Foomii(フーミー)

ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで

吉田繁治 (経営コンサルタント )

吉田繁治

ビジネス知識源プレミアム:増刊:『日本を衰退から救う方法』ドラフト(3)
無料記事


<1ヶ月にビジネス書5冊を超える知識価値をe-Mailで>
ビジネス知識源プレミアム(660円/月:税込):Vol.1485号

<Vol.1485号:増刊『日本を衰退から救う方法』ドラフト(3)>

2024年10月25日:米国の不況化と利下げから、コロナ後の資産バブルの崩れが始まる


ホームページ https://www.cool-knowledge.com
購読管理 https://foomii.com/mypage/

著者へのメール    yoshida@cool-knowledge.com
著者:Systems Research Ltd. Consultant吉田繁治



先週は、無料版・有料版共通の増刊は、お休みをいただきました。
2週ぶりに送ります。

日本では、自公連立が過半数を割る可能性も高い衆院総選挙の投票日が、明後日に迫りました。米国では、世界の2025年から4年の体制に強い影響を及ぼす大統領選挙が11月5日に迫っています。

民主党のハリスが、原稿なしのスピーチができないことがTVで明らかになって、自民党総裁選の小泉進次郎氏が短期間でたどったように国民人気が低下しています。米大統領選は、中東部の激戦7州が結果を決めます。ハリスが有利だった支持率が、全部、オセロのように2%くらいの微差ではあっても、トランプ支持の赤になっています。米国にはあるオッズの賭けでは、トランプ有利が61.3%、ハリス有利が38.6%になって、10月にはトランプ有利に転換しました。

民主党と共和党が激しく対立する米大統領選は、ギリギリまで何があるか不明なところがありますが、このままならトランプ再選です。不正集計は、激戦州で部分的にあるようですが、5%未満の差でないと、働くのは難しい。

いずれにせよ、日米の政治体制は、ほぼ同時に、しかも大きく転換します。こんなことは過去にはなった。

3週くらいまえから、年内に発刊する予定で新刊書を、集中して書いています。仮題は、『日本を衰退から救う方法』。経済的・政治的な提案です。高校生が理解できることが目標であり、金融・経済の多くの用語には、基礎から解説を交えています。

そのドラフト(草稿)の一部を、送ります。理解できにくいところ、もっと詳しく書くべきところ、修正すべきことがあれば、ぜひお知らせください。

修正・削除・付加記述は間に合います。いま300ページ目標で250ページくらいです。このメールで送るのは書籍では20ページ分くらいでしょうか。「である調」で書いています。



<Vol.1485号:増刊『日本を衰退から救う方法』ドラフト(3)>
2024年10月25日:有料版・無料版共通

【書籍の目次】
■2-1.人口減のなかの、消費税10%が日本経済の根本的な障害
■2-2逆累進の経済になっている(これが指摘されていない)
■2-2:日銀の異次元緩和は、円安をもたらした以外は、一体何だったのか?
■2-3 消費税の導入初期(1988年~)
■2.4:1995年から通貨の売買が国際金融の中心になったから、失業率低下のための金融緩和をいうフィリップス曲線は通説になって無効になった
■2-5:日本の雇用環境と雇用文化では、フィリップス曲線が働きにくい
【後記】



■2-1.人口減のなかの、消費税10%が日本経済の根本的な障害

 10%の消費税は、年金、医療、介護、子育て支援金という、政府の保険料収入と支払いからの赤字にあてていると財務省はいう。消費税の23.8兆円(個人消費の約10%)があるから、現在の水準の社会福祉費を、国民に提供できるという。

 この税と社会福祉の論理には、民主的な近代国家としては、おかしなところが隠れている。民主的とは、国民が選ぶ国家のことだ。民主国家の税では、公平性という国家の原則から、高所得者が多く負担する所得累進の税率であつめた税を、国民に平等に分配するということが基本である。


■2-2逆累進の経済になっている(これが指摘されていない)

 ところが消費税は、低い所得のひとほど、税負担率がおもくなる逆累進(ぎゃくるいしん)税である。高額所得者ほど、その所得に対する消費税の負担率は低い。所得が2倍の世帯でも、食品需要が2倍になることはないからである。

 ほぼ80%の中から低い所得の世帯では、所得のなかで、生きて生活をおくるのに必需の、しかも税が10%かかった消費財を買う率が高く、税のかからない貯蓄と投資になる金融商品や不動産の購入費の割合は低くなる。

