Foomii(フーミー)

藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)

藤井聡

「三島なら、この令和の時代をどう生き、どう死ぬのか」(その一)

昭和45年11月25日に、三島由紀夫は森田必勝とともに市ヶ谷でクーデターを自衛隊に呼びかけ、それが失敗に終わると自刃。


三島と森田は一体、何を思い、その挙に出たのか…。


それをみなで考え、共有し、その思いを日本全国に恢弘(かいこう)する(つまり、日本全国におしひろげていく)ための「恢弘祭」が本年11月24日の夜に、東京都内で開催されました。

 

25日でなく24日に開催されるのは、その挙にでる前の晩、檄文をしたためながら三島が、森田が思っていたこと、感じていた事を今一度みなで思い起こすにためです。

 

本年の恢弘祭では、誠に僭越ながら、基調講演を依頼され、40分の講演をさせていただきました。

 

本日は、そのさわりの一部をご紹介差し上げ、当方にとって、三島由紀夫の人生が、どういう意味を持っていたのかの一端を、ここにご紹介いたしたいと思います。

 

演題「三島なら、この令和の時代をどう生き、どう死ぬのか」

 

                            藤井聡

 

昭和四十五年十一月二十五日という日、私は昭和四十三年十月十五日生まれでございまして、その日は一歳一ヶ月十日でしたので、残念ながら直接的な記憶はありません。物心がついてから、僕が一歳一ヶ月十日の時に三島由紀夫という作家が市ヶ谷で自裁されたということを知りました。当時、子供の頃はその趣旨を何も理解できずにいました。

 

三十歳を超える頃になると、三島由紀夫という人物が、自分の精神の中でどんどん大きくなってまいりました。もちろん青年の頃には『仮面の告白』や『金閣寺』などの小説は読んでおりましたが、多くの他の日本文学の中の作家の一人として読んでいたに過ぎませんでした。

 

ですが、二十代の後半くらいの時に彼の檄文である「檄」という文章を初めて読み、大変な衝撃を受けました。それまで読んでいなかったことが恥ずかしくなるようなくらいのものでした。檄文に触れる前の人生と、触れたあとの人生では大きく違って、檄文を読んだことによって、自分の中に血が入ったような感覚を覚えました…。

 

… … …(記事全文2,131文字)
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