Foomii(フーミー)

X(ツイッター)では言えない本音

鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

#50 医療は安心を与えるためにある ~「不安マーケティング」に踊らされるな~

「レプリコンの接種が始まったら、いよいよ私の人生も終わりかなと思って不安です。『打たないで』と言っても、母は打ってしまうと思いますし……」

 

ある会合で、参加者の女性がわたしに語ってくれた言葉だ。彼女だけではない。同じようにレプリコンワクチン(以下、レプリコン)の伝播で被害を受けるのではないかと不安がる人びとの話を、わたしはワクチン後遺症患者をサポートしている医療者や研究者などから、何度か耳にした。

 

レプリコン伝播の危険性がどの程度あり得るのか、ワクチン学やウイルス学の研究者ではないわたしには判断がつかない。もちろん、わたしも未知のことだらけのレプリコンには大反対だ。もとより、未曽有の薬害を出しているコロナワクチンの接種自体を「すべて中止すべきだ」と言い続けてきた。だから、レプリコンに反対すること自体に反対しているわけではない。

 

しかし、レプリコンの危険性を訴えるためだとしても、起るのか起こらないのか分からない未知のリスクに基づいて、一般の人たちをむやみに怖がらせるやり方が正しいとは、わたしには思えない。事実、冒頭の女性のように、どうしたらいいか分からずに、不安に感じている一般の人がいるからだ。(レプリコンをめぐる現状については、当ウェブマガジンの前号の記事を読んでほしい)。

 

先日、X(旧ツイッター)で「レプリコンを接種した人の受診はお断り」と発信している医師の投稿も見た。これではますます、一般の人のレプリコンに対する恐怖を煽るだけだ。もしレプリコン伝播を極めて危険だと考えていたとしても、医師であるならば接種者であろうと非接種者であろうと平等に診るべきだ。もっと言えば、コロナワクチンに反対しているからこそ、知らずに接種した被害者たちを見捨てず救ってほしい。

 

他の患者やスタッフへのレプリコン伝播が心配だというなら、「発熱外来」で行われているのと同様に、受診の時間や動線を分ける、PPE(感染防護服)を着るなどの対策もできるはずだ。「危ないものをまき散らす患者は診ない」と言ってしまったら、新型コロナ陽性患者の診療を拒否して医療逼迫を起こした愚かな医師たちと同じ穴の貉になってしまう。それでは、コロナ騒ぎを批判してきた者同士としてあまりにも悲しい。

 

レプリコン伝播を本気で心配しているのならば、研究者や医師はそのリスクがどの程度あり得るかを、冷静に検証して伝えてほしい。そして、科学的知見に基づいて、伝播を防ぐ方法や、体に異変が起こった場合の対処法などについて、適切な情報を発信してほしい。ただし情報発信を行うにしても、自分たちのビジネスや政治的思惑のために、レプリコン伝播に不安を感じている人たちを利用することはやめてほしい。それについて、わたしは釘を刺しておきたい。

 

「不安マーケティング」という言葉をご存じだろうか。人びとの不安を煽ることで、消費者の中に「不安を打ち消したい」という「ニーズ(欲求)」を作り出し、その解決策として商品を買わせようとする販売促進策のことだ。

 

この手法を利用した典型的な例が、殺菌成分入りのハンドソープやキッチン用洗剤のテレビCMだ。多くの人は手が汚れていたとしても、流水で洗って見た目にキレイになれば、それ以上気にすることはあまりない。まな板も一般的な食器洗い洗剤で洗うか、せいぜい定期的に漂白剤などを使うくらいだろう。

 

だが、こうしたCMでは、手のひらやまな板の上にバイキンがウヨウヨうごめいている様子をCG(コンピュータ・グラフィック)で描き、その怖さをわざと強調する。そうすることで、殺菌しなければ「赤ちゃんやお年寄りにバイキンをうつすかもしれない」「食中毒を起こしてしまうかもしれない」と不安を煽るわけだ。そして、その不安を打ち消すのに、「この殺菌成分入りの商品を使うといいですよ」と消費者に提示する。

 

つまり、人びとの不安に火をつけて、それを利用してモノを売ろうとするのが、不安マーケティングなのだ。まさに「マッチポンプ(自分で起こした揉め事の収拾を持ちかけて、利を得ようとすること)」だ。このマッチポンプ的な手法が、マーケティングの業界では定番の販売促進戦略として、意識的に使われてきた。人間は不安になると判断力が落ちる。その心理を巧みに利用した方法であることを、わたしたちは知っておいたほうがいい。

 

実はこの手法は、モノを売るためだけでなく、人びとを動かすのにも使われてきた。そう、コロナ騒ぎで人びとを感染対策へ誘導するために政府が行ったもの、不安マーケティングだ。スーパーコンピューター「富岳」が描く飛沫・エアロゾル飛散のCGを見て、他人の吐く息が怖くなり、マスクをますます外せなくなった人も多いのではないだろうか。

 

さらに言えば、医薬産業そのものが、不安マーケティングの上に成り立っている。たとえば、健康診断だ。定期的に検査を受ければ寿命が延びるというエビデンス(科学的証拠)は、実は存在しない。国際的な医学プロジェクトで、さまざまな治療や検査のエビデンスについて最高レベルの科学的な検証を行っている「コクランレビュー」にも、次のように書かれている(日本語版コクランライブラリ「病気と死亡を低下させるための総合健診」2019年1月30日より一部抜粋)

 

… … …(記事全文5,031文字)
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