… … …(記事全文5,671文字)世論において大阪万博についての批判、反発の声が大きくなってきています。
予算が当初の予定価格よりも倍増した上に、工事の進捗も遅く、このままでは万博の開催園もが難しい、それにも拘わらず無理矢理開催すれば、その内容が簡素なものにしかならず、やっても意味の無いようなイベントにしかならないのではないか、との観測が広がっているからです。つまり、カネはかかるわ効果も薄そうだわということで「そんなのやめろよ」という気分が世論において共有されつつあるわけです。
そんな世論に対抗することで、万博を強烈に推進してきた政治勢力である「維新」(大阪維新の会、および日本維新の会)は、ことある毎に、万博の経済効果は2兆円を越えているのだ、と主張し、万博の必要性を盛んにアピールしています。
この2兆円越えの経済効果ということで、「維新」の吉村氏らがいつも引用しているのが、2023年版の『関西経済白書』(一般社団法人 アジア太平洋研究所)という報告書です。
この25Pに、特定の前提をおいて計算した結果、万博開催による経済効果は約2.4兆円(万博会場以外の都市施設も活用した、彼らが言うところの“拡張万博”の形式であれば2.8兆円)となる、という試算が掲載されています。
この試算は、いわゆる産業連関分析という、こういうイベントの経済効果を試算するにあたって標準的に活用されてきたスタンダードな方法によるものですが、その試算の前提は、主催者が想定している「約2800万人の来訪者」が確保できた場合に限られるもの。しかも、工事そのものも円滑に進んでおらず、予算額もどんどん増え、それを賄うために大阪府市が事後的に「増税」し、それによって経済被害が生じてしまう、というリスクもあります。したがって、この2兆円越えの経済効果という見込みは、実際には、かなり怪しいのではないかとも見られています。
ついては、この2兆円越えの経済効果、というのが、ホントかどうか、少し確認してみたいと思います。
ちなみに、この分析方法の詳細は、関西経済白書の2023年版に詳しく掲載されているので、その記述をベースに、筆者なりにこの2兆円の正当性について検証してみたいと思います。
まず、もの計算の前提にあるのが…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)