… … …(記事全文2,349文字)「東京一極集中は是か否か?」
当方にしてみれば、東京一極集中が是か否か、なんて問われれば、「そんなもん、ダメに決まってるでしょ! そんなこと聞くなんて、おタク、バカなんですか…?」という風にスグに思うのですが、世間はそうでもないのです。
例えば、都市政策のエラい先生であられる市川宏雄先生という方は、「東京一極集中が日本を救う」(ディスカバー携書、2015)なんて本を 書いて、次のようなことを宣っておられます。
『今後,15歳~64歳の生産年齢人口が年々減り続けていく状況のなかで…限られた資源と労働力から日本経済を最大限に活性化させるには,やはり「選択」と「集中」しかありえないのではないかと,私には思えるのだ.』
まぁ、そう思うのは自由ですが、そんな根拠薄弱な事をいけしゃぁしゃぁと本に書いて出版するなんて、誠にもって困った話しです。
彼がそこまで言っているのは、一極集中してた方が、「規模の経済」なるものが働いて、経済的に効率的だ、という根拠があるからだそうです。で、とりわけ今日重要になりつつある三次産業においてそうなのだ、ということのようです。
同じような議論は、小峰 隆夫さんという経済学者が「東京一極集中是正論への疑問」(日本不動産学会誌、2015 年 29 巻 2 号 p. 36-41)なる論文で繰り返されています。要するに、人口の集積によるメリットは大きく、やはり、特にサービス産業で規模の経済のメリットは大きいのだ、とのこと。
ちなみにこうした、東京一極集中を是認する市川さんや小峰さんやの論調は、日本のいわゆる「インテリ層」の中では結構平均的なもの、です。逆に言うと、市川さんや小峰さんが一極集中を是認する本を出したり論文書いたりするのは、そうした「インテリ層」の中に蔓延している空気を吸い上げて形にしたものに過ぎないものなのです。
ですが、改めて論証するまでもなく、彼らの主張は、完っっっっっっ璧に間違えています。
まず第一に…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)