… … …(記事全文4,499文字)2024年10月5日は、横田めぐみさんの60歳回目の誕生日に当たる。これをほとんどのメディアは、「めぐみさんは今年還暦で、5日に60歳の誕生日を迎えた」と報じた。そもそも「還暦」とは長寿を祝う節目の年齢の一つであり、日本特有の風習とされている。したがって、論理的に言えば、「生存していれば」あるいは「生存を前提とすれば」という前提条件を付けるべきである。しかし、その前提条件を明示することさえタブーになっている。それほど、メディアは劣化しており、しかも報じる内容はいつもながらエモーショナルである。事件報道が「スポーツ報道」のようになっている。「エンタメ化」していると言っても過言ではないだろう。誕生日に先立って行われた記者会見における横田早紀江さんの発言を拾い上げてみる。
●還暦の姿「想像つかない」
「60歳のイメージが湧かないし、想像がつかないです。ちゃんと食べているのかもわからず、かわいそうで、早く何とかしたいとばかり思っています。何年もかかっている問題なので気持ちも言い尽くせません。私自身も年をとって疲れがたまってきていますし、異常なことが日本で起きているのを重く、深く考えさせられます」
「いつもそこにいるような感じで(写真に)話しかけています。『まだ連れて帰ってあげられないんだよね。こんなに頑張っているんだけど、だめなんだよね』って」
・誕生日に特別なお祝いをしなくなり、静かに過ごすことについて
「(祝っても)何とも言えないむなしさで、かえってしんどいのです。それより、闘わなきゃという気持ちが強いです」
・筆者注:会見場に誕生日ケーキを持ち込んだテレビ局の若手記者がいたそうだ。吞気なものである。
蓮池透の正論/曲論
蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)