ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00200/20230526053000109491 //////////////////////////////////////////////////////////////// 蓮池透の正論/曲論 https://foomii.com/00200 //////////////////////////////////////////////////////////////// ●もう形容のしようがない東電の体たらく またまた東京電力がやらかしてくれた。以前「不祥事の量販店」と揶揄したが、その後もトラブルや不祥事が「堰を切ったように」あるいは「雨後の竹の子のように」続けざまに起こる。もうこの体たらくを形容する言葉が見つからないほど、柏崎刈羽原発は非常に劣悪な状態に陥っている。「原因究明と再発防止」という魔法の言葉は、もはや使えない。「魔法」はとっくに解けているからだ。 何があったかのか書くのも悍ましいが、そうしないと話しが始まらない。 柏崎刈羽原発の所員が6号機の防災対策に関する書類を無断で持ち出し、一部を紛失したという。紛失した書類は、6号機の火災防護や溢水防護に関する設計図で安全上重要な情報は含まれてはいないが、「第三者に公開する情報ではない」と東京電力は説明した。事の顛末はこうだ。 ●書類を自家用車の屋根に載せたまま発進 落下・散乱 ある所員が5月19日(金)の退勤時、「テレワーク」をするため書類80枚を封筒に入れ、上司の許可を得ることなく持ち出した。退勤バスを下車し、自宅に到着した後、買い物に行く際、封筒を自家用車の屋根に載せたまま発進したため、封筒は落下した。所員はそれに気づかず買い物を終え帰宅した。翌20日(土)に仕事を始めようとしたときに初めて書類がないことに気付き、前日走行した道路を探したところ、封筒と書類が散乱しているのを見つけ、約40枚を回収した。 当該所員は、持ち出した書類の枚数を把握していなかったため、全て回収したものと思い込み、紛失したことを報告しなかった。ところが、20日書類の一部を拾った住民が東京電力へ通報したため、書類の無断持ち出しと紛失が判明したという。回収作業が継続されたが、現時点で1枚の書類が行方不明のままである。 東京電力は、「当該所員とその上司に厳重注意した。具体的な対策はこれから検討するが、速やかに全所員に情報の持ち出しに関するルールを徹底するよう周知を行い、情報の厳正管理に努めていく」と発表した。 柏崎刈羽原発では昨年6月、核セキュリティ関連情報が記載された文書を東京電力本社所属社員が無許可で持ち出し、東京電力は再発防止対策を講じたばかりである。しかし、今回も上司の許可が必要であるにもかかわらず無断で書類を持ち出したばかりか、紛失の事実も報告していなかった。 ●腑に落ちない説明 何ともお粗末な出来事だが、東京電力の説明には腑に落ちない点がある。まず「テレワークのため」である。新型コロナ禍も一段落している現状で、テレワークをする意味が理解できない。そして、テレワークとは情報通信技術(ICT)の活用が基本と考えるが、当該所員は土曜日・日曜日にかけて作業しようとしている。もし、原発のオフィスに他の所員が「休日出勤」しているのであれば自身も行けば良いことで、いないのであれば(こちらの可能性が高い)「ただの宿題」である。取って付けたような言い訳としか思えない。 急を要する作業であれば、残業をしてこなせばよく、そうでなければ週明けに回せばいい。当該所員は作業を翌日から開始しようとしているところを見ると、それほど急いでいる様子はない。残業代は支給されず、自宅で作業しなければならない特別な事情でもあるのだろうか。 それから、帰宅後買い物へ行ったとされているが、その際にわざわざ書類を持って行く必要があるのだろうか。必要あるのなら、買い物の前後に紛失に気付いてもいいはずだ。 釈然としない。 さらに、19日夜から20日朝にかけては雨模様だった。雨に濡れた書類もあっただろう。ふやけた書類を拾い元通りに全て回収したと考えたとしたら、ずさんとしか言えない。 私も、延べ6年間福島第一原発に勤務した。しかし、重要な資料はもちろんのこと普段使用する図面や結線図を持ち帰ることはなかった。所内文書は外部へ出さない、が基本なのだ。一度だけ重要書類を寮へ持ち出したことがある。それは、国税庁の監査で見られては困る書類を隠匿するのが目的だった。これはこれで問題だが、四半世紀前でも文書管理は徹底していたのは確かだ。… … …(記事全文5,130文字)
蓮池透の正論/曲論
蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)