… … …(記事全文9,104文字)「NHKから国民を守る党」(以下、N党)の立花孝志党首が14日、東京都内で暴漢に襲われ、大ケガを負う事件が発生した。事件が起こったのは14日の午後5時すぎ。立花は千代田区霞が関の財務省近くの路上で演説し、その後に支持者らと記念撮影に応じていた。そこにナタを隠し持った30代の男が紛れ込み、握手をする振りをして閃光弾を投げつけ、そのあと立花に切りつけた。この事件により立花は、頭など3か所に深さ1センチの切り傷を負ってしまった。
容疑者は宮西詩音という30代の男で、その場に居合わせた人物に取り押さえられ、その後、警察が逮捕した。警察の取調べに対して宮西は、「他の議員を自殺に追い込むようなやつだからやった。立花を殺そうと思い、持っていたナタを振り下ろした。殺意は間違いなくあった」などと供述しているという。本人には「悪い奴には鉄槌を下す」という、"義憤"があったのかもしれない。ただし、その義憤はいびつで屈折しすぎている。
政治家を襲うテロ事件は少なくない。古くは、1936年2月に発生した「2.26事件」がそうだ。この事件では、陸軍青年将校らによって大蔵大臣の高橋是清ら複数の政治家らが殺害された。戦後では1960年10月12日、社会党の浅沼稲次郎社会党委員長が東京・日比谷公会堂で演説中、17歳の右翼少年に刺殺される事件が起こった。
1971年9月21日には、東京都新宿区の公明党本部前で、車から降りた竹入義勝委員長(当時)が暴漢にナイフで腹を刺されて3ヶ月の重傷を負った。1990年1月18日、長崎市長だった本島等が右翼団体幹部に銃撃され、全治1か月の重傷を負う事件が起こった。同じく長崎市長の伊藤一長が2007年4月17日、4選を目指した市長選の最中に元暴力団幹部の男によって至近距離から拳銃で撃たれて亡くなった。2002年10月、民主党の石井紘基衆院議員が東京都世田谷区の自宅前で、右翼団体代表の男に刺されて死亡している。このように、政治家が襲われる事件は決して少なくない。
最近の政治家襲撃事件で思いだされるのは、2022年7月8日に安倍晋三元首相が銃撃されて死亡した事件である。全国各地で参院選の応援演説を行っていた安倍はこの日、奈良県奈良市の大和西大寺駅北口近くで演説をしていた。そこに手製の銃を持った男が安倍を銃撃し、殺害している。2023年4月15日には、和歌山県和歌山市の雑賀崎漁港で選挙演説に駆けつけた岸田文雄首相(当時)が、手製の鉄パイプ爆弾を投げつけられる事件が発生した。幸い、岸田にケガはなかったが、ひとつ間違えれば岸田を含めて大勢の負傷者が出たかもしれない。なお、安倍銃撃事件では、「世界平和統一家庭連合」(旧・統一教会)と自民党との関係が浮き彫りになった。
上に並べた首相経験者や閣僚、自治体トップや国会議員を襲う事件で共通するのは、その背景の多くが思想信条の違いによるものだ。「2.26事件」がその典型であり、社会党の浅沼や長崎市長の本島を襲ったのは右翼思想の持ち主である。なお、公明党の竹入を襲った男は創価学会に恨みがあったと言われており、安倍の銃撃事件も旧・統一教会絡みである。そして、今回の立花が暴漢に襲われた事件だ。こちらは思想的な背景があるというよりは、もっと底の浅い、きわめて短絡的な印象を受ける。
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