2000年以降、日本人の世帯の実質所得が15%は減ってきたので、貯蓄率は平均6%の米国より、低い3%に下がっている。

 上位20%の高所得世帯に多い、外貨や証券投資と住宅ローンの支払いは、消費ではなく貯蓄である。世帯所得=消費+株の購入や預金を含む貯蓄。住宅ローンの支払いも経済学的には貯蓄である。貯蓄が、銀行預金を経て貸付金になり、生産を増加させる設備投資になれば、GDPは伸びる。

 しかし国内のGDP増加予想が1%未満と理由で、銀行に貸し付け事務と管理の手間かかる貸付金利は0.6%と低い。このため、金利が、日本より3%から5%高いドル証券買いや、投資信託であるドルMMFで海外に流れ、GDP(国内総生産)は伸びない。

 日本の今までの30年がこれだった。海外への貯蓄である対外純資産は、ドル買いで471兆円になっているが、その分、国内への設備投資は減った。

 共働きの年収であっても800万円以下が世帯数の75%(うち年金世帯は30%)を占めるように増えた現在では、所得にしめる消費の率は高く、貯蓄はほぼゼロに近くなる。

 日本は、とりわけ2010年から貯蓄大国ではなくなっている。世帯の所得に対する平均貯蓄率は3%に下がって、米国の6%の半分に下がっている。
 2022年の世帯所得の階級別分布を見ていただきたい。1990年から広がってきた所得の格差を示すこのグラフは、あまり参照されない(2022年)。

 企業別では、3954社の、上場企業の正社員の賃金上昇は、1年に2%あたりが基準だった。しかし360万社の中小企業(総雇用者の70%:3200万人)では、時間賃金が1/2の非正規雇用が40%に増え、正社員の賃金も上がらなかった。これが32年後には、この図の結果の所得格差になってしまった。
 (階級別世帯所得と貧困率)
https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2023/08_09/kokunai_02.html

【消費税の逆累進】
世帯の支出のなかでもっとも大きな食糧費の割合は、
・高い所得の世帯ほど、低くなり、
・低い所得世帯では、高くなる。

 非正規雇用が総雇用の40%になっていて1人あたりの所得の格差は、拡大の一途である。非正規がいなかった公務員にすら、臨時職員の非正規雇用が増えている。

 非正規雇用が、図1-2で見るように1985年の20%から40%までウナギ登りに増えた原因は、日本の正社員の雇用は、現在も長期雇用を暗黙の前提にしているからである。

 男子がマレに非正規から正社員になると、家庭では就職したかのように赤飯を炊(た)いて祝うと聞いた。哀切の風景。

実質賃金の低下の主因は、
1)企業の売上が増えないなかで、10%になった消費税の負担と、2)1972年の所得の5.4%から、2022年は15.5%と約3倍に上がって、会社も半額を負担する社会保険料の、賃金のなかでの増加である(年金保険料、医療保険料、介護保険料、子育て支援金など)。

 1980年代末から、売上収益の伸びがよくないどころか、減ってきたところが多い400万社の企業にとっては、毎年2%は賃金を上げなければならない正社員として長期雇用ができない分を、時間賃金が1/2付近の非正規雇用にすることが経営合理的だった。

 資本主義ではおなじというが、日本では米国のような、雇用のレイオフの制度と社会の慣習はない。雇用と物価は、経済学の2大問題である。このふたつが違う場合、日米野経済はおなじ土俵で論じることはできない。

 おなじ資本主義といっても雇用、技術、物価、金融では、世界は人種のように多様である。政府の政策は「他国とは違う国の雇用の実相」を見たものでなければならないが、日銀の異次元緩和と、政府の消費税増税では、これが顧(かえり)みられていない。

 雇用構造が1980年代までとは、非正規が増えて大きく変わっていたのに、国民に不公平な消費税23.8兆円が、社会福祉費の赤字23.8兆円分(世帯当たりでは47.6万円)として徴収されている。

【米国とは違い、所得が伸びていない日本での消費税の本質】
 これが、結果不平等が大きくなる消費税の本質である。
 思えば叶うとはいうが、日本人の戦後経済は、現在の姿を希望したものでない。

・1990年の資産バブル崩壊、
・1995年からの外貨規制の撤廃と、資本の自由化による円安、
・とくに、年金・医療費・老人福祉の関連費が増える人口の高齢化が重なっておかしくなってきた。

