… … …(記事全文2,288文字)今回の総裁選で,俄に話題になっているのが「選択的夫婦別姓」制度を認めるかどうか,という議論.
例えば,本日,総裁選への出馬会見をおこなった小泉氏は,
「選択的夫婦別姓を認める法案を国会に提出する!」
と息巻いています.
が,この問題は,わたしたち日本人の一人一人の人生に甚大な影響を与える「家族のあり方」に決定的影響を及ぼすものですから,さして議論もしないまま,「選択的夫婦別姓を認める法案を国会に提出するのだ!」と鼻息荒く主張してよいようなものではありません.
一つ一つ解説していきましょう.
(1)旧姓を正式に通用名として法的に認めれば,選択的夫婦別姓制度を導入する根拠が失われる
選択的夫婦別姓の意見は,「結婚して名前が変わる事による社会的不利益」がその議論の全ての根幹です.
しかし,「通用名」(通称)を,パスポートなりマイナンバーカードなりに全て記載することを許容すれば,その不利益はなくなります(実際今でも,総務省関連の者は全て,それが可能となっています).
したがって,「通用名」を全ての制度において使用可能とすれば,「選択的夫婦別姓にする必要性がない」という事になるのです.
(2)子供の「氏」を決める際に,これまでならあり得なかった氏を巡る「家族内紛争」が生ずる
しかも,選択的夫婦別姓制度を許容した場合,具体的には,
「別姓を選択した夫婦の場合,子供の苗字を決める際,どうやって決めるのか?」
という問題が生ずることとなります.民主党の法案では,
「夫婦で議論する.決着が付かない場合,家庭裁判所にて,決着を付ける」
となっています.が,具体的に家庭裁判所でいずれの氏にするかを決定する「基準」が存在しません.仮に何らかの基準を設けても,その決定に抗う両親もでてくることでしょう.そうなったとき,今なら生じ得ない,「氏を巡る家族内紛争」を,選択的夫婦別姓制度は生み出してしまう事になります.
(3)選択的夫婦別姓制度を導入すれば,家族の一体感(社会学的凝集性)が平均的に低下する
また,姉弟が複数いる場合,姉弟で,氏が異なる,ということにもなるでしょう.
そうなると…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)