… … …(記事全文4,382文字)2025年1月26日(日)、X(旧ツイッター)で20時34分から「taroちゃん(ダーチャ男子)」というアカウントをホストに、「ゆうこく連合・村上先生の本音」というタイトルのスペース(音声配信サービス)が行われた。「mRNAワクチン中止を求める国民連合」(以下、国民連合)副代表の村上康文氏(東京理科大学名誉教授)の話に、アシスタント的役割の女性が合いの手を入れ、時々藤川賢治氏(医療統計情報通信研究所所長)も加わるかたちで、話は約1時間25分にも及んだ。
わたしは、ある人からこのスペースのことを知り、録音を最初から最後まで聴かせてもらった。名指しを避けつつもわたし以外には考えにくいジャーナリストや、国民連合に批判的な研究者たちに対する非難のオンパレードだったが、率直に言ってとても面白く聴かせていただいた。まず、スペースのホストと出演者の方々に言いたいのは、このスペースの録音は絶対に消さないでほしい。もし裁判になったとしても、わたしに有利な証拠となるからだ。
お互いを批判し合ったとしても、「事実」に基づいた建設的な議論は大いにするべきだ。もちろん、わたしに対する批判も甘んじて受けなくてはならない。しかし、村上氏の発言は事実に基づかない「憶測」が多かった。以下、そのいくつかについて指摘していきたいが、まずは昨年(2024年)11月29日に、国民連合が厚生労働省の会見室で「日本先進医療臨床研究会」と共同で実施すると発表した、IgG4抗体検査を用いた「免疫低下実態調査プロジェクト」(以下、調査プロジェクト)をめぐってだ。
村上氏が言うには、実は、この調査プロジェクトは昨年(2024年)、大阪府の泉大津市と共同で実施する予定だったのだが、何者かによって「妨害」されて、中止になったというのだ。以下、スペースでのこれに該当する村上氏の発言内容を抜き出してみる。
「昨年もやったんだけど、これ妨害されたんだよね。IgG4の調査の妨害で、南出さんって知ってますよね、泉大津市長。それで我々(2024年)2月21日の日にメディア集めて発表会しようとしたわけよ。そのときに、電話電話、南出さんに電話とメールが山のように来たんだよね。妨害の電話ですよ。その経緯を言うと、またいろいろ問題あるから今回はあれだけど、やっぱり邪魔してる集団がね、やっぱりその集団は、本音ではメッセンジャー型ワクチンを推進したい人たち。」
これを聞いて、わたしは驚いた。本当にそんな「妨害」と言えるような行為があったのだろうか。そこで、泉大津市の南出賢一市長ご本人に「事実」を確認するため、25年1月27日の朝、XのDMで連絡を取った。すると、その日の夕方にご本人から電話がかかってきた。その時に南出市長が話したのが、以下の内容だ。
「電話とメールが山のようにかかって来たということはありません。日本先進医療臨床研究会さんと話を進めていたのですが、当初の話と内容が二転三転してきたため、進めることはできないと判断しました。誰かの影響で中止したということはありません」(南出市長本人にコメントの内容も確認済み)。
この南出市長のコメントを見れば明らかな通り、村上氏の発言は南出市長の話とは異なるのだ。百歩譲って誰かから電話やメールが来て、「この調査プロジェクトは問題だ」と指摘する人がいたのだとしても、それが原因で調査が中止になったのではない。「妨害」があったからではなく、この調査の交渉の窓口となっていた日本先進医療臨床研究会に問題があったので、中止の判断を下したというのが、南出市長の認識なのだ。
このスペースは、2025年1月31日現在で、1万人がリスニング/プレイしている。こんなにも不特定多数の人々に「一方的な思い込みの話」を広めたのだ。村上氏の話を聞いて、あたかもわたしを含む村上氏の批判者たちが、泉大津市での調査プロジェクトの「妨害」工作を行ったかのような印象を持った人もいただろう。わたしたちだけでなく、泉大津市および南出市長にも、妨害に屈したかのような誤った印象を与えた。村上氏は謝罪して、発言を訂正するべきだ。
購読するとすべてのコメントが読み放題!
購読申込はこちら
購読中の方は、こちらからログイン