… … …(記事全文4,990文字)少し前に、ある医師から興味深い話を聞いた。最近、その医師が旅行でベトナムに行ったというのだ。ベトナムといえば、この秋から本格使用されるMeiji Seikaファルマのレプリコンワクチン「コスタイベ筋注用」の大規模臨床試験が実施された国だ。デルタ株流行期間中、16施設、約1万6000人が被験者となり、約8000人に本物のレプリコンワクチンが投与された。
レプリコンは、体内で自己増殖したmRNAがエクソソーム等に包まれて接種者の体から飛び出し、非接種者にも伝播してしまうと恐れられている。それに留まらず、次々に伝播が広がって多数の犠牲者が生まれ、日本列島が他国から封鎖されてしまうという、おどろおどろしい話まで出ている。もしそれが本当なら、ベトナムで正体不明の病気が流行り、社会が混乱するような、悲惨なことが起っているかもしれない。
そこで、ベトナムの状況がどうだったのか、その医師にたずねてみた。そしたら「みなさん普通に生活してましたね~」という返事だった。ちなみにその医師は、ゴリゴリのコロナワクチン反対派だ。その彼をもってしても、ベトナムでの異変は感じられなかったのだ。
もちろん、個人の印象だけで、何も起こっていないとは断言できない。もしかするとベトナムのどこかで正体不明の病気が流行っているのかもしれない。その被害の実態をベトナム政府が隠しているのかもしれない。人々が気づいていないだけで静かに伝播が広がっており、これから悲惨なことが起こるのかもしれない。あるいは、本物を打った人が約8000人と少なかったから伝播が広がらなかっただけで、日本で何十、何百万人と打てば、被害が拡大するのかもしれない──。
だが、少なくともベトナムでは、以前と変わらない暮らしが続いているのが現実のようだ。そして、いまも世界中の多くの人々が、毎日ベトナムを行き来している。もしレプリコンがどんどん伝播するなら、すでに世界中に広がり、日本人もタダではすまないはずだ。ベトナムに旅行したあの医師もレプリコンに感染し、国内に持ち込んでしまったかもしれない。だがいまのところ、ご本人やまわりに異変があったという話は聞いていない。ベトナムの国境も封鎖されていない。
さらに言えば、Meiji Seikファルマのレプリコンはベトナムだけでなく、米国、シンガポール、南アフリカ、そして日本国内でも臨床試験が実施済みだ(厚生労働省医薬局医薬品審査管理課「コスタイベ筋注用」審議結果報告書令和5年11月28日)。別のメーカーのものだが、インドでは2022年6月にレプリコンワクチンが規制当局の承認を受け、一般向けの接種も行われている(K-Kazumi TanikawaさんのXの投稿/2024年6月20日を参照)。
これらの国々でも、レプリコンの伝播が問題となっているという話をわたしは聞いたことがない。だから「ない」とは断言できないが、もし伝播が問題ならば、自分たちにも被害が及ぶ危険性のある臨床試験や実戦投入を、各国政府の権力者たちが許すだろうか。特権階級だけが使える解毒剤でもあるのなら別だけれども──。
「レプリコンの伝播などあり得ない」と断言することは誰にもできない。「可能性としてあり得る限り、警鐘を鳴らすべきだ」という意見も理解はできる。だが、現実としてレプリコンの臨床試験が行われた国々で異変が起こっている事実を見出すことができないうえに、mRNAワクチンに反対しながらもレプリコンの「伝播」には懐疑的な研究者が複数いる。したがって我々はいたずらに不安になるべきではないし、恐怖を煽るのはよくない。冷静に伝えないと、ただでさえトンデモとレッテルを貼られている「反ワクチン」の印象をますます悪くしてしまう。
それに、これがもっとも大事な点だが、今年10月からの定期接種で使われる予定のコロナワクチンは、レプリコンだけではないのだ。むしろ、全体の市場に占めるレプリコンのシェアは限られると予想される。というのも、現時点でファイザー(mRNA)、モデルナ(mRNA)、第一三共(mRNA)、武田薬品(組み換え)、そしてMeiji Seikaファルマ(レプリコン)の5社が、秋からの参入を表明しているからだ。そして、この中で、もっとも息巻いているのが、実は「ファイザー」なのだ。
2024年7月19日、医薬経済の業界紙「RISFAX」(会員限定)に、こんなタイトルの記事が載った。
「ファイザー『巨額目標』達成に向け猛進 コロナワクチン 返品ありきで“詰め込み”、定期接種見据え陣地確保」
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