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蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

妻が共有名義で不動産を相続したため被った災難

ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00200/2022020406000090572 //////////////////////////////////////////////////////////////// 蓮池透の正論/曲論 https://foomii.com/00200 ////////////////////////////////////////////////////////////////  今回は、少し毛色の異なる話をしたい。遺産相続における相続人の間でのトラブルはよく耳にする。しかし、私の場合、妻が父親から相続を受けた共有名義の不動産を巡る紛争で酷い目に遭ったことがある。もっとも原因は共有名義であったこともさることながら、身内に質の悪い男がいたのが災いしたので、あまり参考にはならないかも知れないことを断っておく。 〇義父の死  義父は、非鉄金属業を営んでいた。朝鮮戦争からしばらくは活況で10人程度の従業員を雇っていたが、その後の業績は落ち込み、私が結婚したときは個人経営になっていた。1985年、60歳にして亡くなったのだが、財産もあれば負債もある状態だった。妻は3人きょうだいの末っ子で兄とその上に姉がいた。後継者となる兄は、後の事業継続よりも残された負債の大きさに悩んでおり、預貯金はほとんどなく次々と不動産、ゴルフ会員権などの財産を処分していた。私は、そんな必死の姿を見て、できるだけの手伝いをしたが、妻から遺産相続に関して聞かされることはなかった。 〇義母の死  義父が亡くなってから7年後、長く入院していた義母が亡くなった。その時になって、妻は川崎市にある土地・建物を義母と義姉そして自分3人の共有名義で義父から相続していたと私に打ち明けた。建物とはアパートであり家賃収入があったのだが、その分配について妻は不信感を抱いていた。義母が亡くなったため、川崎市の物件は2人共有になったが、過去分も含め家賃収入の問題は決着しなかった。このため、私が弁護士に相談したところ、「すべて売却して現金で分けるのが一番」とのアドバイスをもらった。これを受け、売却する方向で進めることになったのだが、アパートの居住者に退去してもらう必要があるなど前途は多難であった。 〇義姉の死  1995年、阪神淡路大震災の起きた年に、今度は義姉が急死してしまった。46歳という若さだった。2人の共有物件は、今度は義姉の夫(以下「K」という)と彼の娘3人、そして妻の5人共有という形になってしまった。その時点から、Kが全面に出てくるようになった。  Kは、旅行会社に勤務していたのだが、バブル時代を謳歌したせいなのか、派手で贅沢な生活を好み、またそれを実現していた。世田谷に戸建て住宅を購入、外車を乗り回し、出回り始めた肩掛けタイプの携帯電話を誰よりも早く購入する等々である。また、それまでの勤務先を退職し、横文字名称「Kプランニング」という会社を起業し、事務所を渋谷区宮益坂に構えていた。  何をおいても、Kはお調子者で口がうまかった。義父の葬式の後、遺品であるロレックスの時計とゴルフクラブセットをちゃっかり持ち帰っていたという。最初は、明るくて世話好きのイメージがあったのだが、段々と本性が明らかになってきた。Kはとんだ曲者だったのである。 〇「Kプランニング」の没落  起業時、当時は珍しい産地直送通販やグルメ堪能ツアーなどを企画し、繁盛しているかに見えた「Kプランニング」だった。しかし、現在のようにインターネットもなく、すべて電話とファクスで済ませる仕事であり、しだいに資金繰りに困るようになってきた。私も同社への転職を勧められたが、当然断った。それでなくても、事務所の家賃だけでも相当な額である。義姉にかけていた生命保険金もすべて会社につぎ込んだらしい。だが、事足りずそれまでは権利のなかった川崎の物件目当てにしゃしゃり出てきたというわけである。 〇敏腕不動産屋への依頼  Kから、焦った口調で「会わせたい人がいる」と連絡があり、その日に妻とともに会った。Kは、住友不動産出身で不動産会社を営むS氏を紹介し、「S氏は凄腕の不動産仲介者だから、すべてを任せたい」と提案してきた。話してみると、S氏は歯切れの良い口調が特徴で豊富な知識を有し、頼りがいがあるように感じた。こうして、S氏にアパートの居住者の退去、建物の解体・撤去、売却まで依頼することに決まった。同時に、妻は専門的なことが分からないからと、以降の手続き等は私が代行することとなった。  早速S氏から、居住者との退去交渉を開始するための資金が必要であり、銀行からの融資で賄いたいとの相談があり、私たちは了承した。ここで呆れたのは、融資が決定した際、Kはその一部を自身の銀行口座へ振り込むようにS氏に求めていたことだった。無論、会社の運転資金用である。それだけ苦しいのなら、会社など畳んでしまえばと思ったものだ。
… … …(記事全文4,335文字)
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