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蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

安倍元首相死去後に拉致問題に関する「真相の暴露」が相次ぐ謎

ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00200/20221104060000101490 //////////////////////////////////////////////////////////////// 蓮池透の正論/曲論 https://foomii.com/00200 //////////////////////////////////////////////////////////////// ●安倍氏死去後に出現する秘話 地元に蔓延る「安倍神話」  安倍晋三元首相が亡くなってから4カ月になろうとしているが、その間、関係者からの「実は…」といった「真相の暴露」が相次いでいる。その内容の真偽のほどは定かではなく、混乱を来す原因になっている。逆に、安倍氏存命中はなぜ話せなかったのか、どれだけの圧力やおもねりが働いていたのか、想像すると絶望的な気持ちになる。「拉致の安倍」と称されていたが、関係者が拉致問題は安倍氏の専権事項であり、氏の癇に障ることは間違っても公言できなかったというのであれば、あまりにも情けない。  地元では、安倍氏が「弟を含む5人の拉致被害者を北朝鮮から連れ帰った」とする「安倍神話」を信じている人が少なからずいる。「安倍さんのように一生懸命拉致問題に取り組む人は他にいないのか」と訊かれることも多々ある。「小泉訪朝におにぎりを携えてただついて行っただけ」これは母の談であるが、その通りだ。自ら、さも拉致問題に必死で打ち込んでいるかを流布し、多くの人たちに誤った印象付けをした上で、首相在任期間分の時間を無駄にしてしまったのは罪深い、と今でも思っている。 ●小泉訪朝2日前に先遣隊が拉致被害者の生死情報を確認  外務省関係者が語るところによると、小泉訪朝の2日前に先遣隊が「『拉致被害者5人生存、8人死亡』の情報を小泉純一郎首相に伝えてくれ」と北朝鮮当局から金正日総書記の伝言として告げられた、との新聞報道があった。それを聞いた小泉氏はショックを受けたが、予定通り訪朝したとされる。  この関係者の発言が、何を意図しているのかよく理解できない。実は、拉致被害者の生死に関する情報を日本政府側は事前に確認していた。それでも北朝鮮へ乗り込んだ小泉氏の勇敢な姿勢を称賛しようとするものなのだろうか。これには合点がいかない、辻褄が合わないからだ。当時の外務省・田中均審議官は「ミスターX」との水面下交渉では、「拉致」という言葉は一切使わず「行方不明者」として「生きているのなら帰国させろ」と迫ったが、明確な回答は得られなかった。だが、「きっと認めるだろう」との感触と期待だけで、訪朝は一種の「賭け」であったと語っていた。  そもそも、私たちは小泉訪朝に関しては、あまり期待はしていなかった。「また、コメ支援の約束でもして来るのだろう」と冷めた目で捉えていたのだ。ところが、日朝首脳会談で金総書記が拉致を認めて謝罪したのは、私たちにとって晴天の霹靂だった。 「拉致を認める」とか「5人生存8人死亡」といった情報は、いわばトップシークレットであり、事前に知らされていたとはにわかに信じ難い。仮に、予め死亡者がいると知ったうえでの訪朝だとすれば、北朝鮮側に対して死亡日時・原因などを徹底的に追及すべきであり、それをしなかった小泉訪朝団は、拉致被害者の人権を著しく軽視していたと言わざるを得ない。
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