 人口の高齢化と少子化は、1980年代から確実なものとして予想できていたことだった。

 現在の人口の構造は、40年以上も前から、政府によって予想されていたことだった(国立人口問題研究所)。

 しかし単年度の財政の予算制度である政府と政治家は、前年度からの積み上げまたは削減をするだけであり、長期政策は、5年で2倍にするという軍事費以外ではほとんどない。ここにも問題がある。日本丸はその羅針盤(らしんばん)において、長期の経営計画と未来ビジョンがない企業のようなものだ。過去も現在もおなじある。修正を加えなければならない。

 そうでないと、日本経済は確実な人口数と、人口構造の予想通りに衰退する。皆、1年には1歳は平等に年をとる。西暦の2000年こそが、3400万人の明治維新以降の、人口の近代化成長の経済が、働く生産年齢の人口減と高齢化に向かう分水嶺(ぶんすいれい)だった。それからもう24年も経って、2005年からは総人口の加速する減少になった。

【米欧の移民問題】
 米欧では生産年齢の人口減を補う移民政策がとられたが、2020年ころから米欧の、犯罪と福祉財政の赤字拡大という社会問題になっている。不法な移民も多いスウェーデンでは、帰還手当を35万クローナ(490万円)出して、移民の帰国を促(うなが)している。

ドイツの移民数も2230万になっていて、人口の27.7%を占める(2021年)。米国は不法移民を含まないでも4243万人であり人口の11.3%である。サウジは37.3%である。これが、リベラル派が推進したダイバーシティ(多人種性)の結果である。

 米国民主党は、バイデン政権下の730万人とされる不法移民の多くが民主党支持になることから、数百万人の不法滞在を許して、大統領選挙の争点になっている。米国民の8割は政府の移民対応を評価していない。

 日本の移民数は341万人、西欧に比べ人口の2.7%と一桁(けた)少ない。日本では、西欧が失敗した移民増加の政策はとらないほうがいい。実は2024年には、1/2の円安で政府が推進しているベトナムなどからの日本への移民人気は韓国の下に下がっている。

■2-2:日銀の異次元緩和は、円安をもたらした以外は、一体何だったのか?

 3年の民主党政権を経て、2012年12月には、安倍首相の自民党政権に回帰した。事実上、安倍元首相から首を切られた白川総裁に代わったリフレ派の黒田総裁、岩田副総裁は翌年の4月から、黒田バズーカともいわれた異次元緩和を実行した。

 政府が発行し、内外の金融機関がもっていた国債(1100兆円)を、日銀が債券市場で、最初は年60兆円、2年目からは80兆円買って、金融機関がもつ日銀当座預金には買った国債とおなじ金額のマネーを供給する政策をとった。

 世界史上初めての、国債の大規模な現金化であるマネタイゼーションだった(国債の現金化)。

【財政法違反の、
  財政ファイナンスとマネタイゼーションの実行をした日銀】
 国債を日銀が買うことによる財政のファイナンスも、これとおなじである。ファイナンスとは資金調達をいう。日銀は、債券市場で国債を買っているからマネタイゼーションや財政ファイナンスではないと毎回言うが、この弁明は、根拠がないウソである。

1)財政のファイナンスを行うと、政府の国債という負債が、日銀に銀行がもつ当座預金という負債に変わる。この当座預金は、銀行が日銀の預金口座にもつ日銀への預金である。

2)日銀にとっては、異次元緩和のあいだ買ってきた約500兆円の政府の国債は、現金に振り替わった日銀の負債である。マネーフローでは政府の負債を日銀が肩代わりすることである。

 この異次元緩和の目的は、
1)2年で物価を2%上げて2000年からのデフレ経済から脱却し、
2)人口減の日本経済を、名目GDP3%の成長軌道にのせることだとされていたが失敗している。

 日銀は失敗したとは決して言わない。日本の官僚は「政策は無謬(むびゅう)」とする。第二次世界大戦への参戦も、軍部がやったものであり政府官僚は無謬とされている。これも嘘である。

 財務省は、国債をGDPの200%発行して軍事費に充て、日銀は戦後のハイパーインフレを生んだ。円は戦後のドルに対して、1/72の円安に下がった。日銀が設立された明治15年(1882年)には、1ドル=1円=1グラムの金だったが、金本位からはずれていた戦争直前は1ドル5円、戦後は1ドル360円、インフレは150倍。
戦時国債を買って通貨を増発したのは、日銀である。

