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蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

在日米国大使館担当者が今さら拉致現場を視察して何になる

ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00200/2022011406000089712 //////////////////////////////////////////////////////////////// 蓮池透の正論/曲論 https://foomii.com/00200 ////////////////////////////////////////////////////////////////  新年に入って早14日だが、このところの暴風雪のように私の心は荒れ狂っている。開いた口が塞がらないと言うより、憤りさえ覚えるニュースを目にしたからだ。 〇在日アメリカ大使館担当者が拉致現場視察へ  地元メディアの報道によれば、今月20及び21日、在日アメリカ大使館の北朝鮮問題担当のブヨン・リー 一等書記官が新潟県を訪れ、柏崎市及び新潟市の拉致現場を視察するとともに、弟と会談するという。これは、昨年8月、柏崎市長、佐渡市長などが、在日アメリカ大使館でバイデン大統領あての拉致問題解決に協力を求める要望書を提出したことに応じたものだ。  基本的に、拉致問題解決の協力をアメリカに求めることは無駄である、と再三再四述べてきたところだ。やはり、求めに応じたことは現場視察程度で、それも一等書記官が、である。事件直後ならいざ知らず、45年も経って現場を視察することに何を求めるのだろうか。日本政府関係者が同行するのかは不明だが、少なくない市職員は動員される。また、弟も駆り出される。噴飯ものの愚行以外の何ものでもない。 〇視察の目的が不明  弟が拉致された現場(柏崎市中央海岸)は、現在当時の面影は微塵もない。砂浜の浸食や、その対策として消波ブロックの敷設等の護岸工事が施されており、正確な位置は弟でも特定できないほどである。それでは櫻井雅浩柏崎市長や柏崎警察署がどこへ案内し、何を説明するというのか。櫻井市長は、拉致事件発生当時16歳であったし、警察はと言えば初動捜査はおろか、その後もほとんど捜索をしなかった。まさか、弟に拉致状況を再現させるのかとも考えたが、さすがにそれはないようだ。  1997年、家族会が発足してから、ようやく警察は海岸に情報を求める立て看板を掲げた。しかし、そこに固有名詞はなくカップルとだけ書かれていたことに呆れたのを思い出す。かねてから、警察の縦割り組織と「法と証拠に基づいて」のみを反復する秘匿体質には辟易し、翻弄されてきたとも言える。また、怠慢ではないかと考えることもある。捜索しても発見できない行方不明者を安易に「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者」にしている気がしてならないからだ。その数現時点で872人である。  弟が帰国して以来、実家に警察へのホットラインを設置したり、警備課長が定期的に両親のもとを訪ねたりして、「ご機嫌伺い」をしているが、いずれもありがた迷惑である。「罪滅ぼし」のつもりならなおさらである。繰り返すが、拉致事件に関して警察から得た情報は何一つない。 〇弟と何を話すのか?  では、ブヨン・リー 一等書記官と弟が面会して、何を話すのだろう。弟が知っている情報は、全て政府に伝えてある。知りたければ、アメリカ大使館がそれを共有すればいいだけのことだ。弟は、「日本独自の外交を進めていくことを理解して欲しい」くらいのことを要望するつもりだと語っていた。だが、パフォーマンス好きの櫻井市長であるから、自身も参加したスリーショットを地元メディアに報道させる光景が目に浮かんでくる。「市長の売名行為に加担するなよ」と弟に釘を差した後、荒唐な点を次々と指摘すると、弟は怒り出し「兄貴は拉致問題に口を出すな」と声高に非難された。だが、私は絶対に黙ってなどいられない。おかしいものはおかしいと誰が訴えるというのか。  ブヨン・リー 一等書記官にしても、柏崎市長らの要望に応えてとのことだが、 「ショート・トリップ」あるいは「ウィークエンド・ブレイク」気分ではないのだろうか。それならば、天候が悪く、しかもコロナ禍であるこの時期は避けるべきだと思う。春になれば、佐渡市へも行けるはずだ。  この訪問について、地元メディアは「在日アメリカ大使館担当が拉致現場を視察するのは初めてのことであり、これを機に解決への機運が盛り上がり、動きが加速することを期待できる」などと報じている。しかし、最低最悪の希望的観測であり、そのようなことはあり得ないのは論ずるに値しない。 〇歴代拉致問題担当大臣も現場視察が恒例  同様に歴代の拉致問題担当大臣も必ずと言っていいほど拉致現場を視察してきた。特に横田めぐみさんの拉致現場には何人が訪れたことだろう。ここも45年前の状況とは大きく異なっている。また、事件発生後、警察は延べ3000人態勢で捜索を行っており、得られた情報は新潟県警に蓄積されている。
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