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やっぱり地理が好き ~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

宮路秀作(地理講師&コラムニスト)

宮路秀作

やっぱり地理が好き #179:東京大学の入試問題から世界を見る③ 人獣共通感染症

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やっぱり地理が好き 

~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

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第179号(2024年10月31日発行)、今回のラインアップです。

①世界各国の地理情報

 ~東京大学の入試問題から世界を見る③ 人獣共通感染症~

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こんにちは。

地理講師&コラムニストの宮路秀作です。

日頃、周りの人たちからは「みやじまん」と呼ばれています。

今回で回目のメルマガ配信となります。


これまでも、そしてこれからも人の世から争いというものはなくなりません。


これまでの歴史上の戦争を振り返ると、王位継承争いやイデオロギー対立、民族紛争、宗教対立、領土や資源の奪い合いなどを原因に繰り広げられてきました。特に領土の奪い合いに勝った国は領土を拡大させるわけですが、同時に「周辺の少数民族を自国民とする」ことになるので、実は自ら「むき出しの導火線」を作り出しているわけです。


それはいつ着火するかわからないのですが、かつてのソビエト連邦、現在のロシアにおいて、あれだけ多くの多民族を囲っていると、どうしても民主的な手続きで国家を運営することは難しいのかもしれません。


人間が生存圏を拡大させて境界が曖昧になっていくのは、多民族に対してだけではありません。実は野生動物も同様です。これによって病原体が蔓延し、人類が感染症に苦しむストーリーは小説や映画の世界にはたくさん転がっています。


こうした感染症は人獣共通感染症といい、野生動物から感染した人間が、別の人間へと感染させてしまいます。これをスピルオーバーといい、現実的に、われわれはそれを2020年から経験することとなりました。


これをテーマにした入試問題があったとしたら、何の科目で問われるのが適切でしょうか?


もちろん正解などありませんが、実際に東京大学前期試験において、「地理」にて出題されました。今回は、人獣共通感染症をテーマにコラムを書いてみたいと思います。


それでは、今週も知識をアップデートして参りましょう。

よろしくお願いします!


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①世界各国の地理情報

 ~東京大学の入試問題から世界を見る③ 人獣共通感染症~


東京大学の地理問題は、実によく練られた問題が出題されます。


実際に問題を解くときには、「ん~……」と頭をひねるのですが、実際に予備校なりが速報で出した解答を見ると、「あっ、なるほどね!」となる問題が多い印象です。


つまり、「解答を理解する」ことができても、「解答を作る」ことが大変難しいということですね。逆に考えれば、「解答を理解する」だけの学力があるならば、東大入試の地理の問題はさらなる教養を深めるのに良い教材となります。


以前、熱帯低気圧についての問題を取り上げ解説したことがありました。


▼#170:東京大学の入試問題から世界を見る①

https://foomii.com/00223/20240831200000128608

▼#171:東京大学の入試問題から世界を見る②

https://foomii.com/00223/20240831220000128620


今回は、2022年度第1問設問Aにて出題された、「人獣共通感染症」をテーマとした問題を取り上げ、そこからどこまで教養を拡げられるか書いてみたいと思います。


■人獣共通感染症とは?

人獣共通感染症とは、人間と人間以外の脊椎動物の双方が罹患する感染症のことです。例えば、黄熱やオウム病、狂犬病、鳥インフルエンザ、エボラ出血熱、エイズ、そして新型コロナウイルスなどが該当します。


この問題が出題されたのが2023年2月のことですから、新型コロナウイルスが引き起こす感染症(COVID-19)が感染症法による分類で5類に引き下げられる(2023年5月8日に引き下げ)以前のことです。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は2019年12月31日、中国の武漢にて最初に報告されました。以後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は瞬く間に世界を駆け巡り、多くの死者を出しました。新型コロナウイルスが海鮮市場で動物から人間へと伝染し、そして人間から人間へと感染したと中国当局が発表していますので、新型コロナウイルスが引き起こす感染症(COVID-19)も人獣共通感染症であると考えられます。


人獣共通感染症は、過去数十年間で急速に拡大しており、その背景には、動物と人間の生活圏が重なり合う環境変化が深く関係しています。そもそも論として、感染症の拡大は世界人口の増加が根本的な要因です。特に20世紀後半は、

… … …(記事全文9,348文字)
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