 世界1のGDPの米国でも、国債をGDPの100%発行して国内のマネーを調達しないと、兵器と兵士を調達する軍部が戦争は実行できなかった。

 戦争は、政府と国民の賛成と、「打倒!鬼畜米英」のような強い協賛の空気がないと行えない。

 この間の8年に物価の上昇はあった。しかしそれは、5%だった消費税を上げた2014年4月(この年度に+3%)と、2019年10月(この時期に+2%)だけだった。消費税は物価に含まれる。本書で既述したように、消費者が商品を買うとき、納税の意識がなく納税している消費への懲罰(ちょうばつ)の税である

【消費税】
 2024年の、政府の消費税収入は23.8兆円、これは家計の消費財支出の約10%である。

 消費(店舗での買い物)をせず、預金にすれば消費税はかからないから消費懲罰税(ちょうばつぜい)である。

 毎年、消費の10%にあたる23.8兆円の懲罰税をかけて、所得が増えていない世帯の消費が増えるわけがない。政府はこの増税で、政策の意図にはなかった、国民の実質的な消費10%を減らす政策をとったことになる。

 (注)実質的な消費は、名目金額ではなく、世帯が店舗で購買した商品数量。消費税は買った商品の売価に含まれるから、所得税のような申告納税の意識はない。ここが政府にとってのミソであり、国民にとっての毒である。

 なお2022年に物価が3%、2023年には4%上がったのは、コロナ対策の財政出動(100兆円の世帯補助金+ロックダウンした会社へのゼロ・ゼロ融資)からであって異次元緩和からではない。
 図1-2は、日銀の異次元緩和の、物価上昇目標での失敗を、あからさまに示す。(物価に転嫁された消費税:資料2)
https://www.dlri.co.jp/report/macro/261694.html

 2013年4月から、総額500兆円、8年の異次元緩和を行っても、それが原因になった、顕著な物価の上昇はなかった。

 異次元緩和の開始のあとの2014年と2018年から19年に物価が上がったのは、二度の消費税の増税(3%と2%)によるものだった。

 超金融緩和の開始から11年も経った。11年の金融政策が、経済の成長と実質賃金の上昇に効果を生んでいないことは、反省すべきである。「反省」とは謝ることではない。責任をとることでもない。失敗の原因を分析し、原因対策を立案して実行することである。当方は微力であるが、本書はこのスタンスをとる。

 資本の自由化されて29年も経った現代では、ひどく古くなった通説を信奉して「通貨増発と財政の拡大しかない」とすれば、この国はとめどのない円安から、食品、資源、エネルギーの、100兆円の必需の輸入物価が上がり、実質GDPと世帯の実質所得は下がる。

 この不況に、増える人口の減少が重なって、16世紀の東方貿易で、当時の世界1に繁栄したベネチアのように、ゆっくりとではあるが着実に、たぶん2060年には沈んでしまうだろう。

■2-3 消費税の導入初期(1988年~)

 税で物価を3%上げる消費税3%の初期導入は、所得が増えていた1980年代末であっても国民にとって、2つの政権を代えるくらい大きな政治問題だった。

 1988年から93年には、40歳以下のひとは生まれていない。現在が55歳以下のひとは、政治には関与も関心もない学童だった。

 書籍は過去を文字で再現する効果ももつ。50歳以上の世代に、思い出していただくためにも書いている。55歳未満のひとたちには知っていただきたい。3%だった消費税はその後、外貨の購入規制がなくなった金融ビッグバンのあと、1997年に5%に上がった(図1-2)。

 ここから今も異論があって、入り組んでいることを書く。消費税の増税と、物価上昇の関係である。実は、本当は入り組んでいない。日銀の異次元緩和が目標とした2%のインフレ目標の達成に効果があったかのように、岩田副総裁がもちだした古い「貨幣数量説の通説・・・M(マネー量増加)×V(預金の回転速度)=P(物価上昇率)×T(実質GDP増加率)・・・を信用しているリフレ派がまだ発言しているため、入り組んで見えるだけだ(前掲図1-2)

 超金融緩和の開始から11年も経った。11年の金融政策が効果を生んでいないことは、反省すべきである。「反省」とは謝ることではない。責任をとることでもない。失敗の原因を分析し、原因対策を立案して実行することである。当方は微力であるが、本書はこのスタンスをとる。

