ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00200/2021091706000084996 //////////////////////////////////////////////////////////////// 蓮池透の正論/曲論 https://foomii.com/00200 //////////////////////////////////////////////////////////////// 〇9月17日夕方 9月17日夕方、外務省の飯倉公館において、拉致被害者の家族は福田官房長官らによって生死の判定が下された。「死亡宣告」された家族は、悲しみと絶望のどん底にあったことは想像に難くない。かたや「生存」と告げられた家族も大喜びすることなどできるはずもなく、困惑するだけだった。そして、死亡、生存に関係なく、その後拉致被害者へどう対処するのかについて一切の説明がなかったのが最も腑に落ちなかった。 家族は、来たときと同じリムジンバスに乗り込んだ。車内は、混沌とした重い空気が漂い、口を開く者など一人もいなかった。すでに日は暮れて辺りは暗く雨模様だった。車窓を叩きつける雨が、私たちの苦しみに追い討ちをかけるようだった。そんな状況で記者会見が待ち受けているとは、横田夫妻にとって非常に酷なことであったのは言うまでもない。 ⇒酷な記者会見 鬼気迫る横田早紀江さんの「闘争宣言」 会見で、横田滋氏は、涙を流し「いい結果を待っていたが、結果は死亡という残念なものであった。ただ、結婚して、女の子がいると言うことを聞かせてもらった」と語った。 対照的に、横田早紀江さんは涙も見せず、鬼気迫る口調で次のように語った。「日本の国のために、このように犠牲になって苦しみ、また亡くなったかもしれない若者たちの心のうちを思ってください。・・・私たちが一所懸命に支援の会の方々と力を合わせて闘ってきたこのことが、大きな政治のなかの大変な問題であることを暴露しました。そのようなことのために、めぐみは犠牲になり、また使命を果たしたのではないかと私は信じています。本当に濃厚な足跡を残していったのではないかと、私はそう思うことで、これからも頑張ってまいります。まだ生きていることを信じつづけて闘ってまいります」 発言を聞いていて正直驚いた。とても母親のものとは思えない、その立場を遥かに超越した、「闘士」としての極めて政治色の濃い表明であったからだ。この発言に対して賛否両論があったものの、要するに横田めぐみさんは北朝鮮という巨大な悪に抗い闘った。そして犠牲になったかも知れないが、自らの犠牲によって巨悪の正体を満天下に知らしめるという大きな使命を果たした。自分は娘の残した濃厚な足跡を継承し、極悪北朝鮮との闘いを続けていく、ということである。 娘は死んだかもしれないが、まだ生きていると考えて、自分は闘っていく。早紀江さんの考え方は理解できる。ただ、注意しなければならないのは、これは被害者の母であるからこそ許容される「闘争宣言」であったということだ。すなわち、早紀江さんの発言に同情することはあっても、同調する、つまり多くの人たちが共有する「闘争宣言」にしてはならなかった。しかし、残念なことに、この発言が日本に共通する「宣言」と化し、19年間「闘争」が繰り広げられてきたことにこそ大きな問題があった、と私は考えている。… … …(記事全文4,182文字)
蓮池透の正論/曲論
蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)