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蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

元北朝鮮工作員安明進氏の証言に信憑性はあったのか

ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00200/2022012806000090243 //////////////////////////////////////////////////////////////// 蓮池透の正論/曲論 https://foomii.com/00200 //////////////////////////////////////////////////////////////// 〇横田めぐみさん拉致情報発覚の経緯  1996年11月、朝日放送プロデューサー石高健次氏が「私が『金正日の拉致指令』を書いた理由」という論文を雑誌「現代コリア」へ寄稿したことに端を発する。この論文には、1994年、韓国情報機関の高官と取材で会ったとき、北朝鮮から亡命した元工作員から聞いた話として以下の内容が記されていた。 「日本の海岸からアベックが相次いで拉致される1年か2年前、おそらく1976年のことだった。13歳の少女がやはり日本の海岸から北朝鮮へ拉致された。どこの海岸かは、その工作員は知らなかった。少女は学校のクラブ活動だったバドミントンの練習を終えて、帰宅の途中だった。海岸からまさに脱出しようとしていた工作員が、この少女に目撃されたため捕まえて連れ帰ったのだという」 「少女は賢い子で、一生懸命勉強した。『朝鮮語を習得すればお母さんのところへ帰してやる』と言われたからだ。そして、18歳になったころ、それが叶わぬこととわかり、少女は精神に破綻をきたしてしまった。病院に収容されているときに、件の工作員がその事実を知った。少女は双子の妹である。以上が私の知る『少女拉致』のすべてである」  1996年12月、「現代コリア」を発行する現代コリア研究所所長佐藤勝巳氏が、新潟市で講演を行ったが、終了後の懇談会の席で、石高論文について触れた。「たしか新潟でも昔、少女行方不明事件がありましたね」。すると、「それはめぐみちゃんのことだ!」と同席していた新潟県警の幹部が声を上げたのだった。「少女拉致」と「横田めぐみ」とが結び付いた瞬間だった。事件が起きたのを1976年としている点や双子の妹という点は、事実と異なるが、人伝の情報であるが故の食い違いではと、かえって信憑性が高いと判断されたという。  1997年1月21日、日本共産党橋本敦参議院議員秘書の兵本達吉氏は、当時、日本銀行を退職していた横田滋氏の住所を調査し「めぐみさんは北朝鮮にいる」と告げた。また、2日後、石高氏が横田家を訪ね、別のルートからの情報を伝えた。 「少女は遠くからでもいいから、家の見える所まで連れて行って。決して親に話しかけたりしないから。工作員の監視下でいいから。必死に懇願したが断られた。精神に破綻をきたしたのは、そのショックからだった」 〇甲斐がなかった家族会議  情報を入手した3つのメディアが次々に取材に訪れたという。「アエラ」「ニューズウィーク」「産経新聞」だった。これらにより、横田家は、もう一つの大きな問題を抱えることとなった。それは、めぐみさんの実名報道を認めるかどうかである。家族の中で侃々諤々の議論があったという。結果的に実名にすることが判断された。しかし、そんな苦労をよそに現代コリアのホームページではすでに「横田めぐみ」という名前が登場していたのだった。 〇安明進氏の登場  こうして1997年2月3日、「アエラ」が発売され、産経新聞が1面トップで「横田めぐみ拉致事件」を報じた。これらを成田空港で目にして驚いたのが、日本電波ニュース社の高世仁氏だった。高世氏は、北朝鮮から亡命した元工作員の取材のため韓国に向かうところだった。早速、「アエラ」と「産経新聞」を購入して、韓国で「今日の取材とは別件だが」と断り、それらを元工作員の前に広げた。すると、彼は、掲載されている何枚かの写真を見て、「この女性に見覚えがある。平壌で見た」と語った。  上述の石高論文の拠り所となっている元工作員とは、別の元工作員の証言であった。亡命した元工作員は身の危険と北朝鮮に残してきた家族を案じて、名前も顔も伏せておくのが普通である。だが、高世氏が取材した元工作員は「安明進(アン・ミョンジン)」とはっきり名乗ったのであった。  安明進氏から聞いた話として、高世氏は横田夫妻に以下のとおり伝えた。 「安氏が金正日政治軍事大学(筆者注:工作員養成機関)の2年生だった1988年10月、日本人教官も出席する式典で、実行犯であるチョン教官が『私が新潟から連れて来たのはあの女性だ』と、そって教えてくれた。25、6歳に見えた。彼女は美しかった。笑っていて明るく見えた。拉致されてからすでに10年以上が経っており、自分の運命に従うしかないと思っていたからなのだろう。他の機会にも、校内を歩いているところなどを見かけたが、いつも別の日本人女性と一緒だった」
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