 古い通説に従属して「通貨増発と財政の拡大しかない」とすれば、この国はとめどのない円安から、食品、資源、エネルギーの、100兆円の必需の輸入物価が上がり、実質GDPと世帯の実質所得は下がる。この不況に増える人口減が重(かさ)なって、16世紀の東方貿易で当時の世界1に繁栄したベネチアのように、ゆっくりとではあるが着実にたぶん2060年には沈んでしまうだろう。

 税で物価を3%上げる消費税3%の初期導入は、所得が増えていた1980年代末であっても国民にとって、政権を変えるくらいの政治問題だった。

 1988年から93年には、40歳以下のひとは生まれていない。現在が55歳以下のひとは、政治には関与も関心もない学童だった。

 書籍は、過去を文字で再現する効果ももつ。50歳以上の世代に、思い出していただくためにも書いている。55歳未満のひとには知っていただきたい。3%だった消費税はその後、外貨の購入規制がなくなった金融ビッグバンのあと、1997年に5%に上がった(図1-2)。
               *
 ここから、今も異論があって入り組んでいることを書く。消費税の増税と、物価上昇の関係である。実は本当は入り組んでいない。日銀の異次元緩和が目標とした2%のインフレ目標の達成に効果があったかのように言うひとがいるため入り組んで見えるだけだ(前掲図1-2)

■2.4:1995年から通貨の売買が国際金融の中心になったから、失業率低下のための金融緩和をいうフィリップス曲線は、古い通説になって無効になった

 世界の銀行でのドルを相手にした外為(がいため)の取引額は、1日に6.6兆ドル(1000兆円)もある。これは、1か月の売買量ではなく1日ものである(2022年:外為市場)。

 この外為市場の大きさは、
1)国債を売買する債券市場のおよそ10倍、
2)株が売買される株式市場の50倍である。
 米英では1985年から、日本では1995年からの外貨の売買規制がなくなった金融ビッグバンから、金融市場の全体では外為市場が中心になっている。それがまだ認識されていない。

 株価より金利より国債価格より、変動相場制の通貨レートの大きな変化が、金融取引の中心にあって金融と経済の変動をもたらしている。

 金融はファイナンス、会計帳簿の数字である過去のマネーでなく、未来への運用をすることである。

 ファイナンスでは、運用にせよ借りるにせよ、未来の通貨レートと金利の予想が肝心になる。二軒隣だった知り合いのファンドマネジャーは「お金がお金を生むが下手をすれば(予想をまちがえれば)失う」と言ってた。これがファイナンスである。

 外貨の資本規制があった1995年の37年も前の、しかも金本位のドル基軸(きじく)の固定相場の時代に作られた経済の原則、代表的なものは、中央銀行の金融政策でもっとも重要な、「失業率と金利は反比例するというフィリップス曲線(1958年の学説:FRBが参照している)」は、ドル・ユーロ、ドル・円、ドル・人民元という、通貨レート相互の大きな変動からの、相対的なマネー価値の攪乱(かくらん)によって働かなくなっている。

 1973年からの変動相場制と、1995年からの外貨売買の自由化(=資本の自由化ともいう)のあとは、外為市場で買いが増えレートが上がった通貨は、通貨価値が増えたようになる。

 売りが多くレートが下がった通貨は、通貨価値が減ったようになるからだ。通貨価値とは、国際市場の原油を含む国際商品の購買力である。
(フィリップス曲線への肯定的なスタンスを示す日銀論文)
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2020/data/rev20j03.pdf

 米ドルが上がることは、海外からのドル買いが増えて、米国に世界のマネー価値が集まってきたことだ。逆にドルのレートが下がることは、米国からドルがもっていたマネー価値(商品と証券の購買力)が、ドルを売った海外に逃げることである。
 通貨のレートが下がるとき、その通貨のもつ通貨価値(世界の商品・証券・不動産を買うことのできる購買力)は下がる。通貨レートが上がるときは、逆である。

 ここから、海外生産が増えた変動相場の世界では、自国を豊かにするには、通貨の価値(国際購買力)を上げる自国通貨のレートを上げることを目的にした金融政策をとらねばならないことになる。

 ところが、政治と中央銀行の政策の根拠である1980年代までの通説は、金融ビッグバンの前の外貨の取引規制があった時代のものであって、その後29年も「フィリップス曲線の学説」は、通貨レート(通貨の相対価値)の変動をいれたものには、更新されていない。

