Foomii(フーミー)

X(ツイッター)では言えない本音

鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

子どもたちを「消毒液」と「マスク」の呪縛から解放せよ ~いつまで過剰な感染対策を強いる気か~

この年末、X(旧ツイッター)に、こんな投稿が流れてきた。声出しの自粛やマスク着用など、ライブハウスでの厳しい感染対策を求めるガイドラインをつくり、X上で物議をかもした阿部健太郎氏(一般社団法 日本音楽会場協会 代表理事)が代表の一人となって、「子どもを感染症から守る会」なる団体が設立されたというのだ(阿部氏の肩書について、ご本人から「一般社団法人」の加筆等を求める依頼がありましたので、修正しました)。


(注:この文章執筆の際、私のXのアカウントは阿部健太郎氏にブロックされているとの認識でした。しかし、阿部氏から「ブロックはしていない」旨の指摘がありました。2024年1月4日時点で、ブロックされていないのは事実ですので、元の「ブロックされている」旨の文は削除し、訂正いたします)。

 

「設立趣意書」を見ると、この団体は、マスク着用をはじめとする感染対策が緩められたことに危機感を覚えているらしい。文科省の「児童生徒のマスク着用は不要」「マスクを外して学校生活を送る」という平時向けの指針が強く浸透した結果、感染流行時や有症状時にマスク着用を促すことが難しくなっているうえに、「行き過ぎた脱マスクの風潮が見られる」と警鐘を鳴らしている。

 

オミクロン株以降、子どもの感染・重症・死亡・コロナ後遺症の事例が増えたことや、教職員の同時罹患による現場からの離脱・離職といったリスクも無視できないとし、「感染症に強い学校」の実現を求めて、政治と行政に働きかけていくという。

 

私がげんなりするのは、この団体の賛同者に大津秀一氏(早期緩和ケアクリニック院長)、岡秀昭氏(埼玉医科大学感染制御科教授)、おじま紘平氏(東京都議会議員)、川上浩一氏(国立遺伝学研究所教授)、木下喬弘氏(株式会社MeDiCU代表取締役)、白石淳氏(亀田総合病院救命救急科)、中村幸嗣氏(石本病院院長 危機管理血液内科医)など、X等で徹底した感染対策やワクチン接種を強く推奨してきた人物たちが、こぞって賛同者になっていることだ。

 

彼らの意に反して、コロナ自粛やコロナワクチンによって、新型コロナの流行を抑えることは残念ながらできなかった。それどころか、日本人の死者が異様に増加してしまい、ワクチンで前代未聞の健康被害が起こってしまった。何度でも書くが、コロナワクチンによる予防接種健康被害救済制度の申請(進達受理)件数は9752件、うち認定数は5603件(死亡認定420件)にも達している(令和5年12月25日審議分まで)。これは過去45年間24種類のワクチンで認定された3522件(死亡認定151件)を優に超える数だ。

 

これを「薬害」と言わずしてなんという。こうした事態を総括・猛省しないまま、子どもの感染症対策にまで口を出そうとする姿勢には、ほんとうに呆れるばかりだ。心の底から、「やめてくれ」と言いたい。

 

この人たちの頭に決定的に欠けているのは、物事には「プラス」と「マイナス」の両面があるのを分かっていないことだ。親として、子どもが流行病にかからないのを願うのは当然のことだ。高熱を出してぐったりした我が子を見れば、「脳がやられないか」「死んだりしないか」と、心配でたまらなくなる気持ちはよくわかる。私も親として、同じ気持ちを何度も味わった。しかし、だからといって、ウイルスや細菌から子どもたちを徹底的に遠ざけようとすることが、絶対に正しいとは言えないはずだ。

 

我々は人工的なワクチンでは対応しきれない、数えきれないほどの病原体と接することで、免疫を鍛え上げてきた。病原体に感染して克服することは、天然のワクチンを打っているのと同じだ。逆に、感染の機会が減るということは、免疫を鍛えるチャンスを逃すことになる。そんなナイーブな状態のまま大人になり、年をとってしまったら、かえって感染症に弱くなってしまわないか。

 

コロナ騒ぎが始まってから、バスに乗り込むときや教室に入る前に、決まって小さな手に消毒液を吹きかける保育園や幼稚園が増えた。だが、我々と共生している「腸内細菌叢」は、3歳くらいまでにその人固有の構成か決まるという。そして、腸内細菌叢の構成は、生涯にわたって、ほどんど変わらないのだそうだ。腸内細菌叢には、外敵から守ったり、消化を助けたり、免疫を調整したり、その人の体質(太りやすさなど)やメンタルにも影響することが分かり始めている。それなのに、細菌を殺す消毒液ばかり吹きかけて、子どもたちの腸内細菌叢に悪影響はないのだろうか。

 

それに、手指をはじめ我々の皮膚には常在菌が棲んでおり、病原体の増殖・侵入を抑えてくれている。消毒液を吹きかけ続けて、常在菌に悪影響は及ぼさないだろうか。消毒液に弱い菌ばかりが死滅し、消毒液に強い耐性菌だけが増殖する危険性だってある。そうなったら、消毒液で肌荒れさせて、悪い菌ばかりを増やしていることになりかねない。

 

アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの増加は、乳幼児期に清潔にしすぎたことが原因だという説もある。「衛生仮説」といい、賛否両論あるが、もしそれが正しければ、今後、アレルギー疾患に苦しむ人たちが増えてしまうかもしれない。小さな手に消毒液を吹きかけ続けている人たちは、そのようなことまで考えているだろうか。

 

… … …(記事全文4,845文字)
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