… … …(記事全文3,488文字)前稿に続き本稿でも介護について書きたい。お付き合いいただければ幸いである。
●退院準備
要介護2の認定を受けた母が退院するのを受け種々の準備を行った。まずは、ケアマネージャーとの契約、介護機器の準備と契約、デイサービス利用のための介護会社との契約、訪問看護をしてもらうための病院内部署との契約などである。ケアマネージャーは、父のそれに兼務してもらうことに、介護機器は介護用ベッド、歩行器、スロープに留めた。デイサービスは、嫌がった母を説得した結果だったので、当面週1回からスタートすることになった。訪問看護は、週1回入院していた病院から看護師が来宅してくれるよう調整した。
●退院前の主治医からの説明
主治医からは、「うつ状態は収まっています。ただ、夜間せん妄が出ることが心配されます。気象の変化、気圧の変化があったときに出やすいのが特徴です。その場合は、氷水を飲ませてそっとしておけばいいです」との説明があった。また、母に対しては「もう90歳を超えているのだから、何もしないでのんびりやりなさい。そのことで悩む必要はありませんよ」と声をかけた。「もし、具合が悪くなったらいつでも飛んできてください」とも付け加えた。
退院後もクスリの服用を継続しなければならないとしたが、どのような効果・効能があるのか、副作用については一切説明がなかった。ただし、次の診察日だけは決めた。長期入院による歩行困難に対するリハビリを行わなかったことへの言及もなかった。デイサービス等で対処しろということなのだろう。その後、看護師から「夜間せん妄が生じた場合、クスリを飲ませてください」。また、急に、特に夜間来院する場合、「電話をしてからお願いします」と主治医と異なる説明があり困惑した。電話するのは当然としても。
●退院
主治医からの説明の後、いよいよ退院となった。本人に自覚はないらしく、看護師に「おうちへ帰りますよ。病院から離れるんですよ」と促されてようやく状況を理解した。母は、面会時と変わらず無口である。良く言えば、「温厚になった」、悪く言えば「生気がない。弱った」というところだろう。
家に戻り、弟夫婦も呼んで、ささやかな「退院祝い」をした。乾杯はしたものの、母はほとんど食べ物には手をつけなかった。そのうちに、「クスリ飲まなきゃ」と言い出し、食後と就寝前のクスリをほぼ同時に服用しさっさと寝てしまった。「環境が変わったから疲れたんだろう」。弟が言った。そして「明日から、俺たちも協力するから、何とか頑張って行こう」という言葉でお開きとなった。
●退院後初めて自宅で迎える朝
退院後初めての朝、「眠れたかい」と私が尋ねると、「眠れたよ」とか細い声が返ってきた。朝食は、私が作る。大したものはできないが、できる限りのことはした。病院ではずっとお粥だったというが、普通のご飯でいいとのこと。目玉焼きは食べないので、炒り卵にすることには注意した。昨夜よりはたくさん食べてくれたので安心した。
蓮池透の正論/曲論
蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)