 たとえば、ある国がGDPに対する金融緩和(マネー増発と利下げ)を、米国より大きくして、自国の通貨レートを下げたとする。これが、日銀の異次元緩和(500兆円の通貨増発)と、政府の、コロナ・パンデミックへの対策の100兆円の財政出動だった。

 11年間のゼロ金利と通貨増発のため、円のレートは1ドル80円(2012年)からピークでは162円(7月11日)、現在では150円あたりに下がっている(円安はドルが上がったこと)。2012年にたいして、約2倍の円安になっている。1万円の円の通貨価値は、ドルに対して1/2に下がっている。

 世界のどの国も、行ったことのないスケールの超金融緩和(まさに異次元)によって、フィリップス曲線の効果が大きく出て、日本の実質GDPが増えて賃金が大きく上がっただろうか?

■2-5:日本の雇用環境と雇用文化では、フィリップス曲線が働きにくい

 失業率が2.5%(24年8月:総務省)くらいであって、レイオフは少なく、およそ3%以下の完全雇用を続ける日本では、賃金が上がることが、海外の国の失業率が下がることに等しい。

 日本では40%にも増えた時間賃金の低い非正規雇用の労働慣行があって、「同一労働・同一賃金の原則」が米・欧・中のようには普及していないからである。米欧では、日本風の正社員と非正規雇用という区分はなく、同一労働・同一賃金に近い。従って、米欧の企業の不況対策と業績悪化への対策は雇用を減らすレイオフになる。

 長期雇用の慣習がある日本の企業の不況対策は、米国のようなレイオフ(失業の増加)でなく、非正規雇用の割合を増やすこと(失業率は増えない)で行われる。日本では、正規雇用の賃金の、上昇率が2%台しかないという低さと、非正規雇用の時間賃金が正社員の1/2と低いことが問題である。

 通貨について原理的にいえば、GDPが伸びないときは、中央銀行がいくら通貨を増発しても、通貨1単位の価値で買うことのできる価値(世界の商品、証券、不動産を買う力)は、増えない。逆に、「おなじ実質GDP÷増えた通貨の金額=1単位の通貨価値」は下がる。
 これが世界の外為市場での、増発された通貨の相対的な価値低下つまり通貨レートの下落である。ここから異次元緩和の大実験は、日銀が目的とした効果は生まなかった。ややこしい話ではあるが、
1)雇用慣習の違いと
2)正社員と非正規雇用の時間賃金の格差が、日本の金融政策を攪乱(かくらん)させている。

 経済学は、米国発であり日本発ではないことも、外貨の取引が巨大になったあとの、つまりマネーが先に国際化したあとの、金融・経済の問題を複雑にしている。

 原理論が続いた。実験ができず、実証のない理論の経済学に、とりわけ多いのが過去の経済制度、体制、習慣、ひとびとの行動様式、社会の空気のなかで作られた通説である。

 実証がある医学でも、学派があるため、通説(つうせつ)は間違う。
 このため、固定相場の時代の、マネー価値の数量説(すうりょうせつ)に基づいていた異次元緩和は、目的だった成果、2%の安定的インフレと、3%の名目GDP成長の達成において失敗した。

 貨幣数量説では、取引に必要な貨幣の量は、貨幣の供給量に貨幣の流通速度(=預金の回転率)を掛けたものに等しいとされる。古典派の米経済学者フィッシャーの交換方程式「物価の上昇(P)×生産量増加(T)=貨幣数量の増加(M)×貨幣流通速度は一定(V)」で表される。

 しかし、現在の、変動相場制のなかの信用通貨では、中央銀行が貨幣数量説を信奉して通貨量を増やせば、通貨総量の価値が高まるものではない。

 逆に、日本の異次元緩和のようにGDPに対して大きすぎる通貨の増発は、外為市場で売られ、海外に逃げて通貨価値は下がるから、マネーの一国経済を前提にした通貨の増発だけでは、その国の物価と景気と賃金は上がらない。

GDP(商品の生産と需要)にはいらない、株価と不動産の資産価格を上げるだけである。

 図1-4に、2013年4月からの異次元緩和から2024年の、4大通貨に対する円の実効レートの図を示す。その国のGDPに対する増発率が大きな通貨が、通貨価値を下げるという通貨原理が一目瞭然だろう。(4大通貨の実効レート:2010年=100)
https://honkawa2.sakura.ne.jp/5072.html

