ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00200/20230728054000111987 //////////////////////////////////////////////////////////////// 蓮池透の正論/曲論 https://foomii.com/00200 //////////////////////////////////////////////////////////////// ●沖縄タイムスの報道 「遺骨収集より今生きている人を優先すべき」。沖縄タイムスの記事の見出しだ。多少の誇張表現があるかも知れない。だが、こういった文言は正直見聞きしたくない。 米山隆一衆議院議員のツイートに端を発して、WEB上でちょっとした論争になっていた。妻で作家の室井佑月氏が遺骨収集に「大きな予算を割くのは反対」との投稿を引用したツイートだ。ご存知の方も多いだろう。室井氏は、従来から沖縄の人たちに寄り添った発言を続けており、「今、沖縄にも困っている人が大勢いるんだから、そちらに予算を付けるのが先決」と私に話したことが真意で、「予算を割くのは反対」の部分だけが独り歩きした感は否めない。 「大きな」と断っているし、予算は限られているとの主旨だと思いたい。しかし、予算(お金)が絡むと話しは一層ややこしくなる。誤解を与えるような表現ではなく、せめて遺骨収集は当然で、同時にやるべきと発信して欲しかった。「遺骨収集に関して、ボランティアでやっている人たちも尊い。遺骨が出てきたら、みんなで弔うのも当たり前」と書いているのだから。室井氏らしくない。例えば、「巨額の軍事予算を削減して充当するべき」という物言いもできたはずである。 ただ、米山氏の「故人こそが、今生きて苦しんでいる人を優先してくれと、思っているでしょう。政治は、今生きている人を優先すべきです」には違和感を覚える。私には故人の思いを簡単に想像することができないので、米山氏のような断定的な表現はできない。超合理的に考えれば「今生きている人優先」というロジックが成り立つのかも知れない。だが、遺族や関係者にとって、そんなドライな合理性で割り切れることなのか、気持ちを逆撫ですることにならないのかといった疑問を抱く。 私がこの類の文言を聞いたのは初めてではなく、過去の同主旨の発言を巡る苦々しい思いが甦ってくる。 ●北朝鮮に残されたままの遺骨 厚生労働省によれば、太平洋戦争により、海外で死亡した日本の軍人・軍属は約240万人で、民間人は約30万人。内地での戦災死者数は約80万人といわれており、うち悲惨な沖縄戦で亡くなったのは軍人・軍属、民間人含めて約19万人とされる。 遅きに失した感はあるが、2016年「戦没者の遺骨収集の推進に関する法律」が成立し、沖縄を含む内地及び海外の遺骨収集が国の責務と位置づけられた。同法第2条で以下のとおり定められている。 「『戦没者の遺骨収集』とは、今次の大戦により沖縄、東京都小笠原村硫黄島その他厚生労働省令で定める本邦の地域又は本邦以外の地域において死亡した我が国の戦没者の遺骨であって、いまだ収容され、又は本邦に送還されていないものを収容し、本邦に送還し、及び当該戦没者の遺族に引き渡すこと等をいう」(一部省略) また第4条では、財政措置について、こう定める。 「政府は、戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならない」 政府による遺骨収集が開始されたのは1952年度から。約31万人分の収容に留まり、民間によるものを合わせても約128万人分で、まだ道半ばと言える。前述の法律にある「指定法人」による集中実施期間(2016度~2029年度)で、すべての遺骨収容が完了するかは不透明だ。 政府は、海外での遺骨収集と墓参団派遣を行っている。しかし、例外がある。それは北朝鮮だ。北朝鮮には約27000人分の日本人遺骨が眠ったままなのである。遺骨収容の扉はなかなか開かれなかったが、2014年「ストックホルム合意」で状況は一変した。 ●「北遺族連絡会」からの連絡・依頼 「ストックホルム合意」で、北朝鮮側が以下の調査を行うことが約束されたからだ。 ・日本敗戦後に朝鮮半島北側で死亡した日本人の遺骨及び墓地 ・残留日本人 ・日本人配偶者(主に日本人妻) ・拉致被害者及び行方不明者… … …(記事全文4,773文字)
蓮池透の正論/曲論
蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)