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井上政典(歴史ナビゲーター)

井上政典

令和という時代

ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00160/2020010417381962284 //////////////////////////////////////////////////////////////// 歴史の視点から世の中を観る 歴史ナビゲーター井上政典のウェブマガジン https://foomii.com/00160 ////////////////////////////////////////////////////////////////  『忘却の日本史』に寄稿した文章を転載します。 令和という時代  齢60を超えたため、なんと三つの元号を体験することができた。その時代にはそれぞれの特徴がある。昭和は前半と後半に分かれ、前半は「戦争の時代」、そして後半は「経済の時代」となると思う。では平成はというと「災害の時代」といっても過言ではなく、二度も大地震に日本国民は見舞われ、そして多くの地震や水害に大勢の人々が苦しんだ時代だった。  上皇様は、ご自分が即位した時の日本国民の混乱に心を痛めておられたと漏れ聞いたことがあり、また大きな災害を国民にもたらした自分の御代に対して常に国民と共にありたいと考えられる陛下の思いがこの度のご譲位につながったと考えている。 おかげで今回の御代替わりは国民の祝意の中、そしていろいろ意見は飛び交っているが一か月前からの元号の発表で混乱なく新しい御代を迎えることができたのではないか。きっと上皇様が想像された通りになったのではないかと思っている。  思い出してみると「昭和」から「平成」に代わるときは、昭和天皇のご病気の具合を国民が固唾を飲んで一喜一憂し、年末年始の忘年会・新年会はほとんど「自粛」という言葉が飛び交う暗い雰囲気の中で過ごした。そして昭和と時代を多くの国民と共に耐えてこられた昭和天皇が崩御された悲しみの中で「平成」という時代が始まったのだ。  よく「現人神(あらひとがみ)」から「人間」になられたという人もいるが、昭和天皇は戦前戦後を通じて国民の規範として厳しく自分を律しながら、日本国の天皇というどんな職務よりも厳しい重責を担われてきたと思っている。それを端的に表すエピソードがある。病気で臥されている時に発せられた「朕はもうだめなのか」というお言葉を側近は、自分の命が終わるのかと初めは受け取ったが、その真意は「自分はもう沖縄県に行けないのか」つまり、先の大戦で一番被害に遭った沖縄県への行幸を果たせないのがとても心残りだということが分かった。自分の命よりも自分が沖縄県に行くことで少しでも県民の悲しみや苦しみを自分のものとしたいという昭和天皇のお気持ちがよくわかるエピソードだ。  「平成」の御代は、阪神淡路大震災・東北大震災に代表される未曽有の自然災害が多発した時代だった。その復興の中で、日本人が日本人に目覚めたといえると思う。その表れが国防のかなめである自衛隊への評価の変化だ。それまでは日陰者と称された自衛隊が国民に最も頼りがいのある存在として阪神から東北の震災にかけてきっちりとその存在の必要性が認知されたのである。それまでは経済優先、自分優先、どちらかというと「個」が優先されてきた戦後の日本が「絆」という言葉に表されるように個と個が結ばれた時の幸福感を感じ取ったのではないと思っている。  心理学的に人間が幸福感を最大に感じる時は「家族と過ごす時間」だ。私もまったく異存はない。もちろん華やかな時間も楽しいが、やはり家族と共に過ごす「当たり前の時間」ほど心が落ち着くものはない。  さらに平成の大災害は日本人の凄さを世界に知らしめたことになっていると国内にいる日本人は知らないのではないか。東北大震災の前、ビジネスでマレーシアに行った時、香港の若い女性の実業家から、「なぜ日本は最近元気がないのか」と聞かれた。返還された香港は不動産バブルからとてつもない高度成長を遂げつつあったのだ。その彼女から見れば日本の経済成長の低さは我慢がならなかったようだ。かろうじて私は日本人の価値観の変化だと説明したが、彼女は最後まで納得しなかった。経済成長こそが香港やアジアの人たちにとって最大の関心事だったからだ。  ところが東北大震災が起こり、被災した人々の落ち着いた行動や自分も被害者なのに相手を思いやる気持ちなど経済的指標では表せない日本人の底力を見せつけることになる。これは世界から絶賛され、「やはり日本人は凄い」「日本人は自分が大変な中どうしてあのように他人のことを思いやることができるのか」というような称賛の声が世界中から聞かれたのだ。それと同時に日本人自身も今まで自分が見失っていたものを思い起こしたのも平成の災害の中だった。
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