1)1970から2010年までの40年、大きくいえば、円高、ドル安時代だった。

2)これが大転換したのは、2013年の日の異次元緩和500兆円からだった。異次元緩和でのマネー増発は、円の3大通貨に対する相対価値を100から55まで45%下げている。

3)米国でも08年のリーマン危機以降、ドルの増刷があった。しかし、米国のGDPに対するドルの増刷率は、日本円のGDPに対する増発率より小さかったため、円に対してドルレートは100から130に上がった。

ここから通貨レートは、GDPに対する増発率の大小に比例して、変動するという原理が導かれる
           *

【後記】
いかがでしたか。書籍の、約20ページ分です。
ご意見、ご感想、ご指摘を切望しています。

高校生が理解できることが、記述の目標ですが、まだ難しいでしょう。金融用語、経済用語・・・

◎実は、ここに書いた、金融ビッグバン後の、貨幣数量説(MV=PT)と、失業率低下と金融緩和の相関を示す「フィリップス曲線」が日本では、非正規雇用40%のため無効になっているということは、経済学の新説になるでしょう。
ここは難しかったでしょうか。


【プレミアム読者アンケート&感想の、項目のメド】

1.内容は、興味がもてますか?
2.理解は、進みましたか?
3.疑問な点は、ありますか?
4.その他、感想、希望テーマ等
5.差し支えない範囲で、横顔情報があると、テーマ設定と記述の際的確に書くための、参考になります。

気軽に送信してください。感想は、励みと参考になり、うれしく読んでいます。質問やご要望には、可能なかぎり回答をするか、あとの記事・論考に反映させるよう努めます。

読者の感想・意見・疑問・質問は、考えを広げるのに役立ちます。

著者のメールアドレス:yoshida@cool-knowledge.com


本ウェブマガジンに対するご意見、ご感想は、このメールアドレス宛てにお送りください。


配信記事は、マイページから閲覧、再送することができます。

マイページ:https://foomii.com/mypage/


【ディスクレーマー】

ウェブマガジンは法律上の著作物であり、著作権法によって保護されています。

本著作物を無断で使用すること(複写、複製、転載、再販売など)は法律上禁じられています。


■ サービスの利用方法や購読料の請求に関するお問い合わせはこちら

https://letter.foomii.com/forms/contact/

■ よくあるご質問(ヘルプ)

https://foomii.com/information/help

■ 配信停止はこちらから:https://foomii.com/mypage/



今月発行済みのマガジン

ここ半年のバックナンバー

2026年のバックナンバー

2025年のバックナンバー

2024年のバックナンバー

2023年のバックナンバー

2022年のバックナンバー

2021年のバックナンバー

2020年のバックナンバー

2019年のバックナンバー

2018年のバックナンバー

2017年のバックナンバー

2016年のバックナンバー

2015年のバックナンバー

2014年のバックナンバー

2013年のバックナンバー

2012年のバックナンバー

2011年のバックナンバー

2010年のバックナンバー

このマガジンを読んでいる人はこんな本をチェックしています

月途中からのご利用について

月途中からサービス利用を開始された場合も、その月に配信されたウェブマガジンのすべての記事を読むことができます。2026年5月19日に利用を開始した場合、2026年5月1日~19日に配信されたウェブマガジンが届きます。

利用開始月(今月/来月)について

利用開始月を選択することができます。「今月」を選択した場合、月の途中でもすぐに利用を開始することができます。「来月」を選択した場合、2026年6月1日から利用を開始することができます。

お支払方法

クレジットカード、銀行振込、コンビニ決済、d払い、auかんたん決済、ソフトバンクまとめて支払いをご利用いただけます。

クレジットカードでの購読の場合、次のカードブランドが利用できます。

VISA Master JCB AMEX

キャリア決済での購読の場合、次のサービスが利用できます。

docomo au softbank

銀行振込での購読の場合、振込先(弊社口座)は以下の銀行になります。

ゆうちょ銀行 楽天銀行

解約について

クレジットカード決済によるご利用の場合、解約申請をされるまで、継続してサービスをご利用いただくことができます。ご利用は月単位となり、解約申請をした月の末日にて解約となります。解約申請は、マイページからお申し込みください。

銀行振込、コンビニ決済等の前払いによるご利用の場合、お申し込みいただいた利用期間の最終日をもって解約となります。利用期間を延長することにより、継続してサービスを利用することができます。

購読する