7月までは0.1%というゼロ金利付近の円があったため、国際金融市場では、円による金融緩和になっていたのです。このためドル金利が5.5%の2022年10月からも、S&Pは年率25%(2年で1.6倍)で株価が上がった原因になりました。
〔200兆円の円キャリー・トレード〕コロナ後の円の増発マネー残高(日銀当座預金582兆円:24年10月)からは、200兆円(1.3兆ドル)の円マネーがドル買いになって、米銀に行ったのです。約5%の大きな比較低金利の日本円が、9%インフレへの対策から金利が上がった米国のマネー増発になったこととおなじです。
◎この円キャリー・トレードの大きさが証明されたのは、日銀が0.15ポイントの利上げをした24年7月末から8月5日でした(日本版ブラックマンデー)。
マージナルな安定利益を求めるファンドの運用では、レバレッジをかけて、将来を織り込んで株や債券の売買がされます。米国系ファンドは、「11年もゼロ金利付近だった日銀が、利上げに転換した」と驚いて、円の金利コストが上がる円キャリー・トレードを、37兆円も解消したのです。これは、円負債の返済になるので、37兆円相当の円買いになって、円レートを上げます(ドルは下がる)。
7月1日は1ドルが161円でした。8月5日には147円に上がりました(5週で24円:+14%)。24年9月には、140円にまで行きました。円キャリー・トレード解消の、巨大な円買い/ドル売りがあったことを示します。
(注)円キャリー・トレードは、いまも170兆円くらい残っているでしょう。7月の円キャリー・トレード残高200兆円は、8月5日の、日銀の利上げ後の通貨相場と株価下落に驚いたIMFが24年10月に緊急調査したものです。
新年の2025年に留意すべきは、
(1)円キャリーの残高がまだ170兆円はあって、
(2)日銀が利上げして日米金利差が縮小してくと、キャリー・トレードの巻き戻し(解消の円買い=ドル株売り)が起こることです。
日米の金利差の縮小は、米国バブル崩壊のきっかけになるくらい大きな影響力をもっています。2024年8月5日の、わずか0.15ポイントの日銀利上げの直後には37兆円の巻き戻し(円買い=ドル債券売り)が起こったくらいです。
◎〔バブル株価の性格〕ごく小さい円の利上げで、通貨と株価が大きく動く相場は、ファンド・マネジャーの心理が高いところの綱渡りの状態にあることを示します。バブル価格を作るのは過剰期待の心理です。
〔重要なまとめ〕FRBの22年3月からの利上げと、金融引き締めのあとのドルの増加供給は200兆円の円キャリー・トレードが果たしていました。
【実はリーマン危機の前の2006年にも、おなじことがあった】
19年さかのぼると、リーマン危機の前の利上げ(FRBの目標金利は5.25%:日米金利差は4.6%から4.8%)のときも「金利のあるドル買い/金利のない円売り」が起こって、米国が金融引き締めにならず、2006年も米国住宅価格が上がったこととおなじ国際金融のバブルの現象です。
金融のマエストロと讃えられていた元FRB議長のグリーンスパンは、「利上げしたのに住宅価格はまだ上がっている。変な現象だ」と言っていましたが、変なことではなかった。ゼロ金利の日本が、金利が上がったドルを円で買って、米国にマネーを供給していたからです。
〔外為市場は、巨大なマネーのプール〕円/ドルの、外為市場でのドル・円の売買は、1日に160兆円という巨大な通貨プールです。1日で数十兆円の円売り/ドル買い、または逆の円買い/ドル売りを、吸収します。
通貨の国際的な売買をする外為市場では、1日平均で160兆円の「円←→ドル」のマネー移動が起こっていますが、IMFにも全貌(世界中の外為銀行での通貨売買)はモニターできていません(BISはモニターしています)。
外為市場での売買で、円売りとドル売りが均衡する日は、通貨レートは動きません。
・円売り(=ドル買い)が勝つ日は、円安になり、
・ドル売り(=円買い)が勝つ日は、円高になります。
通貨レートは株価と同じように、ドルと円の売買の結果、決まるものです。金利も、国債売買の結果決まります。金利があって国債が売買されるのでなく、売る価格と買う価格の一致点で金利が決まるのです。
・金利が上がる日は、国債の売りが多く国債価格が下がったときであり、
・金利が下がる日は、国債の買いが多く国債価格が上がったときです。
円の外為市場は、
・円国債の売買をする債券市場(一般売買1日100兆円)の1.6倍、
