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蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

3.11から12年 原発回帰へ180度急旋回 事故の教訓は何処へやら

ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00200/20230310060000106513 //////////////////////////////////////////////////////////////// 蓮池透の正論/曲論 https://foomii.com/00200 //////////////////////////////////////////////////////////////// ●福島第一原発事故の教訓は何処へ  東京電力福島第一原発事故から12年が経過した。福島県には、復興どころか復旧さえままならい地域が存在しているのが現状である。そして、今なお多くの方々が避難生活を強いられている。しかし、「原子力緊急事態宣言」は発令されたままであるのにもかかわらず、政府や自治体は、自主避難者はもとより、「避難区域解除」を理由に、支援を情け容赦なく打ち切っている。  そんな中、岸田文雄政権は昨年、原子力政策を大きく転換した。すなわち、福島原発事故後の「原発依存度をできる限り低減する」から、「原発再稼働の加速」「運転期間の延長」「新規原発の新・増設の促進」といった原発回帰への180度の急旋回だ。よく「福島原発事故などなかったかのように」と表現されるが、これは完全に「事故はなかった」として、被害者はもちろん、この国に暮らす人たちを蔑ろにする常軌を逸した転換と言わざるを得ない。  また、今夏以降の再稼働を目指すとする原発には柏崎刈羽原発も含まれているが、同原発は核セキュリティ問題で、原子力規制委員会により事実上の運転禁止処分が下されている。政府の方針は、この処分を頭越しにするものであり、同委員会の「独立性」を完全に無視する観点からも決して許容することはできない。 ●原発再稼働賛成へと世論誘導  電力の逼迫、電力料金の高騰が殊更に強調され、原発再稼働賛成へと世論誘導が行われている。東日本大震災直後に強行された非人道的な「計画停電」を二度と繰り替えさないために、送電網の強化や自然エネルギーへの早期の転換が決定されたはず。しかし、原発に執着するがあまり実行しなかった政府の怠慢が、現在の問題を惹起しているといっても過言ではない。  例えば、「周波数の壁」がある東西連係送電網は、この12年間で120万kwから210万kwへとわずか90万kwしか増強されていない。全国の原発の再稼働に要する対策費用の総額は、5兆7千億円とされているが、これを東西連係に充当すればもっと増強できるのは言うまでもない。ちなみに、100万kw増強に要する費用は数千億円とされる。  運転期間の延長に関しても、原子炉圧力容器の中性子照射による脆性遷移温度の上昇データが明示されることはなく、原子力規制委員会も追随する形で決定された。科学的見地に基づく判断ではなく、あくまでも政治的判断との誹りは免れない。
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