ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00200/2022031106000091986 //////////////////////////////////////////////////////////////// 蓮池透の正論/曲論 https://foomii.com/00200 //////////////////////////////////////////////////////////////// 今日で福島第一原発事故発災から丸11年となった。あの日、私は所用で神奈川県鎌倉市にいた。地底の方から経験したことのない強い揺れ、と言うよりうねりのようなものを感じた。当地一帯は停電し、帰りの電車は運転見合わせになっていた。鎌倉駅前は人だかりで、携帯電話はつながらず、公衆電話の前には長い行列ができていた。 すぐに運転再開するだろうと、鶴岡八幡宮辺りを散策して時間をつぶしたのだが、周りの人たちが「今日中の運転再開はないようだ」と話しているのを聞き、慌ててホテルを探すことにした。日は落ち暗くなり、不安のなか何軒ものホテルを当たったが、いずれも宿泊することができなかった。そこで、再び所用先を訪れ「泊めていただけませんか」と懇願し、やっと受け入れてもらった。 午後8時を過ぎていたが、まだ停電は復旧しておらず、家の中は暗かった。午後9時過ぎに電気がようやく復旧して、初めてテレビを目にして唖然とした。津波災害の映像はもとより、福島第一原発がある福島県沿岸に「大津波警報」が出ているのを見て「不吉な予感」を抱いたのを思い出す。それが現実になってしまったのだった。 〇年間20ミリシーベルトを超える地域は避難指示 福島第一原発事故後は、日本政府のみならずこの国全体が大混乱に陥っていた。そんな最中、政府は2011年4月26日、以下の方針を発表した。 「平常時には、身体的障害を起こす可能性のある被ばくは、絶対にないように防護対策を計画します。その上で、《将来起こるかもしれないがんのリスクの増加もできるだけ低く抑える》ことを、放射線防護の目的としています。そのため、放射線や放射性同位元素を扱う場所の管理をすることにより、一般人の被ばくは年間1ミリシーベルト以下になるようにしています(公衆の線量限度)」 「一方、万一事故や核テロにより大量の放射性物質が環境に漏れるような非常事態が起こった場合には、緊急時被ばく状況として、《重大な身体的障害を防ぐ》ことに主眼をおいて対応します。このため、上記の線量限度は適用せず、一般人の場合で年間20~100ミリシーベルトの間に目安線量(参考レベル)を定め、それ以下に被ばくを抑えるように防護活動を実施します」 すなわち、緊急時の一般公衆の被ばく線量を年間20~100ミリシーベルト以下にするということだ。ただし、脚注には 「今回の福島での事故に当たり、日本の原子力安全委員会は、このICRPの定める緊急時被ばく状況の国際的な目安の中から、最も厳しい(安全寄りの)数値=年間20ミリシーベルトを基準に選び、政府はそれに従って避難等の対策を決定した」 とある。最も厳しい(安全寄りの)年間20ミリシーベルトを超える地域を避難指示対象にしたのである。 また同発表では、「その後、回復・復旧の時期に入ると、住民の防護目安は、緊急時の目安線量よりは低く平常時の線量限度よりは高い、年間1~20 ミリシーベルトの間に設定することもあります」とも記されている。 〇避難指示解除は年間20ミリシーベルト以下 2011年10月6日、文部科学省下の放射線審議会基本部会は「原発事故などからの復興期は、年間1~20ミリシーベルトの範囲で可能な限り低い値を段階的に設定する」という ICRPの2007年勧告を国内にも適用することを提言した。… … …(記事全文5,394文字)
蓮池透の正論/曲論
蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)