Foomii(フーミー)

蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

今年中に拉致問題は動くのか

●今年もあと半年少し

2024年も5月が終わろうとしている。この間、北朝鮮側から日朝首脳会談に向けた「秋波」が送られたにもかかわらず、日本側の態度は曖昧で実現への水面下交渉も進んでいるような気配は伝わってこない。刻一刻と時間は容赦なく過ぎて行く。


この先の政治日程を見ると、通常国会は6月23日で会期末となり、月末にはG7首脳会議が開催される。その後は、東京都知事選、自民党総裁選と続き、解散総選挙も考えられる。11月には米国大統領選が始まる。また、夏にはパリ・オリンピックがある。日程は非常にタイトであり、果たして日本政府が腰を据えて拉致問題に取り組む時間があるのか、絶望的な気持ちになる。旧稿で触れたように日朝首脳会談が開かれるとしても、来年春以降になってしまうのだろうか。


5月中にも拉致問題に関する報道があった。とりわけ地元紙新潟日報は、今まで取り上げることのなかった出来事を引き合いに出し、「節目報道」を行っている。危機感を持っているのだろうか。その割には、記事の内容は相変わらず「情緒的」で、「しないよりはまし」といった程度である。このまま、例年のとおり同じことを繰り返して、年末まで時が過ぎてしまうのだろうか。


5月中にあった報道を振り返ってみたいが、その前に報道にはならない事柄について述べる。



●家族会が日本テレビに抗議

日本テレビの福澤真由美記者が毎日新聞のインタビューに応じ、政府方針に迎合とのメディア批判、「安倍三原則」の見直しを訴えたことは旧稿で書いた。この行動について、福澤記者は、日本テレビ幹部から「厳重な注意」を受けたという。


おそらく毎日新聞の報道等で知ったのだろう。家族会幹部3人が日本テレビに対し抗議に訪れたというのだ。「まるで横田めぐみさんが生存していないと想起させるような内容」「家族会の活動方針を否定する内容」という主旨とのこと。


なぜ日本テレビへ抗議するのか大きな疑問である。毎日新聞のインタビューに応じたのは福澤記者個人であり、「北朝鮮拉致問題の解決」(岩波書店)に寄稿したのも同様である。日本テレビ側も「福澤個人の問題」と撥ね付ければよいところ、社会部長以下拉致問題担当記者ら4人が対応したという。「謝罪と撤回がなければ今後日テレの取材には一切応じない」という恫喝に日本テレビ側は怖気付いたのだろう。「『歳時記』にしかならない、そして変哲のない早紀江さん語録は取材の必要はありません」と断ればよいと私は思うのだが、そうはいかないようだ。


こうなると家族会は圧力団体以外の何物でもない。報道の自由に介入するとは、何様だと思っているのか。しかも、今回が初めてのことではなく、過去には「検閲」までしている。これでは世の中からの支持を失ってもやむを得ない。日本テレビ側も家族会を「聖域化」している姿勢からは依然として脱却できていない。どっちもどっちとしか言う他はない。いずれにせよ、福澤記者の勇敢な「告発」を無にしてしまうのは明らかである。



●メディアは北朝鮮の目的達成に加担している

これは5月に限ったことではないが、北朝鮮が核実験を強行し、連日のように弾道ミサイル等の「飛翔体」を発射する目的は、米国を始め国際社会に対して「核保有国」であることを認識させることを主としているのは間違いない。そんな状況において、長距離あるいは短距離弾道ミサイル、偵察衛星の打ち上げを十把一絡にして「Jアラート」を連発し注意を呼び掛ける。メディアは、こぞって伝え安全な行動をとるよう促す。ミサイルが命中した場合、小学生が机の下に身を隠して何の役に立つのだろうか呆れるだけだ。


やみくもにミサイル発射をニュース速報で過剰に取り上げるのは、ただ北朝鮮の「脅威」を煽るだけのことでしかない。国内向けには「ミサイル」、国際放送では「Satellite(衛星)」と使い分けるNHKは最たるものである。こういったメディアの反応は北朝鮮の目的達成に加担しているという自覚が欲しいものである。さらに、現時点では北朝鮮が日本を直接標的にする局面にはないと私は考えている。


5月の新潟日報の報道内容に移る。



●家族会の訪米

「4月29日から訪米していた被害者家族らが4日、帰国した。羽田空港で報道陣の取材に応じた横田めぐみさんの弟で被害者家族会代表の拓也さんは、全ての拉致被害者の即時一括帰国が実現するなら日本の独自制裁解除に反対しないとの家族会の新たな運動方針に、米国側から理解が示されたと明らかにした」

「家族会は、米国で国家安全保障会議(NSC)のラップフーパー上級部長ら政府高官や連邦議員らと会談した。拓也さんは、被害者家族の高齢化に触れ、会談には母早紀江さんの写真を持参したと説明。『親世代が健在のうちに会えなければ解決ではない』とし、心中の苦しみを伝えて、一方的に無条件の対話路線にかじを切ったわけではないと米国側に説明したという」


この時期の家族会の訪米は恒例となっている。コロナ禍の影響で今回が4年ぶりだという。従前から訪米は、いかに自国政府が頼りないかの証左であり、政府は止めるべきだと主張してきた。しかし、日本政府は逆に支援している。日米連携の一環と考えているとしたら大きな勘違いである。渡航費用まで支出していないことを願うが。また、同行した拉致議連のメンバーが、山谷えり子参議院議員と塚田一郎衆議院議員では、心許ないことこの上ない。


「拉致家族会新方針に米理解」という見出しだが、だからどうしたと言いたい。そもそも米国が日本の拉致被害者を救出することなどあり得ない。再び渡航費用だが、家族会のカンパ金から捻出しているのなら頷ける。しかし、巨額なカンパ金の収支決算が家族会結成から一度も公にされていないのは信じ難い。支援者への裏切り行為である。これは、旧稿で指摘した。


「『家族会』とお金 置き去りにされたままの課題」(2021年8月6日配信)

https://foomii.com/00200/2021080606000083298

… … …(記事全文4,445文字)
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