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「新人が潜水艦乗組員になるまで (潜水艦訓練隊)」 の後編です。
https://foomii.com/publisher/delivery/00298/toarticle/id/128310
【潜水艦訓練隊から、部隊配属へ】
潜水艦乗組員はまずは教育隊を就業したあと、選抜され潜水艦訓練隊に入ります。教育隊の後、さらに半年ほどの潜水艦訓練隊で勉強し、就業した後にやっと部隊配属され、実習員となる。潜水艦の部隊は第1潜水隊群(呉市)と第2潜水隊群(横須賀)の2つしかなく、どちらかの配属になる。横須賀に配属されると新しい潜水艦待機所があり、地域手当もある。艦艇勤務の隊員は営内・隊舎はない。
実は彼らの住居は法律上、船の中に指定されている。だから、一般の自衛隊員は隊士や結婚前の3曹は隊舎の中に生活しなくてはならないが、その隊舎がない。それではあまりに可哀そうだからと、上陸した時は「下宿」を取ることが許されている。この下宿は好きで借りているものだから、住宅手当はでない。(特別に下宿の距離等の条件が合う場合は住宅手当が得られる場合もある。)
この結果、賃貸住宅費用が高い横須賀勤務の艦艇乗組員は、数人で住宅を借りるしかない。「父兄から自衛隊は住居費無料じゃなかったのか?」と疑問の声がある。
特に新型コロナ禍で下宿は数人で借りることを許されなくなり、一人一室でないと許可できないというような話が出た時には、あの給料で高騰する賃貸住宅を借りることはできない。船の中だけで生活しろと言うのか?という嘆きの声を多数聞いた。
入隊時に広報官から、大まかに「入隊後は隊舎での集団生活になります。食費や住居費はかかりません。」という説明を受けていた隊員達はそれが嘘だと言うことに憤り、辞めていく。
広報官からすると、「艦艇勤務のような特別な部署には隊舎が用意されていないだけだ」ということになる。他は隊舎があるのだから、一部の問題は仕方がないということだ。
海上自衛隊の艦艇勤務だけは「居住場所は船内の船室になります。自由が欲しい場合は下宿を自腹でもつことになり、費用は全額負担となりますからご注意ください。」と海上自衛隊志望者には説明する必要がある。それを怠ったことが問題だ。入隊させればノルマクリアだが、知らずに入隊してしまったあ新人にとっては、大切な新卒採用を台無しにされたことになる。
これもまた海上自衛隊からの中途退職者が多い理由となる。
(自衛隊法施行規則 第六節 居住場所)
せっかくだから、法律の説明もしておこう。
https://laws.e-gov.go.jp/law/329M50000002040#Mp-Ch_3-Se_6
〇自衛隊法第五十五条第一項(指定場所に居住する義務)
「自衛官は、防衛省令で定めるところに従い、防衛大臣が指定する場所に居住しなければならない。」
〇自衛隊法施行規則 第六節 居住場所
(自衛官の営舎内居住義務)
第五十一条陸曹長、海曹長又は空曹長以下の自衛官(次条の規定により船舶内に居住すべき者を除く。)は、防衛大臣の指定する集団的居住場所(以下「営舎」という。)に居住しなければならない。ただし、防衛大臣の定めるところに従い、防衛大臣の指定する者の許可を受けた者は、営舎外に居住することができる。
(参議院 請願サイトより)
自衛官守る会は現在の「緊急出動のある自衛官の官舎の改善を求める請願」を出す前に2014年に1度だけ、「海上自衛隊の住環境の整備に関する請願」を国会に提出したことがある。この請願内容では範囲が狭すぎるため、現在の全自衛隊員の居住環境についての請願に趣旨を変えて現在まで続いている。