・東証(1日5兆円の売買)の32倍もあります。
外為市場での円・ドルの動きを抜きにして、国債の価格や日米の株価は論じることはできない。
(円国債の債券市場)
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/tentoubaibai/index.html
(株と証券の1日平均売買高)
https://www.jpx.co.jp/corporate/investor-relations/financials/value-and-volume/index.html
◎結論を言うと、
・2022年3月の米FRBの利上げとQT(マネー供給量の縮小)のあとは、
・円売り/ドル買いのキャリー・トレード200兆が米国にマネーを供給し、
・利上げで下がるはずの米国の株価と不動産が上がったのです。
ここにも、外為金融のマジックが働いています。
1995年以降の金融自由化の世界では、各国の金利が均等化し通貨レートが安定していないと、各国のマネー政策は効かない。
2024年9月の、FRBの利下げ(0.5ポイント)のあと、ドル円は140円あたりから25年1月は、156円です、4か月で11%(1か月で2.7%)の円安(ドル高)のトレンドに乗っています。世界の外為銀行での、「円売り/ドル買い」が超過していることを示します。
FRBが11月の0.25%の利下げをしても、4.7%と高いドル金利にたいして1%台の金利の円から「ドル買い/円売り」が続いていることを示すのです。
日米の金利差が大きいため、「ドル買い/円売り」が続きドル高/円安の間は米国株は下がらないでしょう。
米国資産のバブル崩壊は、円金利が上昇し170兆円のキャリー・トレードが、24年8月5日を再現して50兆円くらい巻き戻すとき、つまり円高/ドル安になるときでしょう。
■6.トランプ初年度の2025年
投資家心理の楽観から生まれる資産バブルは、買いが買いを呼んで上がりますが、ある日から下がる局面になったという集合知の認識の変更があると売りが売りを呼んで、急に下がります。これは、あらゆる国のあらゆる時代の資産バブルにおいておなじ現象です。
今回の事例にあげた、1990年1月からの日本株の暴落もこれでした。投資家心理で起こるバブルとその崩壊は、女性心理の多くがそうであるように合理的ではない。小さな出来事からいったん嫌いになると戻らず肯定的に見えていたことも裏返ります。
1990年には、米国の先物とオプション金融が、日本株下落の先鞭をつけました。2年で半値に下がったのです。その後、2013年に上がるまで25年を要しました。
https://honkawa2.sakura.ne.jp/5075.html
【正常性バイアスの投資家心理】
2025年には何が米国株下落のきっかけになるか、イマジネーションを凝らします。いまはまだ米国個人投資家の90%以上は、2025年の株価について楽観的ですが、これはコミットしたことへの「正常性バイアス」です。
ひとには「買った株は上がる、または下がらない」というバイアス(偏向的な認知)が生じます。悪い材料は遠ざけ、いい情報は過大評価しますから、何が起こっても過度に楽観的になるのです。
【一方ファンド・マネジャーは?】
ファンド・マネジャー(たとえば500億円のポートフォリオの運用責任者)は、個人投資家とおなじでは生きて行けない。100回の売買で55勝45敗以上の3か月の成績をあげて最低で5%、できれば10%の含み損益ではない実現利益を上げなければ、数千万円から5億円の高額報酬の職を失います。
米国のファンド・マネジャーは、預託金と一緒に自分のマネーも運用する義務を負っていますから、自分の資産でも崖っぷちに立っています。成功裡に8年続けることは、プロ野球の選手より難しいでしょう。ファンド・マネジャーの平均勤続年数は、3年から5年程度と短い(年齢は30代から40代)。日米のファンド・マネジャーには2008年のリーマン危機の暴落の経験がありません。
〔バブルの発生と崩壊の理論〕日銀のイージー・マネーに科学ではない社会心理の過剰期待が重なって生まれた1980年代後期の日本のバブルと、1990年からの崩壊を理論的に書いたのはこのためです。
500億円を運用するファァンド・マネジャーは市場を楽観的には見ず、下落のときのヘッジになるポートフォリオ(分散投資)を組んでいます。
