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藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)

藤井聡

【実践のための学問とは何か?】西部論文『公共的実践の本源的課題』を解説いたします

今からおおよそ10年前,土木計画学者,哲学者,民俗学者の皆さんと,「実践政策学」という学術雑誌を立ち上げました.

 

当方はいくつかの学会にて,会員として様々な活動を行っていたのですが,そのどれもがある種の「たこつぼ」に填まってしまっていて,どこもかしこもそこでの議論がしょぼくてしょうがない…という体たらくに,いつもウンザリと辟易していたのですが,そういうお気持ちを土木計画学,哲学,民俗学のそれぞれの学会でお持ちだった,石田東生先生,桑子桑子 敏雄先生,森栗茂一先生と共に,狭い学問領域のたこつぼに収まらない学術活動を展開するには「実践」や「政策」そのものを学術的にとりあつかう学問,

 

実践政策学

 

なるものを立ち上げ,その学術雑誌を刊行してはどうだろうという議論となりました.

 

そんな議論を経て,2015年に,学術誌「実践政策学」を立ち上げました.

https://policy-practice.com/

 

そして,その創刊号では,保守思想家であった西部邁先生に,実践政策学の創刊にあたって,是非とも実践政策学とはかくあるべし,という議論を展開頂きたく,招待論文をご依頼したところ,二つ返事でご快諾いただき,

 

『公共的実践の本源的課題』

https://policy-practice.com/db/1_5.pdf

をご寄稿いただき,これを創刊号巻頭に掲載させていただきました.

 

あれから10年…残念ながら,その西部邁先生は他界されてしまったのですが,この10年目となる今年,この10年の実践政策学の歩みを振り返ると共に,実践政策学の原点とは何かを改めて確認すべく,西部邁先生の招待論文を改めて解釈・紹介する原稿をまとめました.

 

学術誌,ということで,少々難解な箇所もあるかもしれませんが…本来の学問とはいかに有るべきかをご紹介する趣旨にて,当方が今回まとめた,西部論文のレビューを改めて下記にご紹介いたします.

 

ご関心の方は是非,じっくりとご一読下さい.

 

――――――――

「実践政策学」創刊10年:その原点を振り返る『第二章 西部邁招待論文』(文責藤井)

 

本エディトリアルボードでは,実践政策学を創刊するにあたり,元東京大学の経済学の教授であり,かつ,五十路前にその教授職を辞職して以降は評論家として,そして保守思想の言論誌『表現者』『発言者』の編集長として活躍した保守思想家・故西部邁氏に招待論文の執筆を依頼した.依頼時には,「現在の学術界は,狭い専門領域に留まり,それぞれの分野のテクニカルな議論に閉じこもり,生の躍動としての実践を学術的に描写し,それを通して学術界の活力の活性化,それを通した実践の高度化を果たさんとする学術活動,学術論文はほぼ皆無の状況に至っている.この状況を打開する度に,実践政策学という,実践と政策についての学術雑誌を創刊することにした.ついては,是非とも,西部氏に,その創刊にあたっての論文を,ご寄稿いただきたい」という形で,本誌の理念をしたためた『創刊にあたって』を添付しつつ,特に具体的事項を特定・言及しないかたちで,原稿依頼を行った.

 

そうした経緯でご寄稿頂いたのが『公共的実践の本源的課題』という招待論文であり,本誌ではそれを,本誌の創刊号の巻頭に掲載した.すなわちその招待論文は,いわば本誌の文字通り原点となる論文と見なしうるものである.

 

さて,本誌『実践政策学』は,政策と実践の学問という意味であるが,実践という言葉を広く捉えれば,政策も勿論含まれることとなる.そして,本誌は常に公共に向かって出版(パブリケーション)されるものである以上,本誌が取り扱うものは決して「私的」なものではなく「公的」なものである.したがって,西部氏のこの『公共的実践の本源的課題』は,文字踊り,本誌『実践政策学』の本源的課題を科学哲学的に取り扱った,本誌にとって極めて重要な意味を持つ哲学論文となのである.

 

では以下,その中身を簡単に振り返ってみよう.

 

西部氏はまず…

… … …(記事全文5,747文字)
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