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吉富有治の魔境探訪 - 政治という摩訶不思議を大阪から眺める

吉富有治(ジャーナリスト)

吉富有治

人気も魅力も低迷する大阪・関西万博 ますます高まる失敗の可能性とその予兆

 2025年大阪・関西万博の開幕が、いよいよ約10日後に迫ってきた。大阪で開かれる国際博は1970年の「日本万国博覧会」以来で、じつに55年ぶりとなる。1990年に大阪市鶴見区で開かれた「国際花と緑の博覧会」、通称「花博」は国際博ではなく特別博に分類されるためカウントしていない。ただし、花博は広義の意味での国際博に含まれるので、こちらを入れると35年ぶりの大阪での開幕になる。いずれにしても、何十年ぶりかに大阪で"大イベント"が開かれる。


 その大阪・関西万博(以下、万博)だが、果たして大成功するのか、それとも世紀の大失敗で終わるのか。関西のマスコミ、とくにテレビ局は視聴率と自局の営業にも直結するので万博に対しては概ね好意的な報道を続けている。対して新聞は、万博に肯定的な記事もあれば逆もある。一方、週刊誌は総じて否定的な見方が多い。ただし、各マスコミの報道内容は別として、個々の記者の本音は「失敗に終わるだろう」が多い。私も同感で、世紀の大失敗で幕を閉じると予想している。むろん、それだけの根拠がある。

 

 成否の問題を論じる前に、今回の万博ほど始まる前からケチが付いたイベントも珍しい。最近も万博の公式本「公式ガイドブック」でミスが発覚した。同本に掲載されている「未来社会」を描いたイラストは完成品ではなく、制作途中のものだったのだ。イラストを担当した絵本作家がレイアウトを検討するための見本として編集会社に送ったが、どうしたわけか、それがそのまま完成品として公式本に載ってしまったという。ありえないミスである。


https://www.yomiuri.co.jp/expo2025/20250328-OYT1T50075/


 このような場合、見本を受け取った編集会社はラフな版下を絵本作家に示しながら意見を調整する。意見がまとまれば正式な版下を制作して絵本作家がチェックし、その後に印刷所へ回すのが出版の世界の常識だ。むろん、その過程は万博協会にも報告する。編集会社はそれを怠った可能性が高いが、だとしても万博協会がしっかり管理していれば、このような初歩的なミスは防げただろう。


 公式本の制作と絵本作家との直接のやりとりは編集会社が担当し、万博協会は蚊帳の外だったとしたも、公式ガイドブックの発行元が万博協会である以上、最終的な責任は同協会が負わなければならない。だから今回の問題で万博協会は公式に謝罪したのだ。フリーライターが雑誌に記事を書いたものの、そこに誤報があれば発行元の出版社は謝罪する。情報番組に出演したコメンテーターがデマを飛ばせば、そのコメンテーターだけでなくテレビ局も責任を取る。それほど発行元の責任は重い。


 この問題の責任は編集会社と万博協会の両者にある。ところが協会はすべて下請け任せで、当事者意識はゼロ。万博協会はやること成すこと一事が万事この調子。万博を成功させる気概があるのかさえ疑わしい。


 他にもある。その1つが各パビリオンの建設が総じて遅れていることだ。直近の報道でも、独自設計の「タイプA」を出展する海外パビリオンのうち、5カ国以上が開幕までに内装などが完成しない見通しだという。外装は完成しても内装が途中であれば、そもそも入場ができない。事実、万博開幕の4月13日に来場者を中へ入れないパビリオンが出てきそうな雰囲気であるという。バカ高い入場料を支払っても、「万博の華」と呼ばれる海外パビリオンに入場できなければ、それだけで万博の魅力は半減する。


 ちなみに、タイプAの海外パビリオンは47カ国42棟。そのうち、仮に今日開幕しても間に合うのは13棟だが、13日までには大部分は完成するとのことだ。それでも5カ国以上は間に合わないのは確実な状況だという。

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