しかし個人投資家ではマネー量が少ないので、保険的なヘッジを含むポートフォリオが組めません。株価が上がるときはいいのですが、株価が25%以上下がりマージンコール(追い証)が必要な下げの局面になると、破産に至る損をします。
バブル崩壊のときは、戦争のあとのような、あるいは大火災のあとのような個人投資家の死屍累々が建物は正常ななかで発生します。社会心理は相場に6か月から1年は遅れるので、逃げるのが遅れるからです。
【米国の超低金利】
FRBは、2024年9月から0.50%、11月には0.25%利下げをしました。
2022年のピークでは9%だった物価の上昇率が下がっていたからです。
ところが・・・24年12月からは、「2025年の物価上昇率は下がることをやめて、逆に、上がるのではないか」という懸念が出てきています。24年12月のCPIは、わずかではあっても2年の下落傾向を変える2.9%に上がっています(全品目の総合)。
〔重要な現象〕期待物価の上昇があると上がる長期金利も、2024年9月の3.7%から4.8%に上がっています。長期マネーの価格(10年債)は約10%下がったのです。
発行時の金利が満期まで続く国債価格の下落は金利の上昇であって、インフレ期待の高まりを示します。3.8%の利回りの国債が、インフレ期待から売られて価格は10%下がり4.8%の利回りに上がったのです。
期待物価序章の背景には、2025年に10%から20%に上げるというトランプ関税があります。
〔トランプ輸入関税〕米国の輸入額は3.1兆ドル(480兆円)と大きい。日本の4.8倍です。
100兆円の売上のウォルマートに行くとわかりますが、食品以外の衣料、住関連、電気製品には米国産は見当たらない。およそ100%が中国・アジアと世界からの輸入品です。輸入価格が関税で10%上がると、購買頻度が高い必需品の物価はいまより最低5%は上がるでしょう。
つまり2025年の米国消費者物価は、全体ではいまの2.9%から4%台に上がる可能性が高い(輸入関税の効果が及ぶ2025年6月以降)。下がってきた物価上昇率が逆転すると、FRBは24年9月と11月の利下げから逆に、20025年には利上げで金融を絞る可能性が高くなるのです。
(米国CPI:前年比)
https://jp.investing.com/economic-calendar/cpi-733
米国の金利の上昇は、政府の35兆ドルの国債と、世帯の負債17.5兆ドルの利払いを増加させます。輸入物価の上昇から、日本のように世帯の実質所得はマイナスになって、消費不況が襲うでしょう。
米国ではGDPの70%が世帯の消費なので、実質賃金のマイナスによる消費不況は深刻な影響を及ぼします(五公五民の日本では、手取り収入が少なく、GDPの50%が世帯消費という少なさです)。
(1)米国の連邦政府の負債は36兆ドル(5580兆円)、
(2)世帯の負債は17.5兆ドル(2700兆円)、
◎合計では53.5兆ドル(8300兆円:米国のGDP=国民所得の2年分)もあります。(注)これとは別に、対外純負債(海外がもつ米国債+債券+株)が21兆ドルあります。
金利が1%上がると、政府と世帯の総利払いは53.5兆ドル×1%=5350億ドル(83兆円)増えるのです。負債の利払いの増加は、政府の赤字増加、世帯の赤字の増加になります(マネープライは減少します)。
政府と世帯の合計負債が、GDPの2年分と世界1大きく、対外純負債が21兆ドルある米国では金利の上昇は、利払いの増加からマネーが大きく絞られることなって、株を買うマネーは減るので、株価は下落に向かうでしょう。
最短では、2025年6月から最長なら2025年12月ころからは米国マネーの減少による株価下落が始まると推計しています。
(米国の長期金利の推移)
https://x.gd/Xz7OM
日本の物価も再び上がっています。2025年には日銀は、25年3月に0.25%、6月に0.25%利上げをして長期金利は1.5%から1.75%には上がるでしょう。日本の金利が1.75%に上がるプロセスでは、円キャリー・トレードの大きな24年8月5日の37兆円より巻き戻し(推計50兆円)が起こって「円高/ドル安→米国株下落・日本株下落」になる可能性も高くなるでしょう。
(日本の長期金利)
https://x.gd/VBLis
時価総額が9000兆円に膨らんでいる米国株は、利払いの増加と円キャリーの解消の増加から二重に下がります。
仮にトランプが超金融緩和(2兆ドルの通貨増発)をすれば、米国の物価は5%、6%、7%と上がっていき、再び利上げ(金融引き締め)の必要が出るでて来るからです。
