Foomii(フーミー)

X(ツイッター)では言えない本音

鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

ジャーナリズムよ、医学医療の横暴を監視せよ ~「河北新報」武田記者のコラムに寄せて~

X(旧ツイッター)で、2024年3月18日付の河北新報に載ったコラム(記者ログ)が話題となった。コロナワクチン被害の報道について書いたものだ。

 

「『反ワクチン派』『陰謀論者』などの誹謗(ひぼう)中傷が怖いのか、多くのメディアは被害者や遺族の訴えをほぼ無視している」

「異物が混入した食品なら即座に回収される日本で、この薬に関しては『安全性が確認されるまで使用を控えよう』との声に耳を貸す人は少ない」

「戦後の主な薬害の歴史も書籍でおさらいした。公的な認定が出るまで薬は市中に出回り、当事者たちは就業困難や詐病扱いで苦しい立場に。構図はそっくりだ」

「コロナワクチンの接種後、親族が亡くなった、寝たきりになり仕事や学校を諦めた…。『実態を報じて』という訴えは今も届く」

 

至極まっとうな意見だ。書いたのは報道部の武田俊郎記者。コロナワクチンの健康被害を精力的に取材し、被害救済を訴える記事を継続的に書いてきた。ほとんどの大手メディアがこの問題に及び腰の中、CBC(中部日本放送)テレビの大石邦彦論説委員や、サンテレビの藤岡勇貴キャスターらとともに、「社会の木鐸」としての気骨を持ったジャーナリストの一人だと思う。

 

河北新報は主に宮城県を中心とする東北地方で、およそ40万近い購読数を誇る日本有数のブロック紙の一つだ。明治30(1987)年創刊という長い伝統もある新聞に、コロナワクチンの健康被害を伝える記事が載り続けてきたことの意義は大きい。さらにはインターネットの時代となり、地方からの発信であったとしても、瞬く間に全国に拡散されるようになった。武田記者の記事やコラムも、Xなどで多くの人が目にしたことだろう。

 

ただ一方で、コロナワクチンの被害について書いた、こんな小さなコラムですら賞賛される現状にあることを、ジャーナリストを自認してきた私としては、とても悲しく思う。ジャーナリズムの観点からすれば、武田記者が書いていることは至極まっとうであると同時に、至極当たり前のことだからだ。

 

私は1989年3月に同志社大学文学部社会学科新聞学専攻(現・社会学部メディア学科)を卒業した。まさしく「ジャーナリズム」を学ぶために入ったのだが、そこで覚えたことの一つが、権力の横暴を監視して、社会に警鐘を鳴らすのがジャーナリズムの役割ということだ。権力は監視されなければ、必ず腐敗、暴走する。

 

太平洋戦争中、米軍とのミッドウェイ海戦(1942年6月5日~同年6月7日)、そして連合国軍とのガダルカナルの戦い(1942年8月7日~43年2月7日)で日本軍は大敗し、戦況は一気に不利に転じた。ところが軍部は、被害を過小に伝える虚偽の発表を繰り返し、戦意を高揚し続けた。NHKラジオ、そして朝日新聞、毎日新聞、読売新聞など各紙も大本営発表そのまま垂れ流し、無益な戦争の継続に加担した。それによって、第二次世界大戦において、日本人だけで310万人と言われる多くの命が失われた。

 

日本の戦後ジャーナリズムは、その猛省の上に築かれてきたはずだった。有名なのが、上層部の総辞職にともない1945年11月7日に掲載された朝日新聞の「国民と共に立たん」という社説だ。ヨーロッパ総局長、朝日新聞論説主幹などを歴任した有名な記者・森恭三が執筆した。

 

「今回村山社長、上野取締役会長以下全重役、および編集総長、同局長、論説両主幹が総辞職するに至つたのは、開戰より戰時中を通じ、幾多の制約があつたとはいへ、眞実の報道、厳正なる批判の重責を十分に果たしえず、 またこの制約打破に微力、ついに敗戦にいたり、國民をして事態の進展に無知なるまゝ今日の窮境に陥らしめた罪を天下に謝せんがためである」


この論説で朝日新聞は、真実を国民に伝えなかったために日本国を敗戦に至らしめ、国民を窮境に追いやった「戦争責任」が報道機関にもあることを認めたのだ。


ちなみに森氏は、全共闘時代の学生たちに愛読された週刊誌「朝日ジャーナル」の巻頭言の執筆も長年にわたって担当したそうだ。私自身も学生時代、テレビのニュースキャスターとして有名だった筑紫哲也が編集長を務めた時代の同誌をずっと愛読していた。少なくとも私が学生の頃までは、「あの愚かな戦争を繰り返してはならない」「権力の暴走を監視するのが我々の役割だ」という矜持が、ジャーナリズムには満ちていた。

 

しかし、そうしたジャーナリズム精神がすっかり失われてしまったことを、このコロナ騒ぎで痛感した。コロナワクチンの報道で、大本営発表を無批判に垂れ流した戦前の歴史が繰り返されたと思うのは、私だけではあるまい。政府・厚労省、医学医療界が言う「正しい情報」ばかりが垂れ流され、コロナワクチンに警鐘を鳴らした医師・研究者の声は、大手メディアでは実質的に封殺された。その結果、多くの人がコロナワクチンの健康被害に苦しむこととなった。

 

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