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やっぱり地理が好き ~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

宮路秀作(地理講師&コラムニスト)

宮路秀作

やっぱり地理が好き #154:一橋大学の入試問題から世界を見る②

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やっぱり地理が好き 

~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

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第154号(2024年4月27日発行)、今回のラインアップです。

①世界各国の地理情報

 ~一橋大学の入試問題から世界を見る②

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こんにちは。

地理講師&コラムニストの宮路秀作です。

日頃、周りの人たちからは「みやじまん」と呼ばれています。

今回で154回目のメルマガ配信となります。


「勝者総取り」という言葉があります。


例えば、「アメリカ大統領選挙」などがまさしく勝者総取り方式にて行われています。

各州で行われる大統領選挙にて、その州の選挙人票の大部分を得た候補者が、その州の選挙人票のすべてを獲得するシステムです。このことから、全国で過半数の票を獲得していなくても、選挙人票の過半数を獲得すれば大統領に当選できます。2016年のアメリカ大統領選挙では、ヒラリー・クリントンが6420万票、ドナルド・トランプが6220万票と200万票の差を付けましたが、選挙人票ではトランプが306人、クリントンが227人だったため、トランプが第45代米国大統領に選出されました。


書籍なんて、まさしく勝者総取りの世界といえます。

売れる本は売れ続け、書店では書籍が置かれる場所を広く確保してもらえます。

もちろん、背表紙が見えるように置かれる面陳列ではなく、平積みです。


今となっては存在しませんが、以前は新宿の紀伊國屋書店では店頭に「最近話題の書籍!」のようなコーナーがありました。このコーナーは「選ばれし書籍」だけが平積みされていて、ここに置かれるのが一種のステータス的な感じがありました。


2017年2月に刊行した拙著、『経済は地理から学べ!』(ダイヤモンド社)を置いていただいたこともありました。すごく良い思い出です。


さて、アメリカ合衆国の出版社にペンギンランダムハウス(PRH)という出版社があります。

2013年7月、この出版社はイギリスのペンギングループ社とドイツのランダムハウス社が合併して誕生しました。現在はランダムハウス社の親会社であるベルテルスマンの子会社となっています。


アメリカ合衆国の出版社といえば、前述のPRHにサイモン&シュスター(S&S)、ゲオルク・フォン・ホルツブリンク出版グループ、アシェットリーブル、ハーパーコリンズを加えた5つが有名で、俗に「ビッグ5」と称されます。中でも、ゲオルク・フォン・ホルツブリンク出版グループが1995年に買収したイギリスのマクミラン出版は、イギリスのマクミラン家が創業し、代々一族で経営されていました。このマクミラン家からイギリス首相を務めた政治家が、イギリス第65代首相のハロルド・マクミランです。


2020年11月、PRHがS&Sを買収するという話がまとまるのですが、それから2年後の2022年10月、アメリカ合衆国版独占禁止法である「反トラスト法」に反しているとのことで、連邦裁判所によって「合併不可!」という判決が出されました。米国市場における両者のシェアはPRHが37%、S&Sが11%だったため、合併されるとシェアが48%と限りなく過半数に迫るからこその「合併不可!」だったと考えられます。


この時の裁判記録が『The Trial』という書籍にまとめられていて、Amazonでも購入できるのですが、あまりの価格にあごが外れそうな勢いです。


▼『The Trial』

https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/194858655X/


この裁判によって衝撃的な内容が明らかになったとあり、それが1年間で出版された5万8000冊のデータから「90%が2000部未満しか売れておらず、50%は12部未満しか売れていない」というものでした。およそ3億3300万人の人口を抱える国の市場としては、ちょっとにわかに信じがたい数値に思えますが、現実のようです。


書籍を刊行することによって著者が頂く報酬の多くが「印税」だと思います。しかし、アメリカ合衆国では「前払い金」を報酬として受け取る著者が数多くいるようで、25万ドル以上の前払い金を受け取る著者が2%存在し、その2%が受け取る前払い金は出版業界全体の前払い金の70%を占めているそうです。つまり、「売れっ子作家」の書籍はたくさん売れるからあらかじめ報酬を払っておこうということです。


そして、この前払い金の支払額が断トツで大きいのがPRHだったようです。

… … …(記事全文9,090文字)
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