(米国の長期金利)
https://x.gd/uDRPd
以上が25年1月での、トランプの2025年の見通しです。可能なら「25年も株価は上がる」としたいのですが、株を買うドルマネーの収縮から、論理的・合理的には、無責任に「上がる」とは言うことができません。論理的な反論を期待しています。見落とした条件があるかもしれません。
■6.2025年の、米連邦政府の資金繰り難
政府、民間企業、世帯がともに借金大国の米国では、2025年から政府分の借金に、歴史上最大の「ドルのキャッシュ・フロー難」が襲います(前号の有料版正刊に書きました)。
(1)政府の国債残が36兆ドル、1年に2兆ドルが財政赤字なので、普通の年度でも2兆ドル国債発行が増えます。
(2)36兆ドルの国債の、トランプの2025年での利払いが1兆ドル。国債の利払いは2025年から軍事費(8800億ドル)を超えます。
(3)36兆ドルの国債の返済満期が来るものが10兆ドル。
(4)政府は新規財政赤字(2兆ドル)に加えて、10兆ドルの借り換え国債、合計では12兆ドルの国債を発行して、債券市場の金利をさほど上げないで売らないと、米国債がデフォルトします。
(5)民間では、米国世帯の総負債は17.5兆ドル(2600兆円)もあり、約定返済(推計4兆ドル)と利払い1兆ドルが襲います。家計には5兆ドルのマネーが必要です。
世帯の負債は、i)住宅ローン(12兆ドル:金利は6.95%:8340億ドル)、ii)自動車ローン(1.6兆ドル)、iii)学資ローン(1.6兆ドル)、iv)クレジットカードローン(1.1兆ドル:延滞金利は21%と高い)。
〔重要な事項〕株価の高騰(時価総額9000兆円)の影になって、政府と世帯の負債問題は取り上げられていませんが、2025年からは低金利時代(ほぼゼロ金利)に増えた借金の返済と、上がった金利の利払いが襲います。
頭領がトランプになった連邦政府と世帯が、
・どうやって、利払いし(利払いだけで推計620兆円)、
・満期が来た借金の返済(推計15兆ドル:2325兆円)をしていくのか? 普通なら「破産国家」であるのが米国です。
アニメの台詞、「君はすでに死んでいる」。増え続ける借金の地獄の釜に蓋をし、国民所得の2.8年分になった負債の増加を無視して、世界1の虚飾の繁栄をしたきたのが米国という負債国家です(映像的なイメージ)。
国の内外から、借入金が増えることのできる間(ドル買いが多く、株買いが多く株価が上がる間)は繁栄が続きます・ドル建ての株価と国債の価格が下がって、海外からのドル買いが増えなくなれば床の自動扉のように蓋がスライドして、煮えたぎる釜に落ちます(イメージ化)。
ドル買いとは、マネーのキャッシュ・フローでは米国への貸し付けです。
■7.後記(1):『失われた1100兆円を奪還せよ!』の関連部分から
本稿のテーマに関連する、新著の記述を抜粋します。バブルとバブル崩壊述べたところの一部です。24年11月に書いたものです。
<・・・米国で消費が好調に見えるのは、高く上がった株をもつ個人所得上位15%(2400万世帯)の、年収82万ドル(1億1890万円)の階級の消費額が多いためだ。富裕者の所得が低所得者におりるという奢侈(しゃし)と散財の貴族時代のトリクルダウンというトンデモ理論があった。中国の開放経済の1990年代、トウ小平の「先富の思想」もこれだった。これは機能しない。
【バブルの時期にはバブル肯定する論があらわれる。
学者はその程度のものだ】
いつの時代も、所得格差を肯定するイデオロギーに満ちていた。日本のバブル時代には、少数者がもつ株価と資産の高さを肯定する理論の「トービンのq」もあった。
中央銀行が国債を買って通貨の無限発行をすることを効果的とするMMT(現代貨幣理論:ステファニー・ケルトン)もおなじである。
米国では、所得が中流以下の85%(1億3600世帯)は、物価の上昇、家賃を含む住宅費の増加による物価上昇を引いた実質賃金の低下で苦しんでいるが、日本のメディアは伝えない。
メディアは、時(とき)の政権に帰属する。日米ともにおなじだ。健康なジャーナリズムではない。原因は、日米ともに収入が半減して、金融資本の支配下にあるからだ。ジャーナリズムが金融資本や既得権益側に立つと、米国風のシンクタンクになる。国家のメディアである人民日報の中国、プラウダのロシアのように民主主義は機能しなくなる。
物価上昇を引いた、実質消費の伸びでは米国では、
