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藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)

藤井聡

「選択的夫婦別姓を進めるのダ~!」と鼻息荒い小泉進次郎氏は,社会を根底から破壊し日本人の活力を徹底的にそぎ落とす,純粋真っ直ぐな大馬鹿者である.

昨日,小泉氏が「選択的夫婦別姓」を進めると言うことを主張したということで,改めて,「選択的夫婦別姓」問題について解説しました.

https://foomii.com/00178/20240906134657128861


まず指摘したのが,選択的夫婦別姓にした場合には「子供の氏をどうするのか?」というこれまでなら存在しなかった紛争があちこちで起こることになると同時に,家族としての一体感が希薄化するという問題も指摘しました.しかも,選択的夫婦別姓を主張している人達が主に主張しているのは,「女性が結婚して名前が変わると,不利益がいろいろと生ずる」という問題ですが,それは,選択的夫婦別姓を認めなくとも,「旧姓を公式に使用可能とする」という,既に一部導入されている制度を全面的に導入すれば対応できるという点も指摘しました.

 

つまり,選択的夫婦別姓を導入するメリットは事実上存在しない上に,デメリットばかりがあるわけで,だから,選択的夫婦別姓の導入は論外だ,という話しとなっているわけです.

 

ただし,選択的夫婦別姓問題は「戸籍」というものの存在を考えた場合,ますます大きな矛盾をかかえたものだ,ということが見えてきます.

 

今日はそのあたりのお話しをいたしたいと思います.

 

そもそも「戸籍」,ですが,これは,「一戸の家族」というという概念があり,その「一戸の家族」にどういうメンバーが属しているかを明記した公の名簿です.

 

そして,「一戸の家族」は例えば,当方なら「藤井家」という名称が付与されています.名称が付与されているということは,そこにいわゆる社会学的存在としての「藤井家」(あるいは,藤井聡家)という家族集団が,存在している,ということを意味しています.

 

そして,その「藤井聡家」は,その兄の「藤井X家」や直系の父の「藤井XX家」と親戚関係があることが戸籍によって裏付けられることになります.

 

そして,これら「藤井聡家」「藤井X家」「藤井XX家」がより広い概念である「藤井家」の系譜に位置づけられているということが,戸籍によって保証されることになります.

 

ところが,選択的夫婦別姓の場合,例えば,藤井と鈴木が婚姻関係を結び,そこに子供が複数生まれた場合,その夫婦と子供が「家族」という事になりますが,その「家族」には名称が存在しない事になります.

 

一般に「名称の存在しないもの」は「アイデンティティがないもの」となり,その結果,「実態が存在性が希薄化,ないしは消滅」することになります.

 

例えば,「藤井聡」という名称があるから,「私」のアイデンティティが成立し,その結果として,藤井聡という人格・内実が成立する事になるわけですが,藤井聡という名称がこの世から完全に抹殺されれば,「私」のアイデンティティが失われ,その結果,藤井聡という人格・内実が失われてしまう事になるのです.

 

それほどに「名称」(あるいは,象徴)というものは,その中身の成立において極めて重大な意味を持つのです.

 

したがって,選択的夫婦別姓論というのは,家族というものの実態を希薄化・消滅することを選択することが可能な制度だ,ということになるわけです.

 

以上の議論を別の言葉で言い表すと「家族としての一体感が低下・消滅する」という事になるわけです.

 

…が,ここでは,選択的夫婦別姓論者の立場に立ち,藤井と鈴木が結婚してできた家族をあえて,便宜的に「藤井・鈴木家」という名称を付与したとしましょう.

 

そうすると,その「戸籍」は「藤井・鈴木家」の名簿だ,ということになります.

 

さらにここでその「藤井・鈴木家」の子供が全員「鈴木」性を名乗ったとしましょう.

 

そうしますと,その子供の「鈴木」氏が「佐藤」氏と結婚した場合,「鈴木・佐藤家」ができる事になります.

 

「藤井・鈴木家」と「鈴木・佐藤家」は,(現状の制度なら)両方とも「藤井家」というより広い系譜に位置づけられるということになりますが,選択的夫婦別姓の場合には,「藤井家」というより広い系譜に名称がないため,その系譜・親族の概念が,社会学的に(つまり,社会風潮的に)希薄化,ないしは,消滅してしまう事になります.

 

こうして,選択的夫婦別姓は,

 

・両親と子供からなる「家族」の名称を失わせることで「家族の一体感」(社会学的凝集性)さらには「一つの家族というもののアイデンティティおよび実態性」を希薄化・消滅化せしめると同時に,

・複数の「藤井という性の家族」から構成される「藤井家」という「親族としての一体感」(社会学的凝集性)さらには「一つの親族というもののアイデンティティおよび実態性」を希薄化・消滅化せしめます.

 

そしてもし,選択的夫婦別姓によって,「家族の一体感」と「親族としての一体感」が喪失し,家族という概念も親族という概念も消滅してしまったとすれば,その「家」という概念を基本として成立している「戸籍」というものが不要だという事になります.

 

かくして,選択的夫婦別姓論は,今日の日本社会において根強く共有されている「家」という概念そのもの,「一族」という概念そのものを希薄化させ,消滅させる破壊力を持っているのです.

 

そしてその結果,「戸籍」というものの必然的必要性が失われ,戸籍制度の廃止論に結びつくこととなるのです.

 

ここでもしも戸籍制度が廃止になれば…

… … …(記事全文3,719文字)
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