… … …(記事全文2,313文字)西部先生の「実践政策学」についての論文解説をした日記を先日,配信いたしましたが…
https://foomii.com/00178/20240616011105125417
この日記について,本メルマガ読者のお一人から以下のご質問を頂きました.
「政府資本主義というのは、かつてのソ連邦の計画経済と同じ蹉跌を踏まぬためには、どのような仕組みを組み込むのでしょうか?もしくは、政府資本主義というのは、かつてのソ連邦の計画経済とは何が違いますか?」
西部先生は,単なる資本主義ではなく「政府」がガッツリ介入した資本主義として「政府資本主義」(ステート・キャピタリズム)の重要性を主張しておられますよ(ちなみに当方もその意見に同意しています),と紹介したわけですが,そうした政府資本主義と「あの失敗に終わった」計画経済とはどう違うのか,というご質問です.
つまり,違いがないなら,そんな政府資本主義は「計画経済」と同じなのだから,どうせ失敗に終わる筈だから,きっと違うと思うのだが,どう違うのか教えてくれないでしょうか,ということだと思います.
このご質問は,日本が成長するにあたって(そしてもちろん,政府資本主義についての“誤解”を解き,その正確な内容をご理解頂くにあたって)大変に重要なご質問ですので,簡単にお答えしたいと思います.
まず,ソ連の計画経済と政府資本主義の違いは,極めて簡単です.
そもそもソ連は市場を認めていませんでしたが,政府資本主義は,市場を認めています.この点が決定的に異なります.仮に政府資本主義国家が「計画」をたてていたとしても,だからといってそれが即座に「ソ連の計画経済」とはならないのです.
一方,そもそも資本主義というものは,「政府」が存在しないままでは絶対に成立しないのです.
まず第一に,政府がなければ貨幣がありません.
第二に,政府がなければ経済上の詐欺や泥棒が横行しますし,それ以前に外国からの侵略や自然災害の被害の激甚化によって,「市場そのもの」が成立しなくなります.
そして第三に,仮に市場が成立していたとしても,政府がなければ「市場の失敗」(つまり,市場で売買が進められれば進められるほど,人々の厚生水準=人々の幸福の度合いが減少すること)が必ず生じます.
だから,政府の存在が,資本主義を成立させるために,かつ,資本主義を通して,人々の幸福の度合い(厚生水準)の増進を図るために,絶対的に必要不可欠です.
しかし,この当たり前の前提を,現代の資本主義者達は忘れてしまっているのです.特にその傾向が強いのが,竹中平蔵やホリエモン…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)