1)所得階層を三区分した高所得世帯(10万ドル以上:1450万円)が大きく、
2)中所得(8万ドル:1160万円)の世帯が中くらい。
3)物価上昇で苦しんでいる所得の低い世帯(6万ドル以下:870万円以下)は、小切手のコロナ補助金が、1世帯でおよそ150万円あったあとは、消費の伸びが低位であって生存消費しかしていない。
物価が日本の約2倍、住宅価格が約3倍の米国では、年収870万円以下は貧困層になる。(図9-3-1)
世帯が高頻度で買う商品の、スーパーの物価の上昇率は、日米共通に、政府統計の全体物価より高い。世帯の高頻度購買商品だけのインフレのデータはないが、物価上昇率がG7でいちばん低い日本でも感覚ではコロナ前の2020年の1.5倍、米国では2倍になっているだろう。
店舗の実質売上である商品数量での前年比は、名目金額の5%上昇ではなく5%減少だろう。さきにあげた物価論の世界的な権威、渡辺努東大教授は、店舗のPOSでデータから高頻度購買商品の物価の上昇は政府が言う3%ではなく8%だったとしている。5%もの差がある。
24年10月15日のニューズ・ウィーク誌は、『アメリカ中流層の悲鳴が聞こえる』という特集記事を組んでいる。年収1500万円、米国では中流、日本では上流の所得金額の階級であっても、学資ローン、住宅ローン、クレジットカードの負債が限度に達して返済に苦しんでいる。
中産階級の生活苦は、大統領選挙の基盤にある争点であった。サステナブルな社会を超えた所得と資産の格差から来る相対的な貧困の問題である(高所得者との比較による貧困:日米の85%世帯)。
図9-3-2を見ると債務の悪化の一端がわかる。米国では世帯の住宅ローン13兆ドル(1885兆円)以外にも、車のローン、学資ローンを含む消費ローンが5兆ドル(725兆円)と大きい。この三つを合わせると18兆ドル、1世帯あたりでは12万ドルである(1740万円)。日本の1世帯あたりの住宅ローンと消費ローンの合計である740万円の2.4倍である。
(米国の世帯ローンとクレジットカードの延滞率)
https://agora-web.jp/archives/241119224323.html
住宅ローンを除く世帯向けローンは延滞率が14%に悪化していて、その上昇のトレンドは急峻(きゅうしゅん)である。なお20年3月の、3か月延滞率の尖った16%はコロナ危機から来ている。
本書が出る25年1月から3月には、延滞率がこのグラフにはない13兆ドルある住宅ローンの延滞増加と合わせると、日銀が利上げをした場合、8年のリーマン危機のように、ドルの危機と銀行危機にもなる20%付近になっているかもしれない。
2024年11月には0.25%と世界低い金利の円キャリー・トレードでドルを買い越して、米国の債務危機を支えている。
これは銀行が、破産したら困る赤字の会社に、追い貸しを続けて延命させること変わらない。これが、ドルの罠(わな)である。低金利の円を借りるキャリー・トレードと日本のドル買い超過の結果が、1ドル154.6円の円安/ドル高である(24.11.19)。24年8月5日は1ドル140円だった。3か月で10%の円安・ドル高に回帰している。
政府の経済統計(操作があることの多い速報でなく確報)は、リアルタイムで動いているマネーの金融には、3か月から6か月は遅れる。24年には、ほぼ横ばいになっている全米平均の住宅価格が下がると、住宅ローンの悪化からのリーマン危機とおなじローン危機が不良債権の規模を大きくして起こる。
時期は、2025年後半からだろうか。ローンをまとめたMBS(不動産ローン担保証券)として、細切れにして売られているデリバティブの住宅ローン債券の危機は、物価と金利の遅行指標である。農林中金は再び2兆円の損失を出した。08年のリーマン危機のときは、住宅価格がピークアウトしてから1.5年から2年後であった。
マンハッタンの平均家賃は、5600ドル(81万円)に高騰している。これは年額でなく月額である。15万ドル(2170万円)の年収であっても住むことはむずかしい。
とくに年俸が高いウォール街の金融・証券・ファンドに勤めるひとの平均年収は、トレーダーだけではなく事務員(クラーク)を含む男女の社員平均で7000万円に上がった(2023年)。平均が、日本の一部上場企業のトップや役員クラスの賃金に上がった。ほかには、株価が上がると数億円以上になることがあるオプション株も普及している(一定価格で買う権利:株価上昇-その一定価格が追加の報酬になる)。
2億円や3億円を超える住宅であっても、賃金年収の3倍あたりであり、簡単にローンで買えるのがいまのウォール街の従業員である。しかしPER35倍のバブル圏にあるナスダックの株価が下がって、金融機関のレイオフが増えると、数か月でホームレスに堕(お)ちる。株価下落と連動してローン債権は不良化する。米国のレイオフには、業績低下から3か月の猶予(ゆうよ)がない。このため在任中の報酬が高い。
こうしたものが米国の都市部に多い高額所得者のライフスタイルである。金融の利益は、米国の企業利益の30%を占めている。米国の資産と所得の格差は、安定した社会の限度を超えている(中国の所得格差とおなじである)。
世界史では開く一方の所得・資産の格差こそが社会の不満を高め暴動と革命の原因になってきた。米国の「世論の分断」の原因も、ひらきすぎた所得と資産の格差である。
社会システムのサステナブルな臨界点を超えてしまった米国の格差が修正に向かわないと、米国民の心理的な不満が臨界点に達した社会体制(ソシアル・システム)の危機になる。人口では、低所得の階級が圧倒的に多いからである。11月5日の米国大統領選挙の結果は、物価が上がるなかで相対的貧困層の増加を如実に示すものだ。
国の体制は「時代の気分」に適合しなくなると、機械的なシステムのように不意に壊れる。時代は政治の形態・制度・文化・思想(ひとびとの共通の考え)で区分される一定期間である。その一端がトランプのMAGAかも知れないが、これも序曲であろう。自公が過半数を割ったことも同根である・・・(抜粋引用の終わり)>
(販売はアマゾンのサイト)
↓
https://x.gd/ArIy4
【後記(2):米国マネーサプライ(M2)と株価】
2022年の3月の22兆ドルをピークにして、インフレ対応のFRBの利上げとQT(量的縮小)から、米国の企業の預金と世帯の預金であるM2は減っています。M2が減ると、株価は下がることが普通です。
https://fred.stlouisfed.org/series/WM2NS
ところが米国株で代表的なS&P500は、2022年後半期の3640ドルから5940ドルまで、2年3か月で64%も上がっています。
原因は、FRBの利上げで上がったドル金利(5.5%)にたいして、24年7月までは0.10%の金利だった円によるドル買いになる「円キャリー・トレード(200兆円)」です。
FRBがマネーを絞って金利を上げると、ゼロ金利あたりを続けている円からのドル買いが増えて、米国のマネー・サプライを増やし、1ドル(155兆円)の自社株買いになったからです。
この延長で言うと、日銀が2025年に利上をすると、円キャリーの巻き戻し起こって、米国株と米国ファンドの売買が70%を占める東証の株価は同時に下がるでしょう。
◎日米の株式市場で、これが起こったのが、2024年8月5日の日銀の0.15ポイント利上げのあとの「円キャリー・トレードの解消37兆円」でした。このとき、日米株が売れて株価は1日で急落したのです(日経平均は1万円下げ(-25%):S&P500は8%下げ)。日本版ブラックマンデーでした。
米国のマネー・サプライの増加と、日米の株価上昇は、低金利の円でのドル買いで、一手に支えられています(円キャリー・トレードの残高170兆円:25年1月)。
日本からのドル買いで増える米国のマネー・サプライが日本株も支えるのは、東証の株売買の70%が米国系ファンドによるものだからです。
〔日本からのドル買い(=円安)→米国のマネー・サプライの増加→ドル高・株高→米国の大手ファンドによる日本株の売買〕という国際的なマネーの還流が起こっているのです。
東証は、NYSE(NY証券取引所)の極東支店のポジションになっています。2025年は4万2000円に上げると言われるなかで、日経平均は24年10月の4万円から約4か月で3万8400円へと4%下げています(25年1月17日)。24年12月からのS&P500も6080ドルから5950ドルへと2%下げています。原因は、AIへの過剰だった期待が剥がれてきたからです。
暗号通貨を肯定するトランプ当選の11月からは、とくにXRP(リップル)が3か月で6.5倍に上がっています(時価総額は27兆円:金への換算では2000トン分)。認証時間が3秒のXRPには、ドルでの国際送金の代替通貨になるという市場の期待があります(ビットコインは10分かかる)。
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