Foomii(フーミー)

蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

「政府方針にメディアが迎合」日テレ記者の発言に会社側は

●毎日新聞夕刊記事が話題に

毎日新聞5月15日付夕刊の特集ワイド記事が話題を呼んでいる。その記事を書いたのは、オピニオン編集部の吉井理記記者である。吉井氏は、狭い範囲のニュースやニッチな話題を取り上げるだけでなく、業界でタブーとされる問題にも果敢に斬りこんでいくことで知られている。私も吉井氏の取材を受け記事化してもらったことがある。


記事のタイトルは、「取材22年 日テレ記者の悔恨と『極秘情報』『拉致3原則』見直しを」で、私も寄稿し出版された「北朝鮮拉致問題の解決―膠着を破る鍵とは何か」(岩波書店)を取り上げている。中でも、同じく寄稿した日本テレビの福澤真由美記者へのインタビューという形で記事をまとめている。いわゆる「同業他社」への取材であるが、これもいかにも吉井氏らしい一面である。


●記事の狙い

同記事はネット上でも有料記事として配信されている。ここではその一部を引用したい。出だしはこうだ。

「一冊の本が波紋を広げている。5人の識者の共著『北朝鮮拉致問題の解決』(岩波書店)である。中でも20年あまり取材を続けてきた日本テレビの福澤真由美さんが明かす「極秘情報」に関係筋はどよめいた。折しも今年は岸田文雄政権と北朝鮮との接触が取り沙汰されている。福澤さんを直撃した」


吉井氏の関心は、本の中でも福澤氏が執筆した「極秘情報」にあったようで、そこを重点にしたインタビューが行われている。「極秘情報」といっても、私たち関係者にとっては、ほとんどが既知の内容であり、今までなぜ報道されなかったと疑問を抱くとともに、どこで波紋を広げているのか計り知れない。


これについて、福澤氏は、「北朝鮮や拉致問題で動いている人は、実はそう多くはない。ごく狭い世界なんですが、それでも『衝撃の一冊』だったようで……。本が出てから、『極秘に面会したい』という永田町の関係者も少なくありません」と説明している。


福澤氏は、日本テレビで政治部を経て社会部記者となり、2002年小泉訪朝以前から現在まで拉致問題を取材し続けている類まれな存在である。なぜなら、各メディアも当初は拉致取材班を組織していたが、現在では解散、担当する記者も少なくなったうえに世代交代し経緯を知らない若い人が多いからだ。それだけ長い時間が経過したことを思い知らされる。もちろん、私も彼女から何度も取材を受けた旧知の間柄である。


●一時帰国した5人 誰が誰か分からない

拉致被害者5人が一時帰国した時のことを福澤氏はこう回想している。

「拉致被害者5人の帰国は10月15日です。羽田空港で政府専用機からタラップで降りてくる5人を見守りました。拉致から四半世紀が過ぎ、皆さんはどんな顔をしているか、アナウンサーもだれがだれか確信が持てない。だから個人名を避け、『拉致被害者の皆さんが帰ってきました』と実況していたことを覚えています」


「どんな顔をしているか、アナウンサーも確信が持てないので個人名を避けた」というのは初めて知った。当時私は、羽田空港で撮られる側におり、そのテレビ中継を見ていない。


●日朝首脳会談を巡る秘密交渉

日朝首脳会談を巡る秘密交渉に関して、福澤氏は自身の取材で得た情報を語る。

「動きがあったのは昨年9月、岸田氏が国連総会で『日朝首脳会談に向けて前提条件を付けずに協議を行う』と演説して以降です。日朝は第三国で水面下の接触を重ねてきました。今年1月の能登半島の地震では、金正恩朝鮮労働党総書記が見舞いの電報を、妹で党副部長の金与正氏が2月15日と3月25日の2度にわたり、岸田氏の平壌訪問に触れる談話を出すに至ります」


「水面下の交渉で、岸田氏は『首脳会談までは拉致問題について触れない』と約束していたという。だが、林芳正官房長官は3月25日午後の記者会見で『拉致問題が解決済みとの主張は全く受け入れられない』と述べ、北朝鮮は『これまでの話と違う』と態度を硬化させた」という吉井氏の見立てに対して、福澤氏は以下のとおり語った。


「林氏は水面下の交渉内容を知らされていなかったのか、外務省から渡された紙を読み上げただけなのか……。それでもなお、日朝間の一連の動きはこの20年で最大の好機です」


私も「最大の好機です」には共感する。しかも、最後の好機であることは旧稿でも述べた。


●本の内容

注目されたのは、もちろん福澤氏が執筆した同書の第4章「拉致された人々を取材して」の40ページ。その中の一部が「ネタバレ」になっており、すでに新聞が発行されているので引用したい。ここで、福澤氏は「私も『覚悟』を決めて明かしました」と述べている。


●めぐみさんのものとされる「遺骨」に歯が混入

「04年に北朝鮮を訪れた藪中三十二・外務省アジア大洋州局長(当時)率いる調査団が持ち帰った横田めぐみさんのものとされる、焼かれた『遺骨』の骨つぼには、本人のものとみられる歯があった、という情報です。調査団のあるメンバーが06年7月に証言しました」

… … …(記事全文4,326文字)
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