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やっぱり地理が好き ~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

宮路秀作(地理講師&コラムニスト)

宮路秀作

やっぱり地理が好き #126:天才たちが眺める「フロンティア」

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やっぱり地理が好き 

~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~


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第126号(2023年9月10日発行)、今回のラインアップです。


①コラム

 ~天才たちが眺める「フロンティア」~


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こんにちは。

地理講師&コラムニストの宮路秀作です。

日頃、周りの人たちからは「みやじまん」と呼ばれています。

今回で126回目のメルマガ配信となります。


「学び」というのは、「日常生活の延長線上にあるもの」というのがわたくしの考えです。


「一体、これは何のために学ぶ必要があるの?」といった感想は、高校生の頃によく抱いた疑問でした。「モルって何だ!?」「ルイって王様はいったい何人いるんだ?」「『葡萄美酒夜光杯』って結局何が言いたかったんだ?」、挙げればキリがありません。


しかし、教壇という一段高いところから他人様に物を教える仕事をしていると、「無駄かどうかはその時点では分からない、結局のところ未来でしか分からない」という実感を強くもちます。


地理は現代世界そのものなので、これを知ることによって「なぜ、そうなったのか?」と歴史を紐解くことで深い解釈を加える必要が生じます。それによって、未来を読むところまでが「地理歴史」の学びの意味合いであると思うわけです。まさしく「地理と歴史は自動車の両輪のようなもの」ということです。


「地理は事実、歴史は解釈」です。現代世界の事実を知り、過去に意味づけをする、つまり歴史を解釈するわけです。こうしたことを繰り返すことで、誰もが……、とは言いませんが、少しは未来を読めるようになるのかもしれません。


これまでの歴史上、「次の時代」を拓いてきた人たちの頭の中にすごく興味がありますが、それを確認することはできませんし、「多分、こういうことを考えていたのだろう」と予測することしかできません。


彼らが眺めていた「フロンティア」とは一体何だったのでしょうか?


もちろん時代が変われば、フロンティアも変わります。時代とともに空間認識が拡大したのは、その当時に作られていた地図に描かれている範囲がそれを示してくれています。


大昔の人たちは「海の向こう」にフロンティアを感じていたでしょうし、短時間で大量に輸送が可能となる社会を夢見たジェームズ・ワット(1736~1819、イギリス)は蒸気機関を改良しました。そしてリンドバーグが眺めていたフロンティアは「空」だったでしょう。任天堂の技術者は「子供たちの笑顔」にフロンティアを求め、それを思い浮かべながらファミリコンピューターを作ったでしょう。


仕事というのは、未来像を描きながら行うものです。気持ちの余裕があってこその仕事です。だからこそ、その余裕を失ったときこそ国の衰退が始まるといえます。それを自覚している人が、この国の政に携わる人たちにいないのが悲しいところではありますが、特に若い人たちは、いつも「ワクワク」して生きていて欲しいなと思います。


アメリカ人に出来て、日本人にできないことなどないのですから。


それでは、今週も知識をアップデートして参りましょう。

よろしくお願いします!


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①コラム

 ~天才たちが眺める「フロンティア」~


量子力学の原理を計算に応用した、量子コンピューターというものがあります。


量子力学とは、原子や分子、原子核、素粒子などの微視的な世界を記述していく物理学の理論のことで、古典力学とは異なり、粒子が波の性質も持つことや不確定性原理などの従来の常識では説明できない現象を記述していきます。


従来のコンピューターは0か1のいずれかの値を表現するビットを用いて計算を行います。一方の量子コンピューターは、0と1の重ね合わせ状態である量子ビット(qubit)を用いて計算を行います。


この状態を利用することで、従来のコンピューターでは膨大な時間を要する計算を「あっ!」という間に行うことができると期待されています。極端な話、従来のコンピューターで1万年かかるような計算が、量子コンピューターであれば5秒で終わるといったほどのようです。爆速ですね!


そのため、従来のコンピューターでは解くことの出来なかった、あるいは時間がかかりすぎて実用できなかったようなことが、量子コンピューターの登場でそれまで以上に複雑な問題に対して最適解を導き出すことが可能となります。そして、これだけの速い計算速度を叩き出すため、現在使われているような通信時の暗号化が意味をなさなくなる可能性があります。


量子コンピューターを活用した世界はどのようなものとなるでしょうか?


個人的には、気候変動の分野における課題の解決に期待ができるのではないかと思います。他にも新薬や新素材の開発など、当然のごとく未知なる領域に足を踏み入れるようになるでしょう。もはや細胞を傷つけることなく、頭を貫通させられるような超極細チューブが開発されたりするのかもしれません。皮膚を切らずとも、手術が可能となる時代が来るのかもしれません。


間違いなく、我々の生活がガラリ一変するような時代がきます。しかし、それがいつなのかは全くもって分かりません。一般に数十年先といわれていますが、未来のことは未来でしか分かりませんので予想は予想でしかありません。ただ「未来予想図」を眺めるだけえ「ワクワク」することは間違いなく、それをどのように捉えるかはその人の知的背景や嗜好によるのだと思います。


■企業による研究活動

量子コンピューターの研究に力を入れている企業は、世界を見渡すと結構あるもので、IBM、Google、Microsoft、Intelなどが有名です。


そして個人的に注目している企業があります。それは、

… … …(記事全文8,627文字)
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