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やっぱり地理が好き ~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

宮路秀作(地理講師&コラムニスト)

宮路秀作

やっぱり地理が好き #180:東京大学の入試問題から世界を見る④ 人新世

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やっぱり地理が好き 

~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

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第180号(2024年10月31日発行)、今回のラインアップです。

①世界各国の地理情報

 ~東京大学の入試問題から世界を見る④ 人新世~

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こんにちは。

地理講師&コラムニストの宮路秀作です。

日頃、周りの人たちからは「みやじまん」と呼ばれています。

今回で180回目のメルマガ配信となります。


「これって私に向けられたメッセージかな?」

 

多くの人が経験する感覚ではないでしょうか。読書や音楽を楽しむ中で、ふとしたフレーズが心に響き、自分自身に語りかけられているように感じることがあります。

 

人間の心には、与えられた情報を自分の経験や感情に基づいて解釈し、意味づける傾向があるように思います。この現象は、一方的に情報を受け取るだけではなく、あたかも自分に対して発せられた特別なメッセージであるかのような錯覚を生み出します。わたくしもよくあります。自分勝手ですよね。

 

たとえば、ある歌の歌詞や小説の一文が、まるで今の自分の心情を表現しているかのように感じられることがあります。これは、単なる共感以上に、読者やリスナーがその言葉を「自分のためのメッセージ」として受け取ることで、個人的な意味を見出します。こうした自己投影的な解釈が可能になる背景には、人間の心が、他者の言葉や創作物を通じて自分を再発見する力を持っているからではないでしょうか。

 

しかし、この「自己解釈」には、「光」と「影」が同居していますよね。自分にとって都合の良いように解釈することで、慰めや勇気を得られる一方、逆に物事を歪んだ形で受け取り、誤解を生むこともあるわけです。特に、強い思い入れを持っている場合、その解釈が客観的な視点を失って自分中心の視野に偏ってしまいがちです。

 

結局のところ、人間って自分の見たいものを見て、聞きたいことを聞く生き物でしょうから、作品が持つ本来の意味がどうであれ、受け手がそこに自身を投影し、新たな意味を生み出すことで、創作物はさらに豊かな広がりを持つわけです。

 

だからこそ、私たちは常に「これは自分にとってどういう意味か?」と問いかけながら、時に作品を通じて自己と向き合っているのかもしれません。


それでは、今週も知識をアップデートして参りましょう。

よろしくお願いします!


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①世界各国の地理情報

 ~東京大学の入試問題から世界を見る④ 人新世~


東京大学の地理の問題は、よく「出題者のメッセージが込められている」という人がいます。


実際は出題者にしかわからないのですが、そういうことを言う人は、「自分に都合の良い占いは信じる」という人なのかもしれません。実際、東京大学の地理問題は時勢に合わせて出題テーマが選定されているようにも思えますので、「メッセージが込められていると見ることもできるかも」といった具合ではないでしょうか。


ニュースサイトNewsPicksの2023年11月6日の記事にて、「人新世」について取り上げられていました。


▼【新教養】現代の最重要ワード「人新世」をゼロから学ぶ

https://newspicks.com/news/9142233/


上記のURL先は、会員しか閲覧できないのですが、一応貼っておきます。


ちなみに、わたくしは2018年4~12月の期間で、NewsPicksの公式コメンテーターであるプロピッカーを努めていましたので、そのご縁で会員ではありませんが、閲覧できます。内容を拝見すると、実に丁寧に取材をされていたようで、勉強になります。


しかし、これよりも早く東京大学が「人新世」を地理の問題で出題していました。2023年度入試、つまり2022年2月26日のことです


今回は、2023年度第1問設問Aにて出題された「人新世」をテーマとした問題を取り上げ、そこからどこまで教養を拡げられるか書いてみたいと思います。


■人類が地球環境を変えた時代

最近、ちょくちょく見聞きするようになった「人新世(じんしんせい、ひとしんせい)」という用語、ついに2023年度東京大学前期試験の地理にて取り上げられました。これは人類の活動が地球環境に大きな影響を与え始めた時代、そしてそんな新たな時代に突入したという認識が広まっていることで提唱された、地質時代の名称です。


当然ですが「人新世」は日本語訳が充てられた言葉であり、元は「Anthropocene」というギリシャ語由来の言葉です。ギリシャ語で「人間」を意味する「ἄνθρωπος(anthropos)」と「新しい」を意味する「「καινός(kainos)を組み合わせて作り出された造語であり、「新しい人間の時代」を意味します。

… … …(記事全文9,453文字)
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