Foomii(フーミー)

藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)

藤井聡

【田中角栄の高潔なる公徳心】しかし世間はその「公徳」が理解できず,些末な「私徳」判断で角栄を「カネに汚い無学な田舎者」と侮蔑し,どん底に叩き落とした.ニホンジンのおぞましさ,ここに有り.

今,表現者クライテリオンで,次号にて「『指導者』の条件~“徳”と“品格”の思想」という特集を準備しているのですが,その中で久々に,当方が寄稿することとなりました.

 

編集長ということで,ついつい対外的なインタビューの記事や座談会への参加が多くなり(かつ,編集長日記や編集後記までありますし),その上で寄稿や連載をしてしまうと,「藤井聡」の名前ばっかになってしまうということで,これまでずっと控えてきたのでした.

 

が,今回は編集会議で,「藤井さんに,田名角栄のことを紹介為ながら,指導者の条件としての徳や品格について論じてはどうですか?」という提案があり,それならそうしましょうかということで,久々に特集原稿を寄稿することとなりました.

 

編集会議でそういう話しになったのは,田中角栄もまた当方と同様,土木工学を十代の頃学び,それを基軸として政治・行政論を展開していると同時に,その具体的な形として公表された田中角栄の「列島改造論」の思想が明確に,当方の「列島強靱化論」(国土強靱化論)の源流となっているからです.というよりもむしろ,当方としては,国難級巨大地震を経験したという21世紀の我が国において,列島改造論の「焼き直し」を行うべしということを明確に意図しながら,列島強靱化論をまとめたというのが実態です.

 

ついてはまずは,田中角栄氏の資料をあれこれ調べていたのですが,まず,彼の生涯を簡単に年表的に纏めてみましょう.

 

1918年5月4日 新潟県刈羽郡二田村大字坂田(柏崎市)に農家の二男として生まれる

1934年(昭和9年)3月 上京 (16才)

1936年(昭和11年)3月、中央工学校夜間部土木科を卒業 (18才)

1943年(昭和18年)12月に、「共栄建築事務所」を改組して田中土建工業を設立(25才)

1947年 初当選(民主党) 29才

1957年 初入閣 郵政大臣 岸信介内閣(39才)

1962年 大蔵大臣 池田内閣(43才)

1965年 自民党幹事長(46才)

1968年 都市政策大綱とりまとめ(50才)

1972年

  6月『日本列島改造論』を発表。

  7月福田赳夫を破り自由民主党総裁・内閣総理大臣に就任。

    今太閤と呼ばれ,支持率約は70%(52才)

  12月 日中国交正常化

1973年10月(中東戦争)~1977年 第一次オイルショック → 狂乱物価

    12月 支持率が下落為,20%を下回る

1974年

  10月 立花隆・文藝春秋「田中角栄研究」にて田中金脈問題を追及

  11月 支持率12%にまで下落.総辞職 以後,「影の総理」へ.

1976年 ロッキード事件

1983年 第一次公判 有罪判決 即日控訴

1985年 脳梗塞で倒れる

1990年 政界引退

1993年 死去(刑事被告人のまま死去したため、位階勲章は与えられなかった)

 

農家の子として生まれ,16才で上京し,土木工学を学び,25才で建設会社を設立し,その四年後の29才にして国会議員として初当選.その10年後の39才の時には郵政大臣として初入閣を果たします.郵政大臣として民放・NHK各局の全国展開を推し進め,日本に「テレビの時代」をもたらしました.そしてさらにその4年後の43才の時には大蔵大臣となります.その時,今では想像しがたいことですが,テレビ「冠番組」をつくり,国民に直接自らの政治理念を番組を通して語りかけました.

 

その後,46才の時に自民党幹事長に就任し,50才にして「都市政策大綱」をとりまとめた上で,52才にして,自民党総裁・総理大臣の地位にまで上り詰めます.

 

この総裁選の直前に発表したのが,日本における過疎や過密,貧困や格差などの全ての問題を解消しつつ,日本の戦後を終わらせ,押しも押されぬ先進国に押し上げるための構想である「列島改造論」でした.

 

角栄はこの構想に基づいて全国で様々な開発を手がけ,日本全国を実際に飛躍的に成長させていきました.

 

さらには,総理就任後5ヶ月にして,戦後日本における長年の懸案だった日中国交正常化を果たします.

 

こうして,角栄は敗戦によって焼け野原になった日本を,先進国へと導き,アメリカの「奴隷国家」ではない,自主的な外交ができる国への道を切り開かんとしたのです.

 

しかし,田中角栄の躍進は,ここまで,となります.

 

その後,様々な不幸な出来事が重なり,総理就任後わずか2年数ヶ月で退陣を余儀なくされます.

 

その不幸な出来事とは…

… … …(記事全文4,635文字)
  • バックナンバーを購入すると全文読むことができます。

    購入済みの読者はこちらからログインすると全文表示されます。

    ログインする
  • ひと月分まとめての販売となります。1記事のみの販売は行っていません。

    価格:880円(税込)

    2024年6月分をまとめて購入する

今月発行済みのマガジン

ここ半年のバックナンバー

2024年のバックナンバー

このマガジンを読んでいる人はこんな本をチェックしています

月途中からのご利用について

月途中からサービス利用を開始された場合も、その月に配信されたウェブマガジンのすべての記事を読むことができます。2024年9月19日に利用を開始した場合、2024年9月1日~19日に配信されたウェブマガジンが届きます。

利用開始月(今月/来月)について

利用開始月を選択することができます。「今月」を選択した場合、月の途中でもすぐに利用を開始することができます。「来月」を選択した場合、2024年10月1日から利用を開始することができます。

お支払方法

クレジットカード、銀行振込、コンビニ決済、d払い、auかんたん決済、ソフトバンクまとめて支払いをご利用いただけます。

クレジットカードでの購読の場合、次のカードブランドが利用できます。

VISA Master JCB AMEX

キャリア決済での購読の場合、次のサービスが利用できます。

docomo au softbank

銀行振込での購読の場合、振込先(弊社口座)は以下の銀行になります。

ゆうちょ銀行 楽天銀行

解約について

クレジットカード決済によるご利用の場合、解約申請をされるまで、継続してサービスをご利用いただくことができます。ご利用は月単位となり、解約申請をした月の末日にて解約となります。解約申請は、マイページからお申し込みください。

銀行振込、コンビニ決済等の前払いによるご利用の場合、お申し込みいただいた利用期間の最終日をもって解約となります。利用期間を延長することにより、継続してサービスを